ツッコミ 11 〜作戦会議〜
問題の先送り、とは聞こえの良いもので。カナネは自身の持つ村の異変の情報をチラつかせ、同行の許可を得ることに成功した。勇者は勇者で弟子なんか取る気はないのだけど、情報は欲しいから仕方がなく。もしかしたら接することで、勝手に見切りをつけるのではないか、と期待してのことだ。
そして、場所をタダ飯が食える酒場へ移す。ボク達はそれぞれの持つ情報を提示し合った。
「先ず、新参者として私から。この村は川を挟んで二つのエリアがあります。居住区と畑ですね。影響があるのは全域でして、畑のみならず、居住区の家々を覆う蔦も、正常のものとなっているそうです。本来はもっと茂り、幻想的だそうですよ。あ、それと、居住区の奥の森もそうですね。本来は、天をつくほど巨大になるそうです。あんまり育ちすぎると村全体が日陰になってしまうので、それを防ぐために始まったのが、あの森なのだそうです」
村の近くだけ、ほどほどの大きさに育つようにコントロールしていたわけだ。もっと大きいものが欲しければ、手入れの届かない、もっと奥の方へ取りに行く。
けれど、見たところその奥の方も、そこまで大きな木はなかったように思う。そもそも、ボク達はその森を抜けてこの村へやってきたのだから。でも、そうだな。今こうして考えてみれば、妙に木と木の間隔が空いている森だとは思っていた。この村を見て、間引きなどをして管理しているものだと思ってしまったのだけど、そうではなかった。
木がスケールダウンしてしまったから、妙な間隔がうまれたのだ。
「川の上流へ半日ほどで歩くと山があって、源流もそこ。冒険者はそこまでを調査範囲としています。下流も見て回ったのですが、特に怪しいものはないそうです」
「モンスターもいなかった?」勇者の指摘。
「友好的なものばかりです」
「そうか。このような事態を引き起こすなら、植物型のモンスターが怪しいと思うのだが、そういうのでもないのか」
勇者のなけなしのモンスター知識である。続く言葉が出ないから、なんとなく察する。この人は、あんまりモンスターに詳しくない。
けれど、植物型のモンスターがいるのなら、川からの恩恵を奪うことも考えられる。ボクの疑問も解決だ。すっかり、自分のことは棚上げしているけれど。しかし新たな問題として、そのモンスターはいったい、どこに潜んでいるのか、が挙げられる。
それと、二人と一匹はまだ気が付きていないやうだけど、川の影響がこの村の周囲だけに発生している、というのも疑問だ。まるで、この村の周囲にだけ発揮されるように、何らかの細工が施されているように思える。
「上流の山って、普通の山?」
「あ、はい。そうですね、標高は少し高いです。三千メートルくらいでしょうか。上の方に行けば植物もなくなってしまいます」
「植物が物凄く大きいとか」
「いえいえ、普通ですよ。よくある植物です。珍しい高山植物もありますけど、それは一般論でいう珍しいですから、今回のケースには関係ないと思います」
上流は魔力が薄い、という可能性もある? どうだろう。直に見たわけでないから、判断しようがない。
「キア、何か気が付いているの?」
「んー、まだ分かりません。でも、怪しいですね。ボク、上流の方へ行ってみたいです」
「それなら私が案内できますよ! 早速――」
「待って。もうすぐ日が暮れるだろうから、行動開始はまた明日。今日はもう、ゆっくりしよう」
会議というものに飽きた猫は、とうに花弁の中で眠っている。後はもう、散歩をするか宿屋で遊ぶくらいだろう。その間に、少し調べておこうか。