桜人-さくらびと-
好きな人がいた。
桜のような人だった。
淡くて、軽やかで、儚くて、寂しげで。
うっとりと見つめていた。
甘い香りがすっと鼻を抜ける。
ため息。
目が合う。 目をそらす。
あの人は言っていた。
他の誰かの事を。
「いつまでもそばにいるとは限らないのにね」
私のそばには、いつまで居てくれるの?
横顔を、また見つめる。
あなたはいつもそうだった。
会うたびに、他の誰かの話をする。
喜んだり、不貞腐れたり。
いいよ、そんなの。
他の誰かの事はいいから、こっちをみて。
いいってば。
違う環境、違う人間関係、違う価値観。
どこまでも、離れていってしまう。
あなたは今、何処にいるのですか?
同性愛は、罪ですか─?