ジンバ
『嬢ちゃん、ネコじゃないね?』
頭の中で、老猫の言葉がリフレインする。
そう、私は猫じゃない。
「人間よ!」
「人間だね?」
私と老猫の言葉が重なる。
‥·え?
沈黙を破ったのは老猫だった。
「ほぅ〜。先代から聞いてはいたが、もはやおとぎ話だと思っていたよ。ほんとにあるんだねぇ〜。いや、驚いた」
老猫はゆっくりと近づいてきて更に続ける。
「何十年、はたまた何百年に一度あるかないか。人間と、猫が入れ替わる。ー生まれ変わり、はたまた入れ代わり。ーこれがそうなのかい」
老猫は、私の全身をこれでもかというくらいジロジロ見回した。
堪らなく私は
「えっと、あのですね。これはただ単に私の夢であって、私は早く夢から覚めたい訳で。ん〜〜、だから。
とりあえず消えてもらってもいいですか?」
夢とはいえ、自分でも何を言っているんた?と思いながらも、私は老猫に提案する。
だが、所詮自分の夢なのだから、多少おかしな事があっても気にしたものじゃない。
「フッ」
鼻で笑い「本気で言ってんのかい?」と老猫は冷たい視線をよこした。
「嬢ちゃん、名前は?」
「み‥·‥·ネコ。ネコよ!」
咄嗟に人間の自分の名前を言いそうになったが、ネコと言った。コウだけが呼ぶその名前を。
「いや、猫なんだからネコだろうさ。そうじゃなー」
「私の名前はネコ!大切な人が私をそう呼んでくれる。だから、私の名前はネコ」
老猫の言葉を遮って私は言った。
「大切な人ね、そうかい。」
少し遠くを見つめて、どこか悲しげに言った。そして
「あたしゃ、ジンバ。この神社に住む猫さ」
と言った。
「ジンバ、いい名前ね」
私が言うとジンバは
「はは。いい名前かね?ただ単に神社に住む婆猫ってので、神婆ージンバーなんたがなえ」
と笑った。
そして
「嬢ちゃん。いや、ネコ、いいかい?これからあたしが話すことをよくお聞き」
真剣な眼差しでそう言った、