ツッコミ 41 〜お試し旅の始まり〜
地図から消えた湖までの道のりは、途中、と言うか、直前までは街道が続いている。道が途絶えるのは、カナネが一度訪れたことのある村の辺り。とりあえずの目標は、その村にたどり着くことだった。
「揺れも少なくて、いい感じだね」
「そこは一番重視しました。今後、世界中を巡るかもしれないので、快適性は外せません」
タイヤの性能なのか、車体に何らかの細工が施されているのか。石畳が敷かれた街道を、なんの振動も感じさせずに馬車は進んでいく。
馬に指示を与える御者台から通路が延びて、快適な空間が広がっている。向かって右側にある対面する二つのソファーは、間に挟まるテーブルを壁に格納すると、ベッドになる。左手には簡易的なキッチン。トイレや風呂は付いていない。上はロフトとなっていて、二人なら余裕を持って横になれるスペースだ。
ボクのスペースは、車体の後方、荷台を半分削って確保されていた。
「荷物が多くなるようでしたら、ロフトを活用する感じですね。このベッド、詰めれば二人は寝られますし」
「よくシュラナが納得したね」
「仕切り代わりに、大きな抱き枕を買ったので」
狭くなりそうだけど、本人が納得しているなら良いのだろう。まぁ、そのような事態が起こらなければ、何も問題はないのだけどね。
通路を進み、御者台へ顔を出す。既にシュラナが座っているため、背もたれに手を添えて、覗き込むしか馬の様子を確認することはできなかった。
「馬の調子はどう?」
「ちゃんと言うことを聞いているよ。流石はモンスターと言ったところかな。ちゃんとこちらの意図は伝わっている」
車体が大きくなったので、力があって尚且つ知能も高いモンスター馬を選んだのだ。体の大きさは普通の馬よりも少し大きく、そのままでは背に乗るのも難しい。チラチラと後ろへ視線を向けているのは、ボクが現れたことに気が付いたからだろう。
「頑張ってね」
返事は元気だ。同じモンスターだからか、ボクの声はより伝わりやすいらしい。同じ様にルートも仲良くなったのか、その大きな背中でのんびりと昼寝をしている。
「今日中には着かないから、どこかで一度キャンプだね。使用感を確かめておかないと」
「後からオプションも付けられるんだっけ?」ソファーで寛ぐカナネに問い掛ける。
「付けられますけど、重量とも相談ですかね。馬の様子をよく確認しておいてください。余裕がありそうなら、少しづつ足して様子を見る感じで」
この試行錯誤をしている感じが、旅の始まりの雰囲気を醸し出しているように思う。
お試し期間が終わったら、あの馬にも名前をつけなければならないだろう。我らがアーリオ・オーリオに相応しい名前を、今のうちに考えておかねば。
「因みにですけど、キア様やルートさんは、馬の言葉は分かったりしないんですか? コミュニケーションが取れたりとか」
「いや、会話は出来ないかな。喋られないし。何となく、意思は伝わるけど」
「へぇ。凄いですね! では、あの子は今、どんな事を考えているんです?」
「ちょー走りてぇ。滅茶苦茶に走り回りてぇ」
「シュラナさん! しっかり抑えておいてくださいよ!」
無事を旅を進めることができるかどうかは、シュラナの手綱捌きに託された。




