ツッコミ 19 〜明日に備えて〜
もしも地下の空間が、村の真下まで続いているとしたら。その可能性を考え、ボク達は山小屋で体を休め、翌朝になってから突入を試みることにした。
山小屋での寝泊まりは基本的に雑魚寝で、ロフトもあるが天井は低い。要人のための個室が三部屋あり、ボク達はそこに泊まらせてもらった。穴を開けたのはそのうちの一部屋であり、勇者が一人、ボクとカナネが同室だ。
晩御飯は食堂で提供され、流通の手間だろうか、なかなかの値段がする。今回は、お礼の先払いとしてすべて無料にしてくれた。
横になるカナネの足元で、ボクは立ってうつらうつらとしている。この体勢で寝ることも、なんだか慣れてきたように思う。蔓を伸ばしてハンモックのようにすることも、一度は考えたが、一晩中蔓を伸ばしているというのも、それはそれで疲れるかもしれないし。そう悩んでしまい、なかなか実行に移せない。あと、場所も取るし。
「私、世界中を旅しながら、スイーツの食べ歩きをして楽しく暮らしていけたらなぁ、って思ってたんです。だから、冒険者になったんですね」
布団に横になったカナネが、ポツポツと喋りだす。
「珍しい石を見つけて小銭を稼いで、なんとか暮らしていけて。理想とは違うけど、まぁ、こんなもんか。なんて思っていたんですけど、まさかこんな、未知なるものを発見するような、大きな案件に立ち会えるなんて、思ってもみなかったことです」
「興奮して、寝られないとか?」
「勿論です。もしあの穴の先にあるのが古代の遺跡なんかだったとしたら、報告するだけでも一攫千金です。こんなの、夢でしか見たことがありません」
そんなものなのか、と思う。
「キア様は分からないと思いますけど、この世界は戦争で、一度滅ぶかも、というところまで行ったんです。そして多くの土地が人の手から離れ、一部の土地で再起を図り、繁栄を取り戻すまで千年以上もかかったんです。再び戦争が起こらないように、慎重に事を運んだらしいですね」
「今は、平和?」
「多分、ですかね。そもそも、あの戦争は始まった原因が不明で、今後どうすれば起きないようにできるのか、見通しが立たなかったと言います。結果、国を魔族と人間の集まる二つに限定して、互いに監視し合おう、みたいな感じにしたんです」
「パワーバランスは同じくらいなんだ」
「ですです。モンスターもいるので三つ巴、ですかね。あ、凶暴なもの以外は敵ではないですよ。彼らはどちらに対しても友好的なので、どちらかに偏らないように、二組が必死になっている感じで。モンスターが居ないと、良質な畑の肥料も手に入りませんし、美味しい食材も、高品質な糸も、全部パーですから」
そのバランスが、今の世界を形作っているのだろう。それを崩しかねないのが、凶暴なモンスターか。
「話が逸れましたね。なので、この世界には、人の手が入っていない、未開に戻ってしまった土地が数多くあるのです。むしろ、人の手が入っているところよりも遥かに多い。冒険者というのは夢があるだけではないのです。戦争の原因を突き止めるという、大事な使命もあるのです。まぁ……、結果的にそういうのもお金になるんですけどね。それが、まさに今、目の前にあるかもしれないのです」
「地底人が、戦争について知っていると?」
「というより、悪の組織かもしれないですもん。戦争を陰から操っていた、黒幕の極秘研究所なのです」
なるほど、一理あるかもしれない。けどまぁ、それも行ってみなければ分からないということで。
「寝ないと、調べるものも調べられなくなっちゃうよ。寝れないなら、子守唄でも歌おうか?」
「樹神様の子守唄! あぁ、興味があります。是非聴かせてください」
「じゃあ、歌――」
う前に、こいつ寝やがった。




