ツッコミ 30 〜ここを拠点とする!〜
あれから三日間は忙しいものだった。
なんせ樹神様、ティアマトにしか起動できない魔法陣があるのだから、どうしたって調査には同行するしかない。資料を搬出する為に、何度も何度もトロッコで行ったり来たり。それでいて重いものは運ばせられないとか、怪我をしたら困るだとかと大事にされ、研究所の中ではぼーっと立っているだけ。騎士がいるなら安心だと、話し相手になりそうな猫まで自由行動を満喫してしまう始末である。
非常に退屈な三日間であったが、ムスッと不満を表現するボクにオロオロする騎士たちの姿には、少しスカッとした想いはあった。滅びの呪文があったのなら、迷わず唱えていたかもしれない。
それはともかく、その長い退屈の時間も終わった。ひとまず資料を運び出し、精査して報告する程度にとどめることにしたらしいのだ。詳しい調査は、首都から専門家を呼び寄せてからにするそうで、それまでは山小屋周辺を封鎖。他の出入り口がないかの調査。それがメインとなるらしい。
その調査にも、もちろんボクは同行しなくてはならない。けれど、それが行われるのは一ヶ月後を予定しているそうなので、それまでは自由に行動していいそうだ。ただし、一ヶ月後にここに戻ってくることを条件に、である。
「それなら、ここを拠点にして行動をしておいたほうが良いですね」
解放されたその日の夜。滞在先を五合目にある宿に移したボク達は、再会を祝したわけではないけれど、リビングにあるテーブルを囲んで、揃って夕食を摂っていた。
メゾネットタイプの部屋はとても広く、一階にはリビングにダイニング。キッチンも設備が充実していて、風呂も大きく四人で一緒に入っても狭くは感じないほど。サウナの水風呂がお気に入りのスポットになりそうだ。
二階にはベッドが四つ。基本的には二つしか使わないだろうから、急な客にも対応できるだろう。同じ空間にていこうないのなら、だけど。
「カナネはそれでいいの?」
「はい。少し気になることもありますので。ね、シュラナさん」
「そうだね。戦争時代より前の地図を手に入れたんだけど、それを見ていたら、ちょっとした、ね」
「お宝の在り処でも記されてた?」
「それは食後のお楽しみです」
微笑みを携えたまま、カナネはオムライスを頬張った。宿には専属の料理人がおり、その人に作ってもらったものだ。ケチャップのまろやかな酸味が食欲をそそる。
「ルートはこの三日間、どうだった?」
「山頂に行ったり、川に行ったりしてた。その二つを実際に感じると、なんか、こう、違和感があるんだよなぁ。この手のものは、俺よりお前の方が向いていると思う」
となると、一度、山頂とこの山から湧き出る川には行かなければならないだろう。
そう真面目に考えながらも、オムライスに顔を突っ込んで食べるルートには、三人がそれぞれ注目してしまっている。顔がもう、ケチャップまみれだ。すぐに拭くべきか、食べ終わるまで待つべきか。
「お前ら、口の端にケチャップついてるぞ」
ボク達はすぐに拭いた。




