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三日目 ---1---


3日目。


「寒。……えっ」


目が覚めたら最悪の状況だった。


まだ薄暗い、体感で言うと朝5時くらいの時間に俺は寒さと顔に何かがあたる不快感と共に目が覚めた。


「雨だ……!」


まだポツポツくらい勢いだったが、空模様は黒い。それはこれからまだ雨が激しくなることを意味していた。


「うええ……服もずぶ濡れ。風邪ひく」


とりあえず【身体浄化魔法】と【衣類浄化魔法】を使って身体を綺麗にする。雨が降っているのですぐまたずぶ濡れだろうが衣類についた泥汚れを落としたかった。


そう言えば寝て起きたらMP全回復するんだな……とステータス画面を見て思った。今はそれどころじゃないか。


多少雨が防げる木の下に移動して自分を抱きしめるようにして震える。


「寒すぎる。小灯火を使っても意味ないし。何かないか」


震える手でスキル欄を探す。どこの欄から探そうか考えてすぐに結論を出す。


「困ったら生活魔法欄」


俺がこの世界に来て2日で辿り着いた結論である。


今あるスキルポイント10で獲得出来るものを探したら割と良さそうなスキルが2つ見付かった。


【雨弾層:必要ポイント5:雨を弾く層を身に纏う】


【暖層:必要ポイント5:寒さを防ぐ暖かい層を身に纏う】



合計10ポイントと手持ちのスキルポイントを使い切ってしまったが、必要なスキルだ。これからも使えそうだし良しとする。


今は必要ないが、暑いのを防いでくれる寒層と言う魔法も並んであって、いつか必要になったら習得しようときめた。


習得した2つの魔法を使用する。


「おお……雨が当たらない。凄い。それに……暖かい。とりあえずはこれで大丈夫か」


雨を確認する時みたいに手のひらを空へ向けて腕を伸ばしても濡れないことを確認。うっすらと見える纏った層が雨を弾いてくれていた。


ほっと一息。雨のこと全然考えてなかったな。ひどい目覚めだった。


チート能力あるから何とか生きていけてるけど、これ能力なしだったらあっという間に死んでそうだ。異世界サバイバル辛い。


「今日こそ人に会いたいもんだ……お腹すいたな」


割と眠いのだが草むらもぐしょぐしょで眠るのを再開することも選べない。


【雨弾層】のスキルは雨を弾いてくれるのだが、水溜まりとか草についた水は普通に濡れるみたいなのだ。


「今日はどうしようかなあ」


歩くと靴やズボンが水を吸って地獄になるが、一日この木の下で立ちっぱなしというのも嫌だ。お腹も減るし。


「肉食いてえ……いかん。更に腹が減る」


頭を振って思考をリセット。


「仕方がない。行くか」


意を決して歩き出す。索敵スキルも発動。


雨の日は出現する敵が変わったりするのだろうか? ……いつもより注意して歩こう。足元も滑りやすいし。


ふと見上げた空はどんよりとした曇に覆われていて、不安を煽る。


誰でもいいから人に会いたい。暖たかい布団でスマホ弄りながら寝たい。そんな気持ちになった。


しばらく歩いていると、この世界に来て一番最初に目が覚めた場所に辿り着いた。


「ここから始まったんだよなー。確かこの辺に寝てた」


一応元の世界に帰る手がかりとか無いか探してみるが、特に何も無い。


「残念。次行くか」


あまり期待してなかったので落胆も少ない。


少し歩くとスライムが居たので倒しておく。索敵スキルが本当に便利だ。雨のせいで少し見えにくかったが何とか投石を当てられた。


雨弾層と暖層魔法の効果が切れてきたのでMP5ずつ消費して再度かけ直し。30分くらいで切れるんだな。スキルレベルを上げれば効果時間を伸ばせそうだがとりあえずはこのままでいいだろう。


雨の降る森をマップを見ながら進んでいく。少し元気が出てきた。


「♪〜」


口笛を拭きながら歩く。今日は転んでも嫌なので走ることは極力しない。


疲れたら飲料水を生成する魔法で水分補給しながら、のんびりと移動すること体感2時間。遂にその時は来た。


「……おっ!? あれ森の終わりでは!!」


木々の隙間から森の終わりのような景色が見える。


ここ数日の最大の目標だったのでとてもテンションが上がって思わず走ってしまう。


走り出す時に滑って転びそうになりながらも俺は遂に辿り着いた。


「森抜けたあ! しかも村っぽいのあるー!」


思わず叫んでしまった。


森をぬけた先に広がっていたのは草原。遠くに木の柵に囲まれた田舎の村みたいなのが見える。


「村があるという事は人がいる! 今夜は屋根のある場所で寝られるかもしれない」


気持ち小走りで村へ向かう。今俺はめっちゃ笑顔かもしれない。


木製の田舎らしい家を見て、息を整えてから村へ入ろうとした時、気がついた。


「あれ、なんか索敵に反応が……」


索敵スキルに反応した敵の場所は村の中。しかもかなり密集して存在している。


「え? ……え?」


疑問を浮かべながら村の様子を恐る恐る覗いた時、そいつらはいた。


最初は人かと思ったがすぐその考えは否定される。何故ならそいつらの顔はとても人間のものでは無い。


オークと言うんだろうか。豚のような顔をした人型の魔物。その手には石の槍を持っている。パッとみただけでも十を超える数のオークが村にいた。


「な……!」


よく見ると人がオーク達の足元に倒れていて、雨の中赤い水たまりを作っていた。


倒れているのは一人ではない。何人もの人が倒れていて、その周りにはそれぞれ剣や槍などの武器が落ちている。


死んでる……? 人が……? オークに殺されたのか? 生きている人はいるのか。危険。逃げないと。


視界や音が遠ざかるような感覚。色々な思考が頭を目まぐるしく駆け巡り、自分の心臓の音だけが大きく聞こえる。パニックに近い。落ち着け。落ち着け。


ーーーーその時、ひとつの悲鳴が上がった。女性の声だ。


「助けて!! 」


まとまらない思考に一つの指示が与えられる。


考えるより先に身体が動き出していた。

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