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異世界道中ピザコロッケ!?  作者: 如月 和
秘宝を求めて
34/37

ツッコミ 33 〜そこに山があるから〜

 山頂からの眺めは、とても良いものだった。


 とても簡素でありきたりな感想だけれど、大抵、素直な感想というものはこういったものだと思う。いちいちこれがどうとか、あれがどうとか、そういったものはテレビ的な趣向であって、一般人はそうそう、語彙力を発揮する場面などないのである。


「ふはは! 人がゴミのようだ!」


 これは猫の感想です。


「こうしてみると、南側の登山道自体が封鎖されている感じなのかな?」

「五合目までは来れるそうですけど、それ以上行っても山小屋を利用できないから、と避ける人が多いみたいですね。ほら」


 カナネが指をさす方向に視線を向けると、七合目までやってきた人が、騎士と話している様子がかろうじて見える。その後、その人は森に向かって移動している。


 森で何か見つかれば、その人たちも大金を得ることができるだろう。頑張れ、と心の中で応援しておいた。


 とまぁ、山頂からの感想などはこのようなもので、ここにやって来た意味というのは、もちろん絶景を楽しむためではない。背後にある窪みに存在する大きな隕石も調べてみたいが、そこは立ち入り禁止らしいので素直に諦めるしかない。


 ならば行えることは一つだけであり、それは確かに、感じ取れるものだった。


「ふむふむ。確かに違和感があるねぇ。隕石も相当な魔力を放っている。それが山に染み込んで、川に滲み出て。それが研究所によって利用されていたわけだ」


 あごに手を当てて、うんうんと頷く。ちょっとして知的な感じを表してみた。こんな時、レンズの細い眼鏡があれば完璧なのだろう。今度カナネに買ってもらおう。


「なー。なんか、違和感があるだろ? こう、なんていうかなぁ。なにか、足りないというか、これが普通なのだとしたら、おかしい部分があるというか」

「分かる。なんかこう……、思ってたのと違うんだよねぇ。あぁ、もちろん異常があるとかじゃない。なんだろう。川に異常があるとかじゃなくて、川で異常なものを見たから、この景色がおかしく感じるのかな?」


 腕の中の猫、ルートとの会話を、シュラナとカナネが疑問符を浮かべながら聞いている。この辺の感覚は、モンスターの独壇場だろう。もしくは、魔法を得意とするものなら、なんとなく理解してくれる感覚なのかもしれない。


 ボク達は、この山と、それによって出来た川から見るとおかしなものを見た気がするのだ。でも、それはおそらく、異常なものではなかった。当たり前の光景であったのだろう。けれど、当たり前だからこそ、当たり前ではないと思えてしまう。そんな――。


「だめだなぁ。なんだか小骨が喉に引っかかった気分」

「お前は引っかからないだろー」


 まぁ、花弁に突っ込めば溶かせるのだけれど。


「あ、そう言えばこの山に来る途中だけど、魚を捕まえただろう? ルートが食べたやつ。あの骨ってどうしたんだ?」シュラナは思い出したように問いかけた。

「あぁ、あれ? そのまま捨てるのも、なんか抵抗があったから、ルートに言われたように溶かして食べたよ」


 失礼なことに、とんでもないようなものを見る目を向けられた。モンスターなのだから、仕方がないじゃないか。


「でも、あの魚は元気でしたよね。川に含まれる魔力で、元気になったのでしょうか」


 あ……、それだ!


「それだ! あー、スッキリした。そうだそうだ。あの時の魚の行動がおかしかったんだ。一匹だけ飛び跳ねた魚。それだけ見れば魔力によって活性化していた、とも考えられるけど、そうじゃないんだ。それ以外はずっと、川の中にいたんだから。もっと川の水が特殊であった方が、あの魚の行動にしっくりくるんだ」

「あー、分かった。そういうことだ。元気になるならそこにいる魚すべてじゃないと理屈に合わない。あの時の魚の行動は、どこか意図的な部分があったな」


 そこで、シュラナが割って入る。


「それは、魔力によって知能が上がったとか、そういうことではないのか?」

「魔力はそこまで万能じゃないよ。ルートみたいに、あーだこーだーやって、ようやく動物に、人間のような知能が与えられる。川にいるだけで、魚がああいった行動を取るのはおかしい」


 ということは、改めて言語化すると、あの魚は怪しいということになる。


「あの川って、目的地の湖に繋がっていたりする?」

「えっと……、いえ、地図では確認できません」

「地下とかで繋がってんじゃねーの? 研究所にも繋がっているのかもしれないんだし、見えない何かがあっても不思議じゃねーだろ。それにあの魚の動き、考え方を変えればこちらを誘っているように見える」


 飛び跳ねたのは、こちらの意識を奪うため。そして川の中の他の魚に目を向けさせ、それを追うように仕向ける、と。


「湖の方へ行くか、魚を目撃したところまで戻るか」


 シュラナが、意見を募るようにそれぞれに視線を向ける。答えはみんな、同じであった。

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