4日前 歩く
街道沿いの町フウラに着いて宿を取り、翌朝未明に町を発つ。
四日ほど前にもここを通った。
それほど治安は悪くなさそうだったのに、今回は宿の外に死体が2つ転がっていて、どうなってんだこの町、と思う。
薄闇の街道を身軽に歩きながら、そういえばサラと知り合う前はこんなだったなぁと思い出す。
ぐーたらのハーフエルフの朝寝坊にはさんざん困らされてきた。今頃どうしているだろう。
昼をいくらか過ぎた頃、ヒロキを拾った岩場が見えてくる。
まさかいるかも、と覗いてみたが、さすがに誰もいなかった。
すこし休憩してまた歩き出す。
本来ならこのぐらいの距離感で、一晩ごとに宿をとって峠を越えられるはずなのだ。なんであんなにグズグズと野宿しながらの旅になるんだ、と考える。
マーシェは頭を振った。
考えながら歩くと、距離が稼げない。やめておこう。
夕方にはリアムの町に着いた。
さっさと宿を取り、食料を調達した。
一応他の仲間が通っていないか、露店の店主に確認する。
行きにも寄った店の店主は、マーシェの顔を覚えていた。
「あれ、帰りかい?」
「ま、そんなとこ。」
宿の安い部屋は他の宿泊者と同室になるのがきついが、抜身の剣を握って寝ているのを見ると、誰も近寄ってこない。
翌朝夜明け前に宿を発つ。
さて。エルフに吹っ飛ばされたとして、そろそろ他の連中もこの辺りを通るころなんだけどな。
山道に差し掛かって、辺りを見回す。
もう一回アティスを呼んでみようか。
いや、そんな事をしたら、兄にブチ切れられるに違いない。二日経ってまだ探せないのか、と。
迷う。
でもエルフに追い払われた森の動物たちが、そろそろ戻ってくる頃でもある。仕方ない。
「アティス!無事か!」
白んでくる空に向かって叫ぶ。
少し待つ。太陽が昇り始めた。
「レケト村にいる!」
声が聞こえた。ホッとする。レケトは峠を越えたところにある、ファーツェとリアムの間にある村だ。
「待ってろ!」
あーよかった。弟は無事だ。
それなら後は、少々怒られても大したことはない。