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異世界道中ピザコロッケ!?  作者: 如月 和
秘宝を求めて
32/40

ツッコミ 31 〜間違い探し〜

 食事も終わり、あとはテレビでも観ながらのんびり……、と思ってしまうほど、この部屋の造りは懐かしさが感じられる。と言っても、和風というものではないし、一般的な住宅でもない。テレビでよく見かけるロッジというか、薪ストーブでもあれば、潜む殺人鬼に怯えながら身を寄せ合うシーンを思い浮かべてしまうだろう。


 ロッキングチェアに揺られるルートは、満腹なのか眠そうな顔をしている。たまに顔を上げてこちらを見るのは、椅子を揺らしてくれというサインだ。


「では、私達の成果を見てください」


 食器類が片付けられ、ワイングラスと瓶、簡単な摘みが置かれたリビングテーブルに、一枚の紙が置かれた。四つ折りになったA4サイズが開かれると、邪魔になりそうな摘みの皿は隅へと追いやられた。


 それもそのはず、その紙、地図は二枚あったのだ。


「一つは、戦争が始まる前の世界地図です。ギルドに問い合わせて、なんとかコピーをいただきました。もう一つは、今現在の世界地図です」


 二つを見比べてみると、大まかのところは変わっていない様に思える。


 地図の中央にある島。その北西方面にある、おおよそ楕円形のような、台形のような形を大陸。例えるなら、オーストラリア大陸だろうか。大きさとしては、ヨーロッパとアフリカ大陸をつなぎ合わせたくらい。北西大陸というよりも、西側大陸と言ってもいいくらい巨大な大陸だ。


 対して南東にある三日月のような、日本の本州を大きくして、もっと弓なりにしたような形の大陸。サイズは南アメリカ大陸よりも少し大きい。地図で判断すると、そのくらいをイメージしてしまう。北の端が、丁度ボクのいた世界の日本の緯度と同じくらいか。


「北西大陸、南東大陸。その名称は、首都の位置で表しているの?」

「あ、よく気が付きましたね。その通りです。地図中央の島から見たときの、首都の位置によって大陸の名称は決まりました。戦争より以前は、特に名称は決められていなかったようなので」


 解説を付け加えながら、カナネは指をさして首都の場所を教えてくれる。文字は読めないものの、他よりも大きな字で記されていたから、そこが首都なのでは、と思ったのだ。


「僕の部族の住処は、この辺かな」


 シュラナは北西大陸の南の方を指差す。海岸線に位置しているが、山に囲まれ、港もない秘境なのだそう。


「もっと揺らせよー」


 蔓を伸ばして椅子を動かす。カナネはそれに笑いながら、地図上の四つの地点に順番に指をさしていく。


「北西大陸から、大陸を移動するための船が出ている港は四ヶ所あります。南に一つ、東側に一つ。西側に二つです」

「あ、地図の途切れている方に向かう船が多いんだね」

「はい。距離はそちらの方が近いんです。南の港も、航路は西にとります」

「東から出るものは?」

「観光用です」


 豪華、がつくのだろうね。


「真ん中の島に行くものではないんだね」

「そのあたりは潮流も大気も不安定で、基本的にはたどり着くことはできないそうです。神が降り立った島、モンスターが現れたきっかけの隕石が落ちた島、などと伝わっているので、いつか行ってみたいのですけどね」


 秘宝を探すのだから、避けては通れない雰囲気を感じる言葉だ。たどり着けないというのも、なんだか怪しい。


 話は一区切りだと、一斉にワイングラスを傾けた。豊潤な香りを放つ白ワインは飲みやすく、摘みのチョコレートに微かな苦味との相性はとても良かった。甘さを求めるならホワイトチョコレートか。どちらもワイングラスと口が磁石のように惹かれ合ってしまう。

 

「それで、この地図から分かる違和感なのですけど、どうです? 気が付きません?」

「よく見ると分かりやすいよ。分かりやすいからこそ、問題なのかもしれないけれど」


 そのヒントを頼りに、二つの地図を見比べる。すると、その違和感はすぐに理解できた。


「分かった。あるものがなくなっているんだ」


 ある場所では湖。ある場所では山。島がなくなっている場所もある。


「あえて地図に載せなかったのか、本当になくなっていたのか。はたまた、なくなったように見えていたのか。いろんな考え方ができるけど、どれにしたって怪しいことには違いない」


 グラスを傾けながら、シュラナが言った。


 確かに、その意図までは分からないが、戦争が始まる前と今との地図で、変化があるのは事実である。すると、そこに何らかの事情があるのは明らかだ。


「ボク達が今いるところって、この北の方の大っきな山、だよね?」

「ですです」

「南東の方には湖があったはずだけど……」

「今はない。カナネ、この付近には行ったこと、ある?」

「ありますけど、だだっ広い平野っていう雰囲気でした。湖があるようには見えませんでしたね」

「窪地になっているとか、そういうのは?」

「うーん、そこまでは、ちょっと。その場所に目的があったわけではなくて、その近くにある村へ行くために通っただけですので」


 ということは、という話になってくる。


「その村に、行くべきだよね」

「ですね。とりあえず、この山のてっぺんと川の源流を見てから、ですかね」


 今後の方針が決まり、揃ってグラスを傾ける。


「それにしても……、あははっ、シュラナさんチョコレートを食べ過ぎですって。それでは摘みじゃなくておやつですよー。あははっ!」


 オンオフの切り替えが早い人だなー。

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