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四日目 ---1---

4日目。


「ーーーーさん! シンさん! 起きてください!」


グラグラと身体が揺すられる感覚とエルさんの切羽詰まったような声で目が覚めた。


ちなみに俺は寝起きが弱い。朝からこんなに揺さぶらないで欲しい。


ここ数日は森で腕を枕にして野宿だったので、家のソファで寝るのが余りにも快適過ぎた。


「う、ううん……後八時間」


「本眠!? せめて五分くらいにしましょうよ! と言うかホントにマズイんです! 起きてくださーいっ」


「あうあうあう」


再び揺さぶられて仕方なく起きる。さらば極楽浄土。


今夜は腕を枕にしてないので寝起きで腕が痺れていない。有難い。


「……どうしたの?」


「やっと起きた……。とりあえずここから窓の外見てもらって良いですか?」


目を擦りながら指示に従い窓の外を見てみる。


「なんぞ、あれ」


思わず二度見。


窓の外には犬のような生き物が沢山いて、オークの死体に食らいついていた。


普通じゃない光景に寝起きの頭が冴えていく。


「フォレストウルフですね。ここら辺の森に生息している群れで行動する狼です」


「狼か……沢山いるな……」


パッと見ただけで五匹の狼がいた。


幸いこちらの場所はまだバレていないようで、狼達は夢中でオークの肉に齧り付いている。


「ど、どうしましょうか……けほ」


選択肢は三つ。このままやり過ごすか、こっそり逃げ出すか、それとも戦うかだ。


どれを選ぶにしてもまずは敵の正確な数と場所を把握する必要があるなと考えた。


ステータス画面を開いて、索敵スキルのレベルを1から3まで上げる。使ったスキルポイントは18。


幸い昨日オークの群れを倒したことでスキルポイントに余裕がある。まだ47ポイントも残っていた。


「まずは周りの魔物の数を把握する。【索敵】」


「索敵スキル……」


スキルレベルを一気に二段階上げたことにより、索敵範囲がこれまでとは比べものにならない程に広がっている。


「一、二……十匹以上居るな」


「じゅ、十匹以上も……」


「しかも全方位に村を囲むように居る。これ今逃げ出すのはやめておいた方がいいな」


「なるほど……」


とは言えこのまま家にいてももしかしたら見つかってしまうかもしれない。


村で一番マシな家とはいえ、扉もない状態だから普通に襲われる可能性がある。


狼は素早い。


狭い家の中で沢山の狼に襲われたら俺はともかくエルさんが無事では済まないかもしれない。


このまま隠れて期を見て逃げ出すことも出来るが。その場合でももし見つかった時に守り切れるかと言われたら怪しい。


……よし、覚悟を決めるか。


「戦う。エルさんはこのタンスの中で隠れてて」


「え……ええ!? あの数を相手に一人で大丈夫なんですか……?」


「何とかなると思う」


初めて戦う相手なので確証は無いが。昨日のオークとの戦いでそれなりに自信がついていた。


それにまだ割り振っていないスキルポイントやステータスポイントも大量にある。


「けほっ……分かりました。シンさんを信じます」


エルさんは覚悟を決めた顔をしていた。


両開きのタンスの中に入って体育座りをするエルさん。どこか紅潮した頬を膝の上に乗せて、上目遣いでこちらを見あげた。


「ここで待ってますから、必ず迎えに来てくださいね?」


「分かった。出来る限り早く帰ってくる」


パタンとエルさんの入ったタンスを閉めて、結界魔法を掛けておく。


まずは狼と戦う為にステータスを割振ろう。


余っているステータスポイントは64。


恐らく投石で攻撃力は足りている。MPは必要ないし力や生命力も現状で十分。


今必要なのは強いて言うなら素早さだろうか。緊急避難や距離を取るときに活かせそうだ。


後、狼はオークより素早く動くだろうから命中率上げの為に器用さにも割り振ってみるか。


持っているステータスポイントを適当に割り振ってみると素早さが77、器用さが30になった。


「よし、行くか」



家を出てから索敵反応がある方へ歩いていく。石を生成しておいた。


「居た」


距離は20Mほど。見える狼は四匹。


まだ大丈夫だろうと思っていたら一匹の狼が耳をピクピクさせてこちらを振り向いた。


目が合う。同時に俺は投石した。


ドゴ! という鈍い音とともに命中。投げた石は狼を貫通した。


【レベルアップ!! レベル195→207】


「……強いなあ投石」


レベルが上がる音を聞きながらつぶやく。


周りにいた狼達が異変に気づいてキャンキャン鳴きながら逃げ出した。


索敵スキルで逃げた敵たちの位置は把握出来ている。ちょっと狼が可哀想になってきたな。


「まあ無理に全滅させなくてもいいか……?」


そう考えていたのだが、逃げ出した狼は少し離れた位置にいた他の仲間と合流してから再びこちらに向かってきていることが分かった。索敵スキルのおかげでどう動いているか筒抜けである。


向かってきている数は合計8匹。何とかなるかな。


「よっと」


建物の角から出てくるタイミングに合わせて投石。ドスっという鈍い音とともに当たった狼が倒れる。


【レベルアップ!! レベル207→219】


続いて出てきた狼達はそこで足を止めた。


「はいもう一匹」


一投一殺。投石スキルのレベルが高いし器用さも上がっているからか外れる気がしない。


【レベルアップ!! レベル219→231】


ガンガンレベルが上がっていく。一匹で12レベルも上がるのかこれは美味しい。


二匹の仲間がやられたところで、狼達はようやくこちらの存在に気が付いたようだ。


だがこちらに向かってくる様子はない。牙を剝き出しにして低い唸り声を上げてこちらを見ている。


「どっか行くなら見逃すが?」


言葉が通じるわけないと思いつつも降伏勧告。


狼達はこちらを見たままじわじわと下がっていき、その時。


「お、そっちから来たか」


声が聞こえたのか、それとも匂いがしたのか。俺を挟む形で違う方向からまた一つ狼たちの群れがこちらに向かってきていた。


そして俺がちらりと後ろを振り返った瞬間。


正面にいた狼たちがうなり声をあげながら一斉にこちらに突っ込んできた。


ここからが本番か。

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