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ツッコミ 39 〜仕掛け〜

「すごーい。暗闇でもしっかり見える時計なんだね」

「ですです。ちょっと値は張りますが、冒険者であるなら持っていて当然と言うべき逸品なんですよ。――って、違います! 驚くところはそこではありません!」


 ライトを使わずに文字盤を見ることができる懐中時計も、このタイミングでは驚くべきところ。てっきりライトで照らすのかと思っていたから、多少ズレていたとしても、それは素直な感想だった。


 そして、きちんとツッコミを入れられたのなら、話をしっかりと戻すことにしよう。文字盤の上を回るはずだった三本の針は、まるでコンパスのように揺れ動いている。かといって、それは方向を指すものではないはずだ。中の仕組みはどうなっているのだろうか。本来、そういった動きが出来るものなのだろうか。


「コンパスのような機能もあるとか?」シュラナが訊いた。

「ありません。時計だけの機能しかないので、こんな事はありえないのですが……」

「ありえないことが起こったのなら、それはどこかに、それを引き起こすような何かがあるってことだよね」


 カナネから借りたライトで、辺りを照らし出してみる。人工物ではない自然な岩肌ではあるが、人の手でも、機械によるものでもない独特な風合いをした壁と天井があるだけだ。


 よって、この洞窟は神が作った可能性が高い。……のだけど、本当に? 洞窟自体はもともとあったもので、こうした加工を後から施したということは?


 その点は、ひとまず置いておこう。今はこの事態をどうするか、である。


「一度、外に戻った方が良いんじゃねーの?」


 鶴の一声ならぬ、猫の一声で、私達は船首を返すことにした。辺りを照らす外からの光は直ぐに現れ、私達は、あっという間の冒険を終えた。


「皆様、早かったですね。奥に消えてから殆ど時間は経っていませんよ?」


 見張りをしていた騎士にそう言われ、ボク達は直ぐに時計を確認した。


「確かに、そんなに時間が経ってないです。少し進んで戻ってきた程度で……、まるで、あの時の時間は本当に停まっていたような」


 時計を覗き込むカナネの横から、自身でもその動きを確認した。先程のおかしな動きが嘘のように、本来の動きを取り戻している。


「何があったのですか?」


 騎士の問いかけに、シュラナは首を傾げるだけだった。自分たちにも、さっぱり意味が分からない。ルートは、お前も行ってみろよー、と言って騎士を困らせている。


「こうなってくると、もう一つ、確かめないといけないことがあるのかも」

「それは?」シュラナがこちらを見つめる。

「とりあえず、行ってみよう。同じ様に進んで、ある程度したら戻るの。今度は、ひたすら進む」


 まさか……。とシュラナはこの行動の意味が分かったようだ。カナネも嫌な予感を感じたようで、ルートを腕に抱いてライトを構えている。


 そうして、ボク達は再び洞窟へと進んだ。そして、気が済むまで漕いで、戻ってきた。


「え、もう戻ってきたのですか?」


 その反応で、そもそも入り口から届く光が直ぐに見えた時点で、この洞窟の仕組みは把握できていた。


「停まってるね」

「はい。停まってますね」

「明らかに、停まっているね」

「進歩なーし! お前も行ってみろー!」


 またも騎士に絡もうとするルートを捕まえて抑えながら、ボク達は船を降りた。直ぐに係留してくれた騎士にお礼を言いながら、適当に座りやすい石を見つけて腰を下ろす二人。猫はまだ、ボクの腕の中だ。


「あの中、何かあった?」

「ありませんでした。ライトでは照らし出せない何か、があったら、お手上げですけど」


 ため息を吐く二人。つまらなさそうに目を細めるルートの脇を抱え、意味なく持ち上げてその身体を伸ばしてみる。


 洞窟は、おそらく光が届かなくなったところから、時間が停止している。よって、いくら漕ごうが、船は前に進むことはないのだ。


「コロッケのレシピの他に、何か彼処で言うべきところがあるとか」

「そうなると、手当たり次第になりません? コロッケだってヒントはなかったんですよ」


 そう、コロッケの仕掛けは、ノーヒントで解いた。それは全くの偶然であったのだろう。では、この洞窟の謎も、偶然解けるものなのだろうか。いや、そもそも、それならコロッケの件も、どこかにヒントが隠されており、洞窟の仕掛けのヒントも同時に得られると考えたほうがいいのではないか。


 ボク達は順番を間違えている。本来のルートは、どこだったか。……ふと、思ったことがある。時間が止まっている筈の洞窟の中で、一つだけ、その動きを止めないものがある。


「あの洞窟の水は、どこから流れてくるのかな」


 二人が、一斉にボクの顔を見る。


「あの洞窟の中で、あの水だけは、変わらずに流れていたよね。そう考えると、あの水だけは進む権利を持っている、と考えられない?」

「まさか、あの流れの先にある水を、もしくはその水に力を与えている何かを手に入れたら、あの洞窟を進めるようになると? いや、でも、それでは順序がおかしくないか?」

「あ! いえ、それは違います。順序は正しいはずです。おそらく、源流から水か、それに関わる何かを採取し、流れを辿ると入れないところがあるのではないでしょうか。それを解決するために、下流から進むことにすると――」

「そこで魚と会うのか!」


 おそらく、それが正しい順序だ。そして、それなら水と同時に、コロッケのヒントも貰える場所がある。それを考えた時、怪しい場所は既に提示されている。


「地図から消えた湖。怪しいよね」


 結局、ボク達はそこへ行くべきだったのだ。

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