五日目 ---2---
「シンさんの馬鹿」
「心の底からごめんなさい」
俺たちは盗賊団に捕まっていた。現在牢屋に入れられている。
ナイフや剣はともかく近距離で弓を構えられた状態では抵抗も出来ず、あっさりと捕まってしまった。思えば俺はステータスの防御がとても低いのだ。弓の一撃で死にかねない。
恐らくここは盗賊団のアジトだろう。
連れてこられた時に見たのだが、外はテントが沢山張られたキャンプ場みたいな感じだった。テントの中、更に鉄製の檻の中にエルさんと一緒に入れられていた。
檻の中でも縄で後ろ手に縛られたままなので割と痛い。
「最近この辺りで盗賊団が出るって話があったんですよ。言っておけば良かったです」
「思い切り笑顔で挨拶しちゃったよ……」
「お馬鹿です。私たち、これからどうなるんでしょう……」
人間も怖い。それを学んだ。
俺からしてみれば数少ない人類同士仲良くしようよっていう感覚だったのだが、やつらはそうではなかったようだ。
今盗賊の人達はこのテント内にはいない。
だがこのテントの中には俺達以外にも人がいた。
俺たちが入っている檻の隣。もう一人檻に入れられた人がいるのだ。
「…………」
薄水色髪の暗い顔をした女の子だ。首輪が着いていて、何やら怒っているような雰囲気を感じる。
それはともかく。
「獣耳……だと……」
「獣人の奴隷ですね……そうか、私達も売り飛ばされちゃうのかも」
薄水色の髪に包まれた頭から犬耳が生えていた。たまにぴょこぴょこ動いている。可愛い。
なんてこった。この世界には獣人がいるのか。
あれ、付け物ではなくて直接獣耳が生えているんだろう? 生え際どうなっているんだろう。人間の耳はあるの?
「……なんでシンさん盗賊団につかまったのにちょっと嬉しそうなんですか」
「いやー獣人を見たのが初めてで。後、扉と屋根がある建物に居れるのがうれしくて」
「まあ珍しいですもんね。貴族街ではよく見かけるそうなんですけど。後、建物に扉と屋根があるのは当たり前です」
エルさんと檻の中で話していると獣人の女の子がこちらに顔を向けた。
「……お前らも捕まったのか」
なんだろう、吐息声って言うんだろうか。声優さん出来そうな感じの可愛い声だった。
「人間はおろか。同じ種族同士でも捕まえ合ったりしてお金にする。はあ~」
ため息つかれた。やれやれって感じで首降ってる。連動して手や首輪についた鎖がジャラジャラとなった。
普通だったら煽られてるような空気だしムカついたりするのかもしれないが、小さいしケモミミだし声が特徴的だしでなんかマスコットキャラ見てるような微笑ましい気持ちになる。
「ごほん。俺はシンっていう。君は?」
「人間に名乗る名前はない」
「あ、そう……」
「嘘。ごめん。ラトって言う」
こっちがちょっとしょんぼりした空気出したらすぐ撤回と謝罪くれた。
冷たい感じかと思ったら案外そうでもないのかもしれない。
「私はエルと言います。森を歩いていたらあの盗賊団に囲まれて捕まってしまいました」
「シン、エル。よろしく。わたしもほとんど同じ。二日前くらいに捕まった。……くそ、普段ならあんな奴らに遅れとる事なんてありえないのに」
「よろしく」
「よろしくお願いしますラトさん」
檻越しの挨拶が終わる。こんな状況なので短い縁になってしまうかもしれないが。
「……奴らの計画では明日にはわたしたちは奴隷商に売り飛ばされるらしい。多分今夜にはお前らも首輪付けられる」
「それはまずいな。早く逃げないと」
「……シンさん、なんとかできそうですか?」
「やってみる」
ステータス画面を開いて、後ろ手で操作できる位置に移動させる。ステータス画面の位置は割と自由に動かせるので助かった。
キツイ姿勢だがギリギリ指で操作できる。
「……お前ら、この状況から逃げ出せる可能性があるのか?」
「シンさんすごいんです。今までも色んな大変なことあったんですけど、全部解決してくれました」
エルさんからの信頼が厚い。期待に応えねば。
『縄 解く』で習得可能スキルを検索。色々なスキルがヒットした。
今使えるスキルポイントは40ポイント。廃村を出発してからちょくちょく魔物を倒しておいて本当に良かった。
「よし、これにしよう」
「……? シン、なにしてる?」
「『解縄』」
俺を拘束していた縄がするりと解ける。
獲得したのは解縄というスキルで、必要ポイントは5ポイント。
エルさんの縄もすぐに解除する。
「助かりました。いたた、腕赤くなってます」
「俺もだ。固く縛りすぎ」
スキルレベル1で解除できて良かった。もっと複雑な縛り方だとスキルレベル上げないと解除できないとかあるんだろうきっと。
「次は……『解錠』」
スキルを発動する。ガチャリ、檻の入り口が開く。
次に獲得したのは解錠スキル。ゲームとかでもよくある、鍵が必要なものを解除するスキルだ。これも5ポイントで獲得できた。
「お、お前すごいな。あっさりと」
「流石ですシンさん。ね、言ったとおりでしょう」
何故かエルさんが誇らしげに胸を張る。張ってもつつましいって思ったことは心の中にしまっておこう。
「ラトも出なよ『解錠』」
ガチャリという音とともに檻が開いた。扉も開けてあげる。
ラトはしばらく目の前の開いた扉を見て耳をピコピコさせながら驚いていたが、ふっと息を漏らして俯いた。
「無理。わたしは既に奴隷の首輪を付けられていて、ここに居ろって命令された。命令に逆らうと首輪から電気が流れる」
「そっか。ラトさんは既に首輪を付けられてしまっていましたね……」
「うーん『開錠』……ダメか」
首輪に鍵穴があったので開錠スキルを発動してみたのだが、不発に終わる。
「お前らだけで逃げろ。短い間だったけど楽しかった」
ラトはそう言って悲しそうな笑顔を作った。
「いやまだチャンスはある」
「え?」
驚く声を聞き流して、俺は開錠のスキルレベルを2に上げる。レベルアップに必要なのは習得したときの二倍で10ポイント。残りスキルポイントは20
「『解錠』」
「そ、それさっきやってだめだった」
まだ首輪は外れなかった。
「なら」
ラストチャンス。残り全てのポイントを使ってスキルレベルを3に上げる。
「『解錠』!」
「あ……」
ガチャリっという音ともにラトの首輪が外れる。
ついでに腕と足に付けられている拘束具も外してあげた。
「やりましたねシンさんっ」
「なんとかギリギリ外せて良かった」
エルさんとハイタッチする。
というか余り大きな音出すのまずいのでは?
そう思った瞬間、テントの入り口のカーテンが開いた。
「なにを騒がしく……あ!? お前らどうやって檻から!?」
「まずっ」
盗賊団の一人が様子を見に来たようだ。今は頭巾を外していて顔が見えるのだが、顔に傷跡のあるムキムキのおっさんだった。
投石のために石を生成しようとしたその瞬間。
「任せて。『加速』っ」
びゅん。風が吹いたと思ったら入り口から入ってきた盗賊のおっさんが吹き飛んだ。
一瞬の事過ぎて理解が出来なかったのだが、ラトがおっさんを蹴り飛ばしたようだ。
「ふう」
「……君強いな」
「当然。私はソロBランク冒険者。こいつらには魔力切れの瞬間を狙われただけ」
ラトはふんっと鼻を鳴らしておっさんの脇腹を小突くように蹴った。
「逃げましょう。今ならまだそんなに気付かれてないと思います」
「そうだな」
まだ危機は去ってはいない。ここから完全に脱出するまでは。
書き貯めがなくなりました。週に2話くらいを目指してのんびり更新していきます




