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ツッコミ 49 〜お待ちかねの〜

 山の途中で見つけた、飛び跳ねる魚を獲りに行き、途中で村へ向かおうとしていた騎士と合流し、ようやく戻ってきたボク達は、早速魚を餌にして湖に垂らすことにした。


 幸いなことに、釣り竿は馬車のオプションと付けていたため、準備は直ぐに出来た。魚を針に付けるのも、シュラナが手際よくやってくれた。


 何が釣れるのか。ここまで来て、この行動が間違っていたらどうしよう。そんな不安を抱えながら、じっと、水面に揺れる糸を眺めていた。


 次の瞬間、糸が大きく引き込まれる。


 シュラナは負けじと重心を後ろに傾け、背筋を使って必死に竿を持ち上げている。緊迫を詰め込んだかのようなシーンに、ワタワタと慌てふためくのを、一人冷静な釣り人は一喝する。


「落ち着け! とりあえず、キア。蔓を伸ばして水の中に何がいるか探れないか? まだここからだと姿が見えない」

「分かった!」


 指示されたとおりに、釣り糸に沿うようにして蔓を伸ばしていく。……あれ?


「なにも、ない」

「は?」

「いや、針の先には何もない。餌の魚もいない。本当に、何もない」

「じゃ、じゃあ、当たりってことですか?」


 何もないのに当たりっていうのもおかしいけれど、カナネの言う通り、この不自然な状況は、ある意味当たりと言えるだろう。


「だと思う。蔓の先が濡れている感じもしないから、何か、と言うよりも、何かしらはある」

「つまり、糸はどこか別の空間に引き込まれている、ということか?」

「そういうことなら、こうしろってことだろー」


 そう言うとルートはシュラナの肩に飛び乗って、服に爪を引っ掛けている。


「では、私も」

「ちょ!? えっと、カナネが抱きつくのは、その」

「男の子なら喜んでください」

「今は性別がないんだが!?」


 そんなやり取りを見守りながら、ボクもみんなを抱きしめるようにして、蔓を巻き付けて固定していく。


 そして、傍で見守っていた騎士に声を掛けた。


「じゃあ、行ってきます! 後はよろしく!」


 何かに耐えきれなくなったのか、シュラナが力を緩ませると、僕たちの身体は湖へと一直線に引き込まれていく。息を止め、少しの間息苦しさを感じる。目も閉じていたため、なにが起こっているかも分からない。ただ、全身が水に包まれていたのだけは、はっきりと感じられた。


 次に感じたのは、巻き付けた蔓がクッションのように弾んだ感触だ。目を開けると、そこは踝ほどまでが水に埋まった洞窟。壁や天井の質感は、どこか見覚えのあるものだった。


「これは……、あの滝の裏側とは別の入り口、ってことなのかな?」


 蔓をほどいて、無事を確認し合いながら問い掛ける。


「質感は似ていますね。水の流れもありますけど……。背後は行き止まり。出口はあるのでしょうか」

「滝まで繋がっていたりしてなー」


 ルートの言葉通りなら、歩いていくには遠すぎる距離だ。準備不足を嘆くしかない。


「それよりも、少し厄介なことがあるだろうね」


 シュラナが、腰に下げていた剣を引き抜いた。


 バシャバシャと、水を蹴り上げながら迫りくる、何かの気配を感じた。魔力の反応はない。モンスターでは、おそらくない。


「来るよ!」


 不自然に明るさを感じる洞窟の先にある、不自然な暗闇から、ロケットのように何かが飛びかかってくる。一刀両断。シュラナはその動きに剣を合わせ、縦に両断してみせた。


 断面から、いい匂いがする。立ち上る湯気が、鼻腔をくすぐる。


 ボク達は、水にふやけつつあったそれを、じっと見つめていた。


「……紐状の手足がついた、人間くらいの大きさのコロッケが襲い掛かってきた」


 ルートのその、深刻そうな呟きは、真面目な雰囲気を一切感じなかった。 

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