ツッコミ 51 〜お約束の〜
洞窟の中には、幾つもの分かれ道が存在した。
ただの行き止まりだったものや、落とし穴のように底が抜けている場所もあって、それらは一様に、風の通りがない道の先であった。
つまり、風の流れる方向に進んでいけば、正解のゴールに辿り着くのではないか、という推察が的を得てきたように感じる。しかし、という言葉が、どうしても後に付いてしまうのだが。
「やっぱりさぁ、行ける道は確かめてみないと気持ちが悪いと思うんだ」
シュラナは、分かれ道も全て調査したほうがいいという。
「えー、最短ルートかもしれないんだから、テキパキいこうぜー。こんな辛気臭い場所、いい加減おさらばしたい」
やはり、広々とした場所を走りたいのだろう。猫のルートは、風を頼りにひたすら進むことを望んでいる。
では、多数決をとろう。ボクは、カナネと頷きあった。
「お宝があるかもしれないので、可能な限り寄り道はしていきたいと思います」
「さんせー」
というわけで、不満たらたらなルートを先頭に、ボク達は近くの分かれ道を、風の通っていない方向へ進んだ。
先ずは、何もない。
次は落とし穴。
その次は、何もない。
次は落とし穴。
では、その次は何もないのかな、と思いきや落とし穴。リズムを崩して、罠に嵌めようという魂胆かな?
「ん? この穴の向こう、まだ道が続いているんじゃないか?」
ルートが気にかかったのは、穴の向こう側に見える、照らされた明かりの範囲ギリギリに、僅かに見える地面のような色。水が流れていないから、全く気が付かなかった。
「ルート、行けるか?」
「よゆー」
切り込み隊長のルートが、軽やかなジャンプをして向こう側に渡る。すると、その部分から半径五メートルが照らし出された。
「あ! 怪しげな箱がありますよ!」
カナネがウキウキとした声を上げ、向こうに行こうとせがんでくる。まぁまぁ、と落ち着かせて、先ずはルートに、その周囲を調べてもらう。
結果、怪しいものはなさそうであった。
となれば、唯一怪しいものである箱を調べないわけには行かない。シュラナは軽々とジャンプで渡り、ボクはカナネを抱えて、蔓を天井に突き刺す。強度を確認したら、後はブランコだ。
「さぁて、お待ちかねの宝箱ですよー」
「カナネ、こういうのってよくあるの?」
「箱の類は、洞窟などにはたまにあるんですよ。モンスターから逃れた人々が、財産を隠したまま……。なんて事があるらしくて」
なるほど。この洞窟はその例からは漏れるだろうけれど、箱というもの、イコールウキウキだと言うことを知れたのは嬉しい。こう言うのは、ゲームではお約束だからね。
「背面の蝶番で開く感じですね。重くて持ち上げられないのは、中身の重量か、それとも箱が異常に重いのか」
「その中から、コロッケが飛び出してくる、なんてことはないのか?」
「シュラナさん。そういうことは言わないお約束、ですよ」
「フラグってやつだな!」
ルートが嬉しそうに箱の上に乗った。出てきたら、即切り裂くつもりなのだろうか。
「どうやら、鍵の類は無さそうですね。持ち上げれば開きそうです。……では、いきますよ」
全員が、固唾をのんでその動きを見守った。蓋の部分が、持ち上げられる。その中から現れたのは……。
「これは……、宝石?」
丸くて、透き通るような赤色をした石だった。その見た目は、確かに宝石だ。けれど、それは意味ありげにまん丸な姿をしていて、まるでどこかに嵌め込むのが理想であると言えるほど。
「とりあえず、持っておきましょうか」
その結果は、後々正解だったことが窺えるようになる。いつくかの分かれ道の先で、二つの同じような、けれど色の違う石を手に入れたのだ。
今のところ、計三つ。それを使うような何かが、今後ボク達を待ち受けている。きっとみんな、そう感じただろう。




