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第3話 この女、面構えが違う……




この世界に生きる人は皆主人公で、それぞれの物語を歩んでいるとするならば、私の物語はどんなジャンルになるんだろう。


希望が叶うなら、「私の名前は春野萌奈! これといった取り柄はないけれど、幸せな毎日を送っている平凡な女子高生だ!」みたいな一人語りから始まる、ロマンティックな学園ものであってほしい。


そしてそして、勉学とスポーツを頑張ったり人間関係に悩んだりして、最後は晴れやかな面持ちで卒業を迎えるのだけど、校門をでるとき私の隣にいるのは大好きな男の子で。

エピローグではお互い微笑みながら頷きあって、明るい未来へ向けて歩みだすのだ。

そんなありふれた幸せな物語が私にとっての至上。


しかしながら、ロマンスというのはそんな生易しいものじゃない。

私は、主人公であるにもかかわらず厳しい現実と対峙している。


「俺とお前がいれば苦難を乗り越えられる。さぁ」


幼馴染の東優斗は私にとって毒のような存在。

一度彼と関わってしまうと、私の物語の主人公は私だけじゃないような気になってしまう。

彼と相対した人はみんな只者ではない雰囲気を感じ、さらにディープに関わっていくと凡人だと気づく。

彼は、言わば只者ではない凡人。

そしてタチが悪いことに、東優斗の進む道と交わってしまったとき、彼を追わずにはいられなくなる。彼にはオーラがあるのだと思う。

彼に対して手前勝手に見えない何かを期待してしまうような空気といったらいいのかしら。

自分の道をひた走るのに夢中の彼に自覚はないだろうけどね。

そのせいで私はいつも翻弄されっぱなしなんだから。


でも、これが現実である以上仕方がないわよね。


この先、彼と関わる人には私から忠告しておくわ。


断じて冗談ではなく、彼を好きになるのはやめた方がいい。

ソースは恥ずかしいので教えないけど。

ともかく彼は毒。毒なの毒。


……ほんとね、攻略って何よ。まったくもって馬鹿馬鹿しい。

そしてそれを手伝っている私が一番何なのよ、一番馬鹿じゃないの。

ねぇ、なんで私はかくの如きポジションに甘んじているの。

私は主人公で、都合のいい幼馴染じゃないのに。


……といった具合に、定期的に発散しないと彼の幼馴染はやってられない。彼と関わると相当心を消耗するわよ。


もし私が幼馴染でなく優斗に恋するただのクラスメイトだったら、きっとよく分からない詭弁に振り回された挙げ句、弄ばれて病むことになると思う。

世の中、何を考えているのか分からない人が一番怖いんだから。


でもね、彼と出会ったことが不幸かと聞かれれば、私はそうじゃないと答える。

気づいた? そう答えてしまうから毒なのよ。


言っておくけれど、彼を好きになった場合ストレス発散という対症療法はできるけれど完全な解毒はできないからね。

それはもう、もんもんもんもんもんもんする日々を送ることになるから覚悟することね。


だからもう一度言うわよ、彼を好きになるのはやめた方がいい。


はぁ。

……私の妹もね、少6あたりからだんだんオカシクなってきててちょっと見ていられないわよ。


毒に侵されるのは私だけいい。

私とは違って華やかで、純粋な妹にはそのままでいてほしいの。

私にはもう、あんな華やぐ笑みを浮かべられないから。


そうよ。

私はすでに彼に毒されている。重症でもう手に負えない。とっくに抵抗だってしてない。


こうなってしまえば、ただ覚悟をするだけ。


目白押しの行事をひかえた激動の高校生活に、その後に控えた受験、そして大学生活が始まり果ては就職と、そんな荒波に揉まれ続ける未来で憤然と自分を通し続ける彼にこっそり括りつけた手綱を、握り続けることに。


そしていつの日か、彼が独りになったとき、私は嬉々としてそれを引くの。


それが、理想とかけ離れた私の物語であり、厳しい現実。

主人公は東優斗と、優斗に引っかかってしまった哀れな幼馴染の、春野萌奈。


私はヒロインじゃない。

その先がバッドエンドになるのか、ハッピーエンドになるのかは分からないから、手を合わせて幸福なオチを待ち受けたりなどしない。

自分の幸せは、自分で掴み取る。


この哀れにも毒に侵された主人公春野萌奈を、自分自身で幸せに導くの。


それにあたって、今のところは様子見しといてあげる。虎視眈々とね。


ふん、斎藤明里さんで精々恋愛のお勉強をしておけばいいわ。


ばーかばーか。






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