ツッコミ 14 〜移動中〜
翌日、日が昇って直ぐに宿を出発した。山の麓までは徒歩で半日ほど(六時間ほどらしい)かかり、馬車の類は、ボクにはハードルが高いということで見送られた。拗ねた言い方をすれば、木偶の坊を置いておくスペースはないのだと。
石畳が敷かれた川沿いの道をひたすら歩く。左手に見える森は早々に消え、進行方向は真っ直ぐ下を向いている。森の中を西へ突っ切っていけば、こちらも半日ほどで別の村へ辿り着く。勇者と出会った森の近くだ。
芝のように背の低い草が生え揃う丘を越える。野生の馬は興味津々にこちらを眺め、また追い掛けるようにして駆け寄るが、視線を向けると逃げてしまう。そういう遊びをしているかのようだった。
川を跳ねる魚の元気の良さに驚き、三度目にはタイミングを見計らうようになって、四度目には蔓を使って捕獲することに成功した。以降は警戒されてしまったのか、全く跳ねない。猫のおやつにしかならなかった。
長閑な道のりであった。休憩に立ち寄れる茶屋は幾つかあり、名物もそれぞれ違う。団子だったり、うどんだったり。串焼きや焼きそばなんてものもあった。全部に寄って、全部を食べて、と網羅していたら体重と所持金の反比例に苦しんだことだろう。
ボク達は道程の三分の一辺りにある茶屋で、幕の内弁当を買った。昼前には山の麓に到着するため、軽く調査を行ってから食べることにしたのだ。
取り留めのない話を繰り返した。その一部を紹介しよう。
「お二人の好きな食べ物ってなんです? 私は甘いものが好きですねー。最近のマイブームはキウイを加えたヨーグルトです」
「肉! 魚は骨が邪魔だ」
「その骨は、ちゃんと外に捨ててね? すっごいチクチクするんだけど」
「溶かして食えよ」
「溶かして食ってやろうか?」
ゴミは正しく捨てましょう。
「僕は麺料理が好きかな」
一人だけ焼きそばを買っていた勇者である。
「ボクは、そうだなぁ。揚げ物全般かな? 特にコロッケかも」
「昨日も食べてましたよね。よっぽど好きなんですねー」
「コロッケはね、完成された料理なの。パン粉や小麦粉という穀物。ジャガイモという野菜。肉や卵というたんぱく質。そして油さえも兼ね揃えた、パーフェクトな料理なのです」
「え、ジャガイモって野菜でしたっけ?」
「ジャガイモはその名の通り、『いも』だと思うな」勇者の無慈悲なツッコミが入る。
「じゃあ、ソースをかけるからそれで野菜を補おう」
「譲りませんねー。他の野菜を入れてはダメなんです? ニンジンとか」
ありだとは思うけど、ニンジンとダイコンが入れ替わっていたらどうしようかと思い、避けていたのだ。認識通りで良かった。
「んー、野菜のコロッケと肉のコロッケをごっちゃにするのは、ね」という理由付け。
「ほら、野菜って区別してる」
そうやって笑い合って、次の話題へ移っていく。到着は予定通りだった。