表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/12

ツッコミ 11 〜作戦会議〜

 問題の先送り、とは聞こえの良いもので。カナネは自身の持つ村の異変の情報をチラつかせ、同行の許可を得ることに成功した。勇者は勇者で弟子なんか取る気はないのだけど、情報は欲しいから仕方がなく。もしかしたら接することで、勝手に見切りをつけるのではないか、と期待してのことだ。


 そして、場所をタダ飯が食える酒場へ移す。ボク達はそれぞれの持つ情報を提示し合った。


「先ず、新参者として私から。この村は川を挟んで二つのエリアがあります。居住区と畑ですね。影響があるのは全域でして、畑のみならず、居住区の家々を覆う蔦も、正常のものとなっているそうです。本来はもっと茂り、幻想的だそうですよ。あ、それと、居住区の奥の森もそうですね。本来は、天をつくほど巨大になるそうです。あんまり育ちすぎると村全体が日陰になってしまうので、それを防ぐために始まったのが、あの森なのだそうです」


 村の近くだけ、ほどほどの大きさに育つようにコントロールしていたわけだ。もっと大きいものが欲しければ、手入れの届かない、もっと奥の方へ取りに行く。


 けれど、見たところその奥の方も、そこまで大きな木はなかったように思う。そもそも、ボク達はその森を抜けてこの村へやってきたのだから。でも、そうだな。今こうして考えてみれば、妙に木と木の間隔が空いている森だとは思っていた。この村を見て、間引きなどをして管理しているものだと思ってしまったのだけど、そうではなかった。


 木がスケールダウンしてしまったから、妙な間隔がうまれたのだ。


「川の上流へ半日ほどで歩くと山があって、源流もそこ。冒険者はそこまでを調査範囲としています。下流も見て回ったのですが、特に怪しいものはないそうです」

「モンスターもいなかった?」勇者の指摘。

「友好的なものばかりです」

「そうか。このような事態を引き起こすなら、植物型のモンスターが怪しいと思うのだが、そういうのでもないのか」


 勇者のなけなしのモンスター知識である。続く言葉が出ないから、なんとなく察する。この人は、あんまりモンスターに詳しくない。


 けれど、植物型のモンスターがいるのなら、川からの恩恵を奪うことも考えられる。ボクの疑問も解決だ。すっかり、自分のことは棚上げしているけれど。しかし新たな問題として、そのモンスターはいったい、どこに潜んでいるのか、が挙げられる。


 それと、二人と一匹はまだ気が付きていないやうだけど、川の影響がこの村の周囲だけに発生している、というのも疑問だ。まるで、この村の周囲にだけ発揮されるように、何らかの細工が施されているように思える。


「上流の山って、普通の山?」

「あ、はい。そうですね、標高は少し高いです。三千メートルくらいでしょうか。上の方に行けば植物もなくなってしまいます」

「植物が物凄く大きいとか」

「いえいえ、普通ですよ。よくある植物です。珍しい高山植物もありますけど、それは一般論でいう珍しいですから、今回のケースには関係ないと思います」


 上流は魔力が薄い、という可能性もある? どうだろう。直に見たわけでないから、判断しようがない。


「キア、何か気が付いているの?」

「んー、まだ分かりません。でも、怪しいですね。ボク、上流の方へ行ってみたいです」

「それなら私が案内できますよ! 早速――」

「待って。もうすぐ日が暮れるだろうから、行動開始はまた明日。今日はもう、ゆっくりしよう」


 会議というものに飽きた猫は、とうに花弁の中で眠っている。後はもう、散歩をするか宿屋で遊ぶくらいだろう。その間に、少し調べておこうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ