表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/74

ツッコミ 1 〜だってモンスターだし〜

 転生しました。二十三歳の若さにして。


 いや、若い若くないは関係ないだろうけど、未来ある若者として、自らこの選択を選んだ訳ではないのだ。勿論、今後の人生に展望はあった。ほどほどの大学へ進学し、働きやすそうな会社へも、早々に入社できる運びになっていた。俗に言う、コネではあるが。


 よって、いきなり「転生しない?」と街で神様にナンパされたとき、俺は迷うことなく拒否をした。むしろ、疑ったと言ってもいい。

 何故なら、自分が思う転生というのはもっとこう、トラックに轢かれたりだとか、襲われている人を庇ったりだとか、劇的なものであるべきだと思うから。


 そう、悲劇から始まるからこそ、後々の喜劇がより引き立たてられるのだ。けして、町で軽く声をかけられるようなものではない。

 だから、俺はこうツッコんだ。


「怪しいキャッチかよ! 誘い文句はもっと練ってくれ」


 だって、真っ昼間に転生のお誘いだぜ? おまけにアットホームな商店街だ。ぼったくりバーども営業はしていないだろう。

 ……あれ、ではツッコミの仕方を間違えたのでは? ま、まぁ、そこはどうでもいい。ともあれ、怪しいというのが問題なのだから。


 一先ず、もう少し詳しい状況を説明しよう。休日ということもあって暇を持て余していた彼女いない歴年齢イコールな俺は、暇つぶしの散歩の途中に寄った肉屋でコロッケを買って出てきたところだった。


 家族経営のアットホームな肉屋であり、アットホームな商店街を牽引しているような人気店だ。


 そこで、美女からのお誘いである。おまけに神様と名乗ったのものだから、冗談としか思えない。


「そういうのとは違います。正真正銘、転生のお誘いです。今なら、まさに美女! といった容姿に転生できますよー」

「嘘かホントか分かんようなことに、いちいち反応する暇はないね。それに、美女というのは往々にして人によって評価が分かれるものだ。押し付けられた美女像になんて興味はないね」

「童貞のくせに生意気な」


 神様だったら許してくれよ。え、罪なの? 目の前の神様的には罪な事なの?


「……違うよ? ぼくはけいけんほうふだもん」

「ふんっ。はっきりと喋らないからモテないのです。それならいっそ、美女! と言った見た目になった方がモテると言うもの。これは優しさです。受け入れなさい」


 そう言いながら、買ったばかりのコロッケを奪って食べ始めるのは優しさなのですかね? 行列の先頭できる日もある人気店のコロッケだぞ? 優しさの欠片もなさそうなのですが、それは気の所為なのですかね? もしや、邪神か?


「満足な学生生活。満足な未来への展望。それらもいいでしょう。しかし、私は刺激がほしい。だから貴方には転生してもらいたいのよ。貴方は暇つぶしで散歩に出た。私は暇つぶしに転生させる人物を探していた。ね、運命でしょう」


 はい、邪神確定。話の途中から自己主張に変化しやがったよこの神様。


「いや、その言葉を聞く限り、作為的な面しか見えてこないのだが」


 ただ単に、暇つぶしをしていた俺を見つけて声を掛けただけだろうに。そう突っ込むと、とても可憐な笑顔を見せてくれた。……美女! という見た目も、もしかしたら良いものなのかもしれない。


「ともあれ、返答を早くいただきたいものね。こんな道の往来で、他の人に注目されます」

「肉屋の店先で言い争っているんだもんな。普通に考えて迷惑だろ」

「そう、その通り。貴方は迷惑をかけているのです。つまりは罪ですね? 罪には罰を与えなくてはですね? よーし、転生の始まりだ。問答無用。コロッケのお代くらいは、サービスしますよ」


 そうして、俺は転生したのでした。

 なんという運命という名の作為的な悪戯。問答無用で覚悟を決めるしかなかった俺には、もう、そのサービスというものに期待するしかなかない。


 どんなサービスなのかなぁ。アニメのような、特殊な能力でも貰えるのかなぁ。並み居る敵をバッサバッサと切り倒すような、過激な能力も憧れる。

 だって、美女なのだ。美女が活躍をするのだ。強い美女がお好きです。


 ほら、自身の姿を見てみよう。艷やかな髪は背中までを覆い、サラサラと風で揺れ動く。柔らかな目元は優しさを醸し出し、鼻も唇も可愛らしいものだ。キュートな美人。そう評するに相応しいだろう。たわわに実った胸も、男受けしそうなものだ。


 ――しかし、下半身は植物である。腰から下は薔薇のような一輪の花の中央に埋もれ、刺々しい蔓が辺りに伸びて葉を茂らせ、しっかりと根を張っている。


「え、美女?」


 どちらかというと、雌しべじゃねーか! しかも、自生していて動けねー! そんなツッコミが森に響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ