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夏のホラー2023『帰り道』

お経

作者: 家紋 武範

 会社の帰り道、夕陽を背中に浴びながら妻からのトークアプリを思い出していた。今日はカレーらしい。料理上手な妻のカレーはまた格別なのだ。

 通り道の壁の奥からもカレーの香りがする。ますます食欲が沸いてきた。


「ナムアミダブツ……」


 突然の声に視線を落とすと、そこには小さなお坊さんが立っていた。そしてまた、


「ナムアミダブツ……」


 こちらを向いて手を合わせて祈るものだからムッとした。お坊さんを避けてさっさと行こうとするも、前に立ちはだかって退こうとしないので、怒鳴り付けた。


「いい加減にしてください! 何なんですか! お経なんて不吉じゃありませんか!」


 と言うと、お坊さんは険しい顔で言い返して来た。


「君こそ、自分が死んだことに気付かずどこへ彷徨うのか?」


 遠くで救急車の音が聞こえる。


 そうか。俺、さっき交差点で──。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 気付けば自分が、というパターンはやっぱり怖い。 この短さでうまくまとめておられますね。 [気になる点] 特にありません。 [一言] 子供の頃、托鉢に立っている御坊さんが何故か怖かったのを思…
[一言] 無事に成仏してくださいねといいたいですが、カレーが食べられなくて可哀想な気もします。 お坊さん、妻にその旨を伝えて供えるように言ってあげてくれないかなぁと思いました。 毎日楽しませていただい…
[一言] わずかにでも覚悟ができないうちに、病や事故で急死した人は引導を渡されないと自分の死を理解できず、渡し船に乗る為の船着き場にたどり着くのに時間がかかるという話を聞いたことがあります。 この彼は…
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