26話【地下8階攻略】
マップに別パーティーが表示されたときは、ヒヤッとした。
だけどしばらく武藤さんたちも別パーティーもその場で動かず、散会した後、また合流して戻ってくるのを見て、まともな人たちと出会えたのだとほっとした。
「戻ったぞ」
こちらに手を振って駆け戻った武藤さんたちの後ろには4人の新しい顔があった。紹介を受け、小部屋の探索も今までの時間内で行えると聞いて、安堵した。
自衛官の木村さんは剣術スキル持ちの中級剣士で気配察知持ち。
主婦の田村さんは精神回復スキル持ちの中級回復師で罠解除持ち。
女子高に通う夜桜さんは闇魔法スキル持ちの中級魔術師。
有名私立高校に通う葉山さんは何と特殊スキル攻略サイトを持っていて、職業は探索師。弓術スキル持ち。
新しく加わった彼らは、10階ボス攻略後もスキルポイントが足りなければ譲渡をしてくれると約束までしてくれた。
みんな、安堵して、よかった、と漏らす。
これで攻略の安全度が上がる。モンスターとの戦闘より、危険人物にぶつかった時の。
攻略サイトの存在のお陰で、これから先の階層のマップも宝箱位置、モンスター配置、出現モンスターもわかる。
木村さんたちの後に出発したパーティーと木村さんたちは出会わなかったらしい。つまりは、木村さんたちと武藤さんたちの間に出発した彼らは、全滅してしまったのだろう……。
気分が沈むが、そうしている時間は今はない。
出来ることをしなくてはいけない。
落ち込むのは後でいい。今は出来ることを。
葉山さんの持つ攻略サイトスキルのモンスターのデータから強さの比較として、と少し考えたが、武藤さんの戦力の高さだと、モンスターが強くなっているのかさっぱりわからない。
察知した瞬間に斬撃を飛ばして蹴散らすし、一撃で片がつく。
探索スピードが落ちていないということは、そういうことだ。
職業、剣聖による攻撃力の増加と、僕の共有者による追加ステータスボーナスで最早敵なしすぎて、何も比較が出来ないのだ。
多分、10階までみんなでマラソンしながら進んでも、多分問題がない。
けれど一度強く恐怖した人たちのメンタルを思うと、そこまで強行しなくてはいけないほど時間がないわけでもない。
なにより、モンスターより、先行者が怖い。PKをした人の中に、5階6階のアナウンスを聞いて更にヤケになってPvPを強行してくる人間がいたら。
いくら武藤さんたちが強くても、保護している人の中には錯乱してしまう人もいるだろう。
木村さんのパーティーメンバーで主婦の田村さんはカウンセラーの仕事をしているらしく、保護されている人を心配していたので僕と攻略を交代してもらった。
田村さんは精神回復師で、ここまでパーティーが混乱せずに進めたのは彼女の助力によるところが大きいようだ。
次階層での攻略中は、田村さんが残った人たちの精神を回復するということになり、そのため、次の階層は回復師の有坂さんを入れ、葉山さんを残して進んだほうがいいだろうという話にまとまる。
葉山さんに攻略サイトを見せてもらいながら、会話をした。
このスキルがあってもクエスト攻略ページは存在せず、ダンジョンの仕組みや、条件関係はわからないらしく、いろいろとショックを受けたよ、と力なく微笑んでいた。
回復師の上級職である蘇生師のツリーが判明したことも大きい。
これなら、もしかしたらここで死亡した人すべてを助けられるのかもしれない、という希望が僕らの中に芽生えた。
しかし、僕の共有者については上位職などは不明で、情報に欠けも多い。
スキルレベルの問題があるのかもしれない。
そして根岸くんたちからの情報でわかったことは
『プレイヤーキルによって得られるのは、武器防具アイテム、経験点だけではなく、スキルもまた奪える』
と、いうこと。これが確定情報として手に入ったのは、不明瞭であるよりはいい。
彼らも何かがあれば、待機している人たちを守ると言ってくれた。
そうならない限りは、彼らを刺激しないよう隅で静かにしている、とも。
ここに来て、頼もしい仲間が増えて、本当によかった。
とは言え、時間は限られている。
僕らは少し話しをして、8階をまた全員で走破する。
なんとなく、保護した人たちの足取りも軽い。
そして、8階ボスは武藤さんと木村さんのコンビの初撃であっけなく沈んだ。
アナウンスが、鳴り響く。