猫じゃない
何分?何十分?何時間?
訳が分からないまま、水溜りに映し出された、恐らく今の自分の姿であろう猫をただただ、私は見つめていた。
猫‥·。何をどうやっても猫‥·。
みゃーこがネコになって、猫???
イヤイヤ意味分かんないし!
ん?!猫を助けたから猫?
子供の頃猫を助けた女の子が猫になる映画を見た。
でもあれは、女の子が猫になりたいって思った事も重なって猫になったわけで、別に私は猫になりたいなんて思った事は一度もない。
そもそも!!あれはフィクションで、作り話!現実に、あるわけがない。
·‥なのに、現実。私は猫になっている‥·。
イヤ。ちょっと待った。これが現実とは限らないじゃない。リアリティある夢を見てるだけなのかも知れない。
そうよ!これはきっと夢なんだわ!!
あ〜、夢なら早く覚めて。私は行かなくちゃいけない所があって、やらなきゃいけない事があるんだから。
ゆっくり眠ってる暇なんてないのよっ!
そんな結論に至った私は、夢の出口を見つけるべく歩きだそうと御神木に背を向け振り返った。
その数メートル先に、一匹の老猫がこちらをじっと見つめていた。
一歩踏み出した私に、その老猫は
「やっと来たと思ったのに、とんだ猫違いかい。アンタ、どこから来たんだい?この辺じゃ見ない顔だね」
そう言いながらゆっくりと私に近づいて来る。
猫語がわかる!あぁ、やっぱりこれは夢なんだ。
そう確信して私は答えた。
「どこからか来たと言われても、私にも分からないわ。とりあえず、捕まりそうになって逃げてきたら此処へ着いただけ。でも、これはただの夢だから、そろそろ私は目覚めるためにー」
最後まで言う前に老猫が言った。
「嬢ちゃん、猫じゃないね?」