停止している時の中で
流石に2話は無茶でしたね。
俺は引っ張られながら扉を開ける。
そこには、たくさんの冒険者たちが並んでいた。
その数ざっと300人ほど
「へぇ?あいつが新しいギルドマスターかよ?……雑魚そうなヤツめ」
「何だよ……もっと強そうなやつにしてくれよ!」
「異世界人ってのは本当かよ?何で侵略者の下につかなきゃ行けないんだ!」
「ちっ!ゴミ野郎の異世界人め死に晒せ!」
うーんなんと言うか、とても嫌われているのだなあ……と改めてこの世界における異世界人の罪を認識した上で
「あ〜さて皆さん、お静かに。これより新たなギルドマスターに任命されたクジョー様のご挨拶の時間です」
とマイクのようなものを手渡された。
周りを見るとどうもニヤニヤしているやつもいれば、呆れた顔をしている奴もいる。
ふむ、なら俺がするべきは。
「──────うん。煩いから全員『黙れ』」
──────全力で殺意をぶつけてやる事だ。
その言葉は完全に予想外だったのだろう、その場にいたギルドの人たちが全員停止する。
多分唖然としているのだろう
だが俺はそんな事を無視してゆっくりと辺りを見回す
「さて、皆様……私の名前は九条 影一と申します。女神よりこの地をより良いものにしていくため、本日よりギルドマスターに就任致しました」
とても優しく、包み込むような喋り方で話す。
しかし、私に対して先程から殺意をむき出しにしているやつが何人かいるのが少しウザったく感じたので
「それで……おや?先程から何か言いたげですね。もしかして何か報告があるのでしょうか?」
と少し煽るように殺意の方向に言葉をなげかける
その言葉に合わせて少しガタイの良い男3人と女が1人こちらに出てくる
「あんたさぁ、なんなの?言っとくけどアンタみたいな弱っちそうな奴にこのギルドは纏められねえから!……何で頑張ってたアイツがギルドマスターになれずにお前みたいなぽっとでの奴がなるんだよ!」
その言葉に合わせて先程まで黙っていた奴らもそうだそうだと言わんばかりに騒ぎ始める。
慌ててギルドのお姉さんが静かにしてください!と叫ぶもどうやらこの暴動を止めるだけの力は無かったようで全く相手にされて居ない。
そんな熱量のこもった暴動を抑圧する必要があるな、と俺は考えると
『時よ止まれ』と脳内で呟く。この言葉に合わせて世界の歯車がゆっくりと停止する。
先程までの喧騒が一気に静寂へと変わる
──────さて、それでは彼等を黙らせる為にもこの国のデータと仕事の処理を終わらせておきますか
何よりここは止まった時の中、時間などいくらでもあるのだからな。
「そう呟くと、彼はゆっくりと書斎へと歩みを進める。無論、扉は硬く止まってしまっているが、それを俺は叩き壊す。」
うーん、思っていたよりも脆かったな……いや違うなこれ。俺の力がより強くなってる証拠か?
「実際彼の力は元々の時を止める力より進化していた。そしてその進化は彼に新たな選択肢を与えた」
あーこれあれか。以前は時が止まった世界ではものにダメージが入らず、それが解除それた時に全てのダメージが纏めて襲ってたけど、それが無くなったって事か?
「彼は試しに近くにあった剣をへし折ろうとする」
「以前ならこれは折れずに、能力解除後に折れていたが……果たして」
へぇ?折れたよ。まじか
なるほどね、折れた時間軸のまま停止するのか。……これなら割と色々と楽になるな。
「彼は書斎にゆっくりと入り、そうしてそこにあった本を片っ端から読み始めた。無論ページに触れればそのページは時止めの力から解放されてめくれるようになる。そうして実に………………外の世界で言う1年ほどかけて完全にこの書斎の中の本を読み終える。」
なるほど、ざっとわかったが……この世界割とゴミな使用が多いな?
そりゃギルドマスターが過労死するレベルの仕事が生まれるわけだぜ……
「そう言いながら彼は自分のデスクの横に置かれた大量の書類の束を見る」
ふむ。これが全て俺がやらなきゃならない書類か?
多すぎるとまでは行かないが、それでもこれら一つ一つに目を通すのは割とめんどくさいな。
後でやるか……とりあえず下にいるヤツらのこともある程度分かったし、改めて現地で、見るものと情報だけでわかる事の差を感じたな
「そう言って彼はゆっくりと服を整えて、もちろん砕いたドアは修理してゴミを処分した後、その止まっていた時をゆっくりと動き出させた」
※『ちなみにであるが、止まった時の中では彼のセリフは全てカギ括弧が消え、代わりにナレーションが全てカギ括弧の中に入るのだが、それは何故かと言うと、止まってる時の中では誰も聞いていないのだからセリフをセリフとして世界が認識しなくなるためである。』
『時よ動き出せ』
彼のその言葉に合わせて、世界に音が戻り始める。
ばこん。というくぐもった音が何処かで響いたし、バキンという鉄の剣が折れた音が何処かでした気がするが、そんな音は眼下の喧騒の中に消えていった。
とりあえず毎日投稿します。それだけは絶対にやって見せたいです