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ツッコミ 28 〜帰り道〜

 トロッコは先頭に重さを感じることにより発進する仕組みらしく、のんびりとした復路となった。どこか会話が弾むような雰囲気を醸し出しているのは、大いなる秘密を暴いた達成感か、はたまたチームを組むことを決めた一体感か。


 きっと、どちらの要素もあるのだろう。


「あ、そう言えば、チームの登録のためには村まで戻らなくちゃならないの?」


 シュラナが語る熱い戦いの行方に一段落がついたとき、ボクはそうカナネに訊いた。


「いえ、山小屋でも出来ますよ。山小屋はギルドの……、なんていうか、窓口のようなものなんです。山に来るまでにいくつかあった、茶屋もそうなんですけどね」


 というのも、この世界における公共事業であるギルドは幾つかに細分化されており、医療や流通、教育等といったものから冒険者まで様々ある。


 旅先で怪我をしてしまった。山で怪我をして動けない人がいる。奇妙なものを見つけた。拾ったものを換金したい。そんな時に直ぐに連絡を取り、応援を依頼できるように、山小屋や茶屋として、窓口のようなものてして各地に設置されているのだ。


 なるほど、コンビニのようなものか。ボクはそんな事を想像した。


「酒場なんかも、そういう機能があるよね。冒険者がよく屯しているのもそのためだとか」

「ですです。報告ついでに一杯やってこうぜ! みたいな。ある程度の金額の賞金なら、その場で受け取ることもできるので、もらってすぐに使える、というのも大きいですね」

「大きい金額はどうするの? あ、小切手みたいなのとか」

「小切手……、は分かりませんけど、ギルドに預金はできるので、少額づつ受け取る感じですかね。もっと大きな額で、となると本部だとか、ある程度の規模の町にある支部へ行くしか」


 なるほど、お金を管理するギルドもあるということか。


「そんなことよりさー、チームの名前とか決めようぜー。そういうの大事じゃないの? 俺、格好いい名前とかがいい」

「あ、確かにそれは大事なことです。チームを登録する際には必ず、名称も必要になるので。他のチームと被ると考え直さないといけないんだったかな? えっと、ルートさんは何か案はありますか?」

「ルートと愉快な仲間たち」


 ここで定番を聞けるとは。


「いえ、そういう名称はちょっと……」

「いや、ルート。よく考えてみろ。このチームのリーダーは唯一の冒険者である、カナネだろう? そこは、カナネと愉快な仲間たち、だ」

「いえ、そういうことではなくて、チームの名称に個人名は使えません」

「あ、じゃあキア様を崇め讃える会、とかは駄目なんだ」

「えっと……、それはキア様の願望で?」


 ちょっとした冗談です。


「それはそれとして、安易なものだと、どうしても被っちゃいそうだよね。他のチームってどんな名前なの?」

「えっと、エスパグローブ、ジュビーローパー、アスルレントランズ、などなどですかね」


 サッカーチームみたい。


「酒場で食事をしたときに、たまに料理の名前が聞こえてきたりしてね。そんなメニューがあったかな? と思ってメニューをみても存在しない。なんだろう、って思っていたんだけど……」

「はい。それはおそらくチームの名称ですね。たまにオムライスとか、ケチャップオムライスとか、ハンバーグオムライスなんかが量産されます」


 どんだけオムライスが好きなのさ。


「でも、料理名も良いかもな! レンコンの挟み揚げとか美味かった!」

「それなら断然ナポリタンでしょ。好きなものを名前に付けられるなら、それ以外にないね」

「そんなのはシュラナだけだろー。麺なんて食べにくい」

「猫だもんね」

「猫で悪いかー!」

「まぁまぁ」


 仲裁はカナネに任せるとして、ボクも少し考えてみようかな。好きなものを名前に、か。コロッケもそうだけど、この世界にある以上、被るリスクは相応にあると思う。そうなると、この世界にない料理が理想で……。


「アーリオ・オーリオ、なんてどうかな?」

「あら? 素敵な響きですけど、なんて意味なんです?」

「えっと、料理の名前、かな。思い出の味なんだ」

「へぇ、聞いたことがない料理だ。キアの……、前世の思い出?」

「そう」

「肉か? 食べやすいか?」

「んー、麺、かな? メインはニンニクかもだけど」

「ニンニクが利いた唐揚げは美味いよな!」


 あぁ、そう言えば酒場で唐揚げを食べたとき、この子一つ奪っていったっけ。


「キア様の思い出の味なら、それにしましょう。私達では纏まらなかったでしょうし」

「そうだね。それで、どんな思い出があるの?」

「んー、父親がね。休みの日になるとその料理しか作らなかったの。休みの日になる度にそれを食べていたら、何か一つのことに情熱を注ぐというのは素晴らしいことだということを学んで……、揚げ物が好きになった」

「似たもの親子だ!」


 いつかあの思い出の味を……、誰かに作ってもらいたいものだ。

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