第13話 うかうかしてたって
中間試験が終わって6月もいよいよ折り返し。
高校2年生になってからの2ヶ月半はあっという間に過ぎ去ってしまった。
明里さんに話しかけるのを失敗したり、幼馴染をからかって遊んだり、笘篠……いや美月と友達になったり。ちょっと休憩したり。
色々なことがあったが退屈しなかったのは確かだ。
休憩してる間だって、テスト勉強とか来る体育祭について考えたりしていた。時間を浪費したつもりはない。もちろんちゃんと体だって休めたし、なんなら筋トレに励んでいたからな。もはや日課になったし。
そんな約2週間ほどの休憩。
うーん、全然休まってない気がする。
ともあれ、テストも休憩も終わったからには心機一転。
攻略を頑張るとしよう。
筋トレを始めたからか、最近の俺はメンタルの具合がすごく良い気がする。
調子に乗ってるだけかもしれないけど。
そんなことはどっちでもいいか。
考えるべきはそう、体育祭である。
体育祭!
この高校の体育祭はお祭り的な要素が多分に含まれた大変愉快なイベントだ。
先生や実行委員は皆何かしら仮装をしているし、応援団のダンスパフォーマンスは見応えがある。他にもロマンティックなイベントもあったりする。
攻略に勤しむ俺としてもこの一大行事は無駄にできない。有効活用しなければ。
ふっと息を飲んで、俺は黒板に書かれた種目を見つめる。
「体育祭で参加する種目について希望をとります」
色白で弱々しくて幸薄そうだがそれもまた儚げで美しい。
我らが体育祭実行委員の純黒さんは自信なさげな顔でクラスメイトたちへ視線をさまよわせながら、用紙をくばっている。
体育祭実行委員決めの日に欠席したのが運の尽きだったな。
「……放課後に回収します」
そうして、少し早めに授業準備時間となる。
なんだか空気がどんよりとするのは気の所為だろうか。
純黒さんが去年のミスコンで見せたような圧倒的顔面をマスクで覆っていなければ、こうした学級での話し合いも上手く進んだだろう。
数少ない俺の友人たちを除いて、阿呆なクラスの皆は純黒さんがあのミスコンの美女だとは知らないようなのだ。純黒さんも、偽名参加とは一体何を考えているのか。
まったく嘆かわしい……。
クラスの男子共、ぜってぇ地味なおっぱい体育祭委員としか思ってないからな。
「種目決めたー?」
用紙をぺらぺら揺らしながら聞いてくる源に、俺は毅然と言った。
「明里さんと二人三脚したい」
「うーん俺は女の子とだったら誰でもいい」
「聞いとらんわ」
「二人三脚は基本男子と女子のペアだからな。はい俺勝ち確」
「俺は明里さんか……水瀬さんでもいい」
「友達作戦はまだ継続中か」
「まぁな。思ったんだ。俺と美月が喋ってても明里さんは会話に入ってこないだろ? でもそこに水瀬さんという2人目がいたら輪に入ってきやすいんじゃないか!?」
「そう単純にいくかよ」
「まぁこっちは暇があれば進めようみたいな。ゆるくやっていくつもりだ」
とは言え、今日は忙しくなりそうだ。
明里さんたちが一体どの種目を選ぶのか今日の放課後までに調べなくてはならない。
はっきり言って無謀。
しかし運任せに二人三脚を選ぶのは最終手段だ。
できるなら、明里さん周りの人たちと種目を被らせて交流したい。
ふぅ、やるか。
「ま、せいぜい頑張るが良いさ。青春ボーイ」
「だまれ」
◆
ほんで自分はどうするん?
知るかっ、今考えてんだよ!
もう時間がないで? この昼休みが終わればもう君にできることは二人三脚オールベットや。
クッソ!!
結局何の情報も得られないまま、昼休みに入ってしまった。関西人の俺と自問自答している場合じゃないっていうのに。
俺は今焦っている。
このまま泣き寝入りするしかないのか。いや、違う。けどどうすれば……。
宛もなく大股で廊下を歩く。
いつもなら教室で昼食をとっているはずの明里さんたちがいないのだ。
ならば学食かと思って見に行ったがいなかった。
俺があの時トイレに行かなければ!
他に、明里さんたちがいそうな場所は……。
「東くん」
「一体どこに……」
「ね、ちょっと」
「天気もいいし、外か」
「無視しないで」
「広場のベンチとか……って痛っ」
「ごめん」
力こそ強くないものの、明らかに後ろから頭突きをされた。
「あんま痛くなかったし、いいけど」
「わざとでごめん」
「え、わざとなのっ?」
「だって無視するから。ごめん」
弱そうに見えて肝が座っている女の子。
純黒さんってそういう系女子だったな。
「無視したのは悪かった。今色々あって急いでて」
「明里さんたちを追ってるのは知ってる」
「え」
「というか、明里さんのことなら何でも知ってる」
「それってなに、え、どういうこと」
俺が純黒さんについて知ってることは実はそう多くない。普段は地味めな風貌だが本当はめちゃくちゃ美人なこと。そして去年のミスコン準優勝者。
ミスコンの時の純黒さんはとても堂々としていた。結果出たときにはとてもすごい悔しそうで印象に残っている。
「私はね、決めてるの。この3年間の間に何としてでも斎藤明里に勝つって」
前髪で隠れていてもなお彼女の炯炯とした目に圧倒される。やはり只者じゃない。
「えっと、それで色々明里さんに詳しいと?」
「そう。だから、どうかな」
「どうって……」
「協力関係。私は明里さんのことなら何でも知ってる。もちろん彼女が参加する種目のことも」
「まじ?」
「まじ」
「分かったよ純黒さん。ちょっと場所を変えようか。ここは、大人の話といこう」
「うん。そうだね」




