ツッコミ 58 〜本格的なボス戦〜
「ちっ、カナネー! 遠すぎるぞー!」
「はーい! 調整しまーす!」
水面に浮くコロッケの残骸が橋を架けていく中、ボク達はあることに気が付いたのだ。それは、橋を架けた後に順調に渡り切れるのか。カナネがそこに気が付き、天井のミミズを見る。
……あれが襲ってこない、なんて可能性は、少し楽観的すぎるかな。
というわけで、水たまり――と言うには深すぎる、池のようなものの向こうに見える洞窟の続きまでは、幾つもの橋、と言うよりも、足場を設ける作戦に出た。
カナネでも飛び渡れる範囲で、という制約のもと、コロッケが産み落とされる位置を調整していく。倒すのは空中でも移動が可能なルートで、シュラナはコロッケを辿ってゴールまで辿り着けるか、の確認。ボクはティアマトを使って、漂うコロッケをツルを使って固定していく作業をしていた。
「蔓を切り離せるって、結構便利だわぁ。自分から生えているって思っていた時は、そういう使い方なんて思いもしなかった」
「切り落とした腕が動くはずない、と思うようなものですかね。道具として見ればそういうものだと思える、みたいな」
「そんな感じかなぁ。ミシンを操作している感じなのかも」
コロッケを縫い合わせていく感じだろうか。いつまでも水に浮くコロッケというのも不思議だけど、あのティアマトもそうとう不思議だ。
「無事に外に出られたら、服を買いに行きましょうか」
ルートの指示のもと、ミミズの頭を操作しながらカナネが言う。
「それもいいけど、お風呂に入りたいかな。ティアマトが駄目だっただけで、この身体は大丈夫かもしれないし」
「胸の葉っぱは大丈夫なんですか?」
「それは加工できる」
どうにも、下半身と上半身で、根本的なところが違っていたように思う。
「二人ともー! これ、全部コロッケで埋めたほうが良くないかー?」
シュラナの提案は魅力的だが、それについては一度失敗した経緯から、カナネの首は重かった。
というのも、一度操作をミスして、浮かんでいるコロッケの上に新たなコロッケを産み落としてしまったのだ。新たなコロッケが、浮かんでいるコロッケを踏みつけ、そのコロッケは沈んでしまう。その経験から、落ちきる前に倒そうと、ルートが空を飛んでいるのだ。
「そこまでの操作に自信がありませーん!」
「俺も!」
ルートも同意したことで、この地道な作業は粛々と進められることとなった。
そして数十分後。すべての準備は整った。
「よし、念の為向こう側に上陸させるのはティアマト、ということで良いね?」
「それがいいと思う。万が一の時は、蔓で引き上げて貰う感じで」
「私はここで、石でまだ何かできないか探ってみます」
「シュラナとキアはコロッケの上。俺は空中で警戒だな」
各々の役割を決めると、早速、行動に移す。
ティアマトは蔓を足代わりにして、まるで昆虫のようにコロッケの上を進んでいく。あいつが一番気持ち悪いのかもしれない。そうして、広い空間からの脱出を果たした。
直後に訪れるのは、地響き。ハラハラと岩の破片を落としながら、遂に天井のミミズが動き出した。
「先手必勝っ!」
見える範囲が徐々に増えていくミミズに対し、ルートが風の刃を放つ。コロッケを産み落とさなくなることを警戒して出来なかった攻撃は、見事その巨体に命中した。
ミミズの反撃は、口から放たれる丸い何か。ルートが切り落とした際に見えた中身は……、どうやらメンチカツだったらしい。
「ルート! 下手に割るな!」
落下したメンチカツの破片が、浮かぶコロッケの破片を砕いていく。……なるほど、こうして足場を崩していくのが、敵の作戦というやつか。
下で待ち構えていたシュラナが上手く避けて注意するも、メンチカツの射出は止まらない。攻撃されたのが、相当ご立腹でもあるようだ。
「いえ、ルートさんはそのまま攻撃をしてください! メンチカツがコロッケにダメージを与えているということは、それを打ち返せればミミズにもダメージを与えられるかもしれません」
「カナネは何を言っているの?」
「急に冷静にならないで下さいよ、キア様!」
まぁ、そういうことなら仕方がない。ボクは胸の葉っぱを毟り取って、バットの様に変化させた。
「目指せホームラン! ボクのスイングを見せてやる!」
意気込むボクは、メンチカツを待ち構える。放たれるメンチカツ。バットを振るうボク。
「……ごめん、野球やったことない!」
勿論、初球は振り遅れ……と言うよりも逃げた。




