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ツッコミ 1 〜だってモンスターだし〜

 転生しました。二十三歳の若さにして。


 勿論、今後の人生に展望はあった。ほどほどの大学へ進学し、望み通りの会社へも、早々に入社できる運びになっていた。俗に言う、コネである。


 よって、いきなり「転生しない?」と街で神様にナンパされたとき、容易に断ることは出来たのだ。だから、俺はこうツッコんだ。


「怪しいキャッチかよ! 誘い文句はもっと練ってくれ」


 白昼のことである。商店街だ。休日ということもあって暇を持て余していた彼女いない歴年齢イコールな俺は、暇つぶしの散歩の途中に寄った肉屋でコロッケを買って出てきたところだった。


 そこに、美女からのお誘いである。神様と名乗ったのは、その時は冗談かと思った。


「そういうのとは違います。正真正銘、転生のお誘いです。今なら、まさに美女! といった容姿に転生できますよー」

「嘘かホントか分かんようなことに、いちいち反応する暇はないね」

「童貞のくせに」


 神様だったら許してくれよ。え、罪なの? 目の前の神様的には罪な事なの? 神様は俺の手からコロッケを奪ったあげく、蔑むような目で見つめてくる。邪神か?


「満足な学生生活。満足な未来への展望。それらもいいでしょう。しかし、私は刺激がほしい。だから貴方には転生してもらいたいのよ。貴方は暇つぶしで散歩に出た。私は暇つぶしに転生させる人物を探していた。ね、運命でしょう」

「いや、その言葉を聞く限り、作為的な面しか見えてこないのだが」


 ただ単に、暇つぶしをしていた俺を見つけて声を掛けただけだろうに。


「ともあれ、返答を早くいただきたいものね。こんな道の往来で、他の人に注目されます」

「肉屋の店先で言い争っているんだもんな。普通に考えて迷惑だろ」

「そう、その通り。貴方は迷惑をかけているのです。つまりは罪ですね? 転生の準備はよろしいですね? 問答無用。コロッケのお代くらいは、サービスしますよ」


 そうして、俺は転生したのだ。なんという運命という名の作為的な悪戯。問答無用で覚悟を決めるしかなかった俺は、もう、そのサービスというものに期待するしかなかった。


 そうして、迎えた新たな世界。俺は確かに、まさに美女と言うに相応しい容姿を手に入れていた。


 艷やかな髪は背中までを覆い、サラサラと風で揺れ動く。柔らかな目元は優しさを醸し出し、鼻も唇も可愛らしいものだ。キュートな美人。そう評するに相応しいだろう。たわわに実った胸も、男受けしそうなものだ。


 しかし、下半身は植物である。腰から下は薔薇のような一輪の花の中央に埋もれ、刺々しい蔓が辺りに伸びて葉を茂らせ、しっかりと根を張っている。


「え、美女?」


 どちらかというと、雌しべじゃねーか! そんなツッコミが森に響き渡った。

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