ツッコミ 53 〜何を言っているんだろう〜
気を取り直して、洞窟の奥へと進んでいこう。歩き出そうとした、その時。シュラナが思い出したようにこういった。
「そう言えば、ルートはよく風のことに気が付いたね」
ルートが魔法で風を起こせば、一定の間隔で吹いていた風が乱れてしまう。よくその点に気が付いた、と言いたいのだろう。
「確信はなかったけどさー。あれ、多分、俺が起こしたものだから」
……え?
歩き出そうとした足は、その瞬間ピタリと止まった。
「……あぁ! 私も今気が付きました! そっか、コロッケの襲撃は一定の間隔だったのかぁ」
あぁ、カナネの言葉でボクも気が付いた。コロッケに襲われるという謎の状況から、意識はしていなかったけど、確かに、あれの襲撃は一定の間隔だったように思う。
その時に、ルートは風を起こして切り裂いていた。その風が洞窟内を駆け巡って、あの奇妙な壁から、吹き出していたということ?
「では、僕達は風の行方を追っていたのではなくて、風と共に進んでいたのか」
「でも、それが俺の起こした風である保証はないぞ。押し出された空気かもしれないし」
「それって、ロケット鉛筆みたいなこと?」
……あぁ、この例えは通じないのか。
「えっと、ところてん、みたいな?」
「あ、押し出しは補充する感じの例えですね。でも、その割にはルートさんが攻撃してから、風が届くまで時間がかかる気がします」
「でもさー、それにしても歩いてないか? 風の届く間隔か言っても、そこまで回り道しない気がするんだけど」
そんな議論のさなかでも、コロッケは空気を読んでくれることはない。
再びルートが風を起こして切り裂き、その後数分で風が届く。そして、その風は何処かへ消えていく。
「ルートの風も、刃のようにして飛ばすんだよね?」ちょっとした疑問。
「そう」
「その風は、どこまで届くの?」
「切ったら終わりだけど、馬車は急に止まれない、みたいな感じで、余波は多少は残ると思う。けど、そんな何十メートルとか、何百メートルも進むわけではないと思う」
じゃあ、やっぱりルートの起こした風がそのまま壁から出てくる、というのはおかしいのではないか。
ボクは試しに、思いっきり息を吐いてみることにした。
「……あ、今風が来ました!」
カナネの言葉に、ボク達は頷いた。
大なり小なり風を起こすような行動をすれば、あの奇妙な壁から風が出てくる、という仕組みだったのだ。壁自体が風を起こしているのか、はたまた隙間が空いていて風が漏れ出しているのか。それは分からない。
けれど、あの壁に秘密があるのは、確実なのだと思う。
「やっぱり、あそこの壁は怪しかったのか」
「今から戻って、壊せないかやってみるか?」
ルートが戻ってきて、シュラナの肩に飛び乗った。
「でも、一部を壊すことで洞窟全体が崩れる、なんてことになったら一巻の終わりだな」
とんでもないことを言う猫だなぁ、と背筋が少し凍ってしまう。勝手に引き込んでおいて、少しミスをしたら一巻の終わり、なんての酷すぎると思うけど、確実な正解があるのだとしたら、それは正しく自業自得。
なにか、分かり易い仕掛けでもあっただろうか。こう、扉を開くようなものとか……。例えば、手に入れた石を嵌め込む場所があったとか。
「あの壁に、石をはめ込むような窪みはあったっけ?」
「ありませんでした。もしあれば、私達は最初から、石を探す目的を持てたでしょうし」
「壁に嵌め込んでいるだけだったら、押し込めば後ろに外れそうなものだけどね」
叩いても押しても何の反応もしなかったのだから、それはない。一番力があるだろう、シュラナだって、それを試したんだから、言葉にしながらも理解はしているだろう。
「押して駄目なら、引いてみるとか」
「駄目ですよルートさん。指が引っかかる所はありそうもなかったですし、手前に引くのも、横にスライドさせるのも無理です」
「えー、じゃあ、なんか硬いものでも刺すとかさ。シュラナの剣とか」
「剣で岩を突きさせたら苦労はしないさ」
「魔法剣でもか?」
「洞窟ごと粉砕するね」
つまり物理的に、無理に開けようとする方法は今のところない。となると、やはりちゃんとした開け方があるのではないか。どこか、どこかにヒントがあった? ここに来るまでのどこかに……、ヒントが……。
「あ! チーズだ! あの怪しいところに出たコロッケだけに、チーズが入っていたんだよ。そのチーズを壁に貼り付けて取手にして、ドアのように開くんじゃないかな?」
「何いってんの?」
猫のツッコミに、みんなが頷いた。岩を止めるときには、チーズの案を聞いてくれたのに!




