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24話【死亡の確定】

 8階に到着し、アナウンスが流れた。


『パーティー内に死亡者がいる場合、パーティーを解散させると死亡者の現実での死亡が確定します。死亡者がいるパーティーのプレイヤーはうっかり解散しないように気をつけましょう』


 泣き崩れる人が出る。周囲の人たちで、それを慰めているのが見える。

 死亡の確定。現実の死、それはいつ起こるのか。確定した瞬間か、それとも違うのか。


 僕らが知っている情報を言わずにいるのはみんなの混乱と気力の消耗を避けるためで、それは原国さんからの忠告だった。


 蘇生魔術にも縛りと制限がある。それは僕たちにはどうにも出来ないことで、だからこそ、知らないほうがいいこともある。

 知らなければ進める。知れば動けなくなることだってあるのは、地下5階で彼ら自身が味わわされていたことだから。


 だから真実クエストについては、全て伏せていた。


 相変わらず説明に悪意ががあるアナウンスに、眉根を寄せていると、

「ちょい作戦タイム。いいか?」

 と、武藤さんは変わらず気分が落ちそうな僕たちの空気を壊しにきてくれる。凄い。



「俺の気配察知がレベルMAXになった。マップ見てくれ」


 マップには階下部分が表示されている。あとの地図は暗く、進行していないので表示はされていない。

 いままでと違うのは、現在地点に僕らパーティーが黄色、他の人たちは水色のドットで表示があるということだ。


 武藤さんたちが探索に行く間、原国さんが階上からの気配に気を配りつつ、パーティーマップで武藤さんたちの進行を見守っていた。

 何かあって動けなくなった場合、すぐわかるように。


「多分ここからはモンスターも他の色の点でマップにも表示されるんじゃねえかと思う」


「マップ上で武藤さんたちの快進撃が眺められるってことですね」


 微笑んで言ったら「そういうこった」と頭を大きな手でぐりぐり撫でられた。

 こんな時だけど、なんだか、ちょっと嬉しい。ダンジョンへのよくない感情がほぐれていく。


 僕たちも有坂さんの提案でスキルポイントコインを保護した人たちから受け取ったことを話した。


 蘇生師まで、あと半分。

 モンスターコインは温存して、足りなかったらブーストに使い、あとはガチャで何とかしたい。


「了解了解、んじゃァ、ちょっくらいってくるわ」

 武藤さんたちが8階攻略を開始した。



*



 僕も少し気になって、マップを見てみる。ぐいぐいと地図が広がって、小部屋のある暗い部分にもモンスターの表示の赤い点が現れる。

 通路の赤い点は現れては消える。サクサクの快進撃だ。8階も問題なしだろう。


 僕はマップのチェックを原国さんに任せ、有坂さんと、みんなの様子を見る。

 有坂さんの中級回復師は、レベルは上がっているものの、初級と違い職業スキルが増えない。今まで得た職業スキルの強化はされる。


 蘇生師に派生するルートの最後で蘇生の中級が取れる。


 だけどそれは蘇生の珠中級と同じ効果だろうと思われるので、有坂さんが蘇生師になれてからが問題だ。

 ツリー内容が解放されるのはその職業を得てからなので、ツリー構成や必要ポイントがわからないのがネックだ。


 うちのパーティーは既に有坂さん以外にポイントは使っていない。

 彼女に全部注ぎ込んでいる。小部屋が攻略できないのは痛いが、それでも制限時間がある。


 人の命は天秤にかけられない。

 今生きている人、蘇生可能な人。

 僕たちは、出来る限り両方を救いたい。それでも選ばなければならないかもしれない。


 ひとつ、ため息をついて落ち着く。出来るか出来ないかじゃない、出来る方法を探す。


 難しいなと思うことがあったら、どうやったら出来るのかをひとつずつ探すのが大事だよ。そう言った母の声を思い出す。


 このダンジョンは情報の出し方や強制的に参加させられるデスゲーム的な部分はとても性格が悪いが、即死する罠や、突然強いモンスターが出たりなどの所謂死にゲー的な要素はない。すごく素直に作られた、初級ダンジョン的なイメージを僕は持っている。


 不意打ちはなし。敵が全体攻撃を撃って来ることがあるかどうかもわからないほど、先制撃破が出来ている。

 ダンジョンのクリア自体は問題なく出来そうだ、という感触はある。



 救急隊のおじさんから聞いた話だと、5階で立ち止まらず、進んだ人たちもいるようだ。

 その人たちは真っ当に攻略を重ね、進んできたパーティーで、人数に欠けは出ていたが、5階で動ける人と組んで進んだという。


 人格に問題はなさそうに見えた、とも聞いた。その彼らと、合流できるだろうか。生き残っていて、くれているだろうか。


 それ以前に進んだ人間の情報は当然、ない。

 ソロの悪人も怖いが、徒党を組んだ悪人はもっと怖い。

 この先で武藤さんたちが出会う可能性が高い誰かが、悪人でないことを祈るしかない。



「真瀬くん、有坂さんちょっといいかい」

 原国さんが小声で僕らを呼んだ。


「どうしました?」

「マップを見て欲しい」

 囁かれて、マップを見る。



 そこには、武藤さんたち4つの黄色の点に対面して、他パーティーらしき人間の、4つの水色の点が映っていた。

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