二日目 ---1---
2日目。
目が覚める。枕にしていた右腕が痺れていた。あと寒い。火が消えている。
ゆっくり頭を浮かせて仰向けに寝転がる。……草の感触。起きたら森と言うのに慣れない。
右腕の痺れがマシになってきたので起き上がる。周囲には白い円状の結界術が俺を囲っていた。広さは半径3mくらいでそこまで広くもない。
適当に周辺の枝を集めて火をつけて温まりながら考える。
「ふわあ……今日は……どうしようかな」
欠伸をかきつつ寝起きの頭の中で少し整理してみる。
俺が今やりたいこと。出来れば森を脱出して人里に降りたいものだが、脱出できる目処はなくそもそもこの世界に人がいるかどうかすら分からない。
ならば森の中で今夜も明かすことになるかもしれないことを想定して一日を過ごすべきだ。
そうだな。使えそうなスキルを探しておいて、脱出を目指して森を散策しつつレベル上げて有用なスキルを手に入れる。今日もこの方針だろう。
「よし、頑張るか」
自分を振るいたたせて2日目の活動を開始した。
※
獲得可能スキル欄を見ていてこれは欲しいなと思ったものが3つ。
【索敵:必要ポイント3:周辺の敵を発見することが出来る】
【マッピング:必要ポイント3:歩いたことのある場所の地図が見えるようになる】
【乾風:必要ポイント1:乾燥した風を出すことが出来る。ある程度まで温度調節も可能】
索敵スキルは言わずもがな。敵の位置が分かるようになる為のスキル。これがあれば効率よく敵を見つけてレベル上げが出来そうだ。
マッピングスキルは森の中で迷わないようにだ。同じ場所をぐるぐるしても仕方ないし、森脱出、もしくは果物のなる木の場所を覚えるのとかに使えたらいい。
乾風スキルは生活魔法の欄にあったもので。1つの大きな問題を解決してくれる。
トイレである。トイレの後の紙が無いのだ。昨日はたまたまトイレに行きたくはならなかったが今日は既に軽く便意がある。
飲料水を生成する魔法でウォシュレット的なものは擬似的に再現できるけれども、その後が困る。
そこでこの乾風スキルを使えば快適と言う具合だ。普通にドライヤー的な使い方もできるだろうし。
他にも空中に浮かぶスキルとかあれば周りを見渡すことが出来るかもしれないと思ったけど、習得には必要なスキルが多かったし魔力が200以上必要と書かれていた。残念。
「おっ早速ツノウサギ発見」
今日1匹目の獲物である。躊躇いなく石を投げて倒した。あっさりとレベルアップ。昨日よりも成長を感じる。やはり投擲スキルと投石スキルの2つを持っているとツノウサギ相手なら外さないし威力も十分だな。
そう言えばゴブリンや鳥は一撃では倒せなかったな。このまま投石戦術を繰り返すならもっと力にステータスを割り振ったり投スキルにもポイントを振らないと。
「とりあえず索敵スキルを手に入れて、沢山敵を倒せるようになろう」
早速索敵スキルを獲得して、発動してみる。
「おっ……なるほどこういう感じか」
スキルを発動すると周辺に半透明の領域が広がって、その範囲内に居る敵の位置がわかる。今も少し進んだ所にスライムが1匹とツノウサギが居ることが分かった。説明によると索敵Lv1だと半径20Mの範囲が分かるらしい。消費MP5で10分間持つらしい。
「スキルレベルを上げれば領域が広がるんだろうな。効率よくレベル上げするためにも是非上げたい」
石ころを拾って早速索敵した敵を倒しに向かった。
それからツノウサギとスライムも投石であっさり倒してレベルも上がり。朝目的としていた3つのスキルが体感15分程度で手に入れてしまった。
レベルが上がっているのでMPも全回復し、また索敵スキルを使用出来る。
「これは……今日は色んなスキルが取れるかもしれないな!」
わくわくしてきた。森脱出も人里に行くことも割と簡単に出来るかもしれない。
習得したマッピングスキルを発動してみる。
ステータス画面に似た緑色のウインドウが開かれる。そこには今居る場所や過去に歩いた場所のマップが記されている。
拡大縮小も簡単に出来る。後絵文字のようなアイコンをマップの好きな場所につけることが出来て、そのアイコンを押すとメモが書けるのが便利だ。文字数制限があるけど、スキルレベルが上がればメモに書ける文字数が増えたりするのだろう。
「こうして見てみると、今まで真っ直ぐ歩いて来たつもりでもぐにゃぐにゃ移動だな」
これからはスキルのお陰で直進移動が可能だ。効率よく森から脱出が出来るだろう。
乾風スキルも軽く使ってみたけどとても予想通りだったので問題なし。手のひらサイズの魔法陣が出てきてドライヤーみたいな風が出る。魔法陣の位置や向きを動かしたり風の勢い調整も可能。
次は果物以外の食料も欲しいな。後拠点。建築スキルとかあったはず。
索敵スキルを使用して、更にマッピングスキルの地図を見ながら真っ直ぐ道を進んでいく。
道中に現れる魔物はできる限り倒していく。投石バンザイ。
そしてレベルが上がって手に入ったスキルポイントを使って1つのスキルを獲得した。
【石生成魔法:必要ポイント1:石を生成することが出来る】
地味に石を持って歩くのが面倒くさかったのだ。
ちなみにLv1だとホントに小さな石ころしか作れなかったので、更にスキルポイントを消費してLv2に上げておいた。良い感じのサイズの石が安定して作れるようになって満足。