ツッコミ 18 〜発見〜
五合目にある商業施設は、別に高いビルが建っている、というわけではない。食堂があって、土産物屋があって、服屋や道具屋などが密集している場所である。その場所に名前は付いていないようなので、自分なりに分かりやすく、全部まとめて商業施設、と表現しているのだ。
そうした施設ができた経緯としては、ここから本格的な登山が始まるため、準備が不十分な者はここでしっかりと整えなさい、という配慮である。
「富士山っぽい、かな」
見た目は富士山特有の、平面にすると台形のようになる形を、西にギュッと寄せた感じだろうか。西側が切り立った崖のようになっていて、四つある登山道の中で、一番のハイレベルを誇っている。東側が一番なだらかで、登りやすいとカナネが言っていた。
ボクらの登る南側は、徐々に傾斜が変わっていく面となっている。北側も同様だが、登山の人気としてはだいぶ北側が優勢な模様。それはひとえに、北の方に大きな町があるらしいからだ。
五合目をざっと調べ、六合目を目指す。六合目には売店とトイレがあるだけだった。
「トイレは週に一度、騎士団に所属する魔法使いが浄化に来てくださいます。臭いも発生しないようにしてくれていますので、快適ですよ」
まるでガイドのようなカナネに拍手を送りながら、更に七合目を目指す。宿泊施設があるのは七合目と八合目。九合目は休憩スペースのみで、あとは頂上を残すのみだ。
七合目で、当たりを引いた。
地面に細い根を広げて調査をするという、村でもこっそりと行った調査方法だ。僕にしかできないような方法をもって地中を調べたところ、山小屋の真下に階段状の空間を発見したのだ。それほど広いものではなく、山の中心の方へ向かっている。根は五メートルほどしか伸ばせないため、それ以上の調査は実際に入ってみなければ分からないだろう。
「どうする?」
ボクが音頭を取り、山小屋の前に置かれたベンチに座って相談を始める。階段へたどり着くには、どのみち穴を開けるしかない。けれど、そんな目立つような真似をしていいのだろうか、というのが争点だ。
結論を言えば、どんな危険が待っているのかが分からないため、あまり人の目には触れたくない、というものだった。
穴を開けたままボク達が入り、その開いた穴に好奇心豊かな冒険者が入ってしまったとして、戦えない彼らは、あるかもしれない危険に無防備に巻き込まれることとなる。
「小さい穴を開けてくれたら、俺が入って調べてくるぜ」
ルートはそう言ってくれるが、流石に同意はしかねる。何があるかは全くの未知数だから、いくら魔法が使えると言えど、一人で行かせるのはリスクが大きすぎる。
「何かあった時に、一人でも逃げ出して情報を持ち出せるよう、なるべくこの四人で動きたい」
シュラナはそう語り、カナネを見る。戦えない彼女が、託されるべき人物だ。
「それなら、いっそ山小屋の主人に了承をとって、山小屋の中に穴を開けるしかないと思います。勇者と樹神様に頼まれたら、後のことも任せられると思いますし」
上からの圧力みたいで抵抗はあるけれど、山小屋を封鎖できてしまえば、それに越したことはない。ダメ元で、話を持ちかけてみることにした。
「おや、樹神様がいらした、ということは……、ははぁ、酒場の娘っ子に話を聞きましたね? あの子はおしゃべりだからなぁ。いいでしょう。我々としても地底人のことは気になっていましたので、存分に調査していただきたい。この件は内密にし、そうですね。今ここに樹神様がお泊りになることになったので、貸し切りとなった。そう言って冒険者を追い返しますよ」
少し年寄りくさい言葉を使う若い主人は朗らかに笑った。足下に何かがいるかもしれないという不安は、常日頃から付きまとっていたらしい。
「いいんですが?」申し訳なさそうに問い掛ける。
「ぜひぜひ。むしろこちらが頭を下げるのが礼儀でしょう。村の作物の件を調べている冒険者の探索範囲は、今は森の方へ移っています。この辺りは静かになったもんですよ。観光客に人気のある北側や東側だったら、難しかったかもしれません」
立地も幸いしたようだ。
早速、目星をつけた客室の一部の床板を剥がし、地面を剥き出しにさせる。一見なんの変哲もない地面だが、確かに、この下に階段があった。
「完全に埋まっているから、相当時間が経っているんだと思う」蔓をうまく使って、土を掻き分けていく。
「地底人、もういなくなっているんですかね?」
「もしくは、別の入り口があるか、だね」
「もしも作物不良の原因ここにあって、モンスターが中にいるとしたら、その可能性は高いだろーな」
しばらくして、階段は白日の下に晒された。祟の有無は、まだ分からない。




