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猫が旅して何が悪い  作者: ひまわり
2/8

事故

コウと話し合った結果、なかなかタイミングが合わないため、とりあえず今週末は私だけ田舎に行くことになった。

私の家への報告と言っても墓前に報告するだけだから。

私の両親は私が小6の時に他界している。私は修学旅行中で不在の中、両親が乗っていた車が飲酒運転の車に追突されたのだ。翌日は修学旅行から帰宅する私の誕生日だった。祖父母は、誕生日プレゼントを買いに行っていたのだろうと話していた。

両親が亡くなってからは祖父母が私を育ててくれた。そんな祖父母も私が高校2年の冬、祖父が亡くなり、2年前には祖母も亡くなった。


実家は親戚の人たちが管理をしてくれているおかげて今も健在だ。私の帰る家を無くしては可哀想だと守ってくれているのだ。とはいえ、両親も祖父母もいない家に一人帰るのも何だか寂しく、切なくて。就職して街へ出た後はさほど帰ってはいなかった。


でも。今回ばかりはちゃんと帰らないとね。

コウからもらった婚約指輪の入った小箱を鞄にしまい私は身支度を整える。


まずは墓前に報告して、その後は親戚のおじさん、おばさんにも報告して。

そうだ!私よりも先に結婚するアコちゃんにも報告しなくちゃ♪

何だかワクワクする。みんなの喜ぶ顔が浮かぶから。


田舎までは電車で約3時間ちょっと。

私は電車の時間を再度確認して家を出た。



昨日の大雨が嘘のように、今日は雲ひとつない青空が広がっている。

時折優しく吹く風が、雨上がりの独特な匂いを運んでくる。


田舎へ帰るため通勤に使ういつもの駅とは逆方向の駅へと歩みを進める。

普段からこちらの駅の方へは来ることが殆ど無いので、なんだか新鮮な気分。

可愛らしい雑貨屋さんや美味しそうなスイーツのお店を発見して、コウや友人と今度来てみよう!なんて考えながら駅へ向かっていると。



「ミャ〜」

どこからかか細い鳴き声が聴こえてきた。

「ミャ〜、ミャ〜」


どこだろう?耳をそばだてて声のする方を探す。


「あっ!」


カーブの終わり、ガードレールが途切れた茂みから聞こえる。

茂みを、かき分けてみるとそこには仔猫と怪我をした母猫がいた。

母猫は私を見るなり「シャー!!」と威嚇の声を上げたが、攻撃する力はなさそうだ。

仔猫はしきりに「ニャー、ニャー」と弱々しい声を上げている。


電車の時間も気になったが、この猫の親子をそのままに置いていくことにも気が引けて。


「ちょっと待ってね」


そう言って私はスマホを鞄から取り出し

近くの動物病院を調べた。


幸いにも駅前に動物病院が見つかった。

ここなら、電車を一本遅らせても大して問題はない。

私は仔猫と母猫を抱えるべく茂みにしゃがみ込んだ。


「さぁ、もう大丈夫よ」


そう言って手を伸ばしたとき‥·



けたたましいクラクションの音が響いた。振り向くと、すぐ目の前には一台の車がこちらをめがけて突進してくる。


咄嗟に腕を伸ばし私は仔猫と母猫を抱きかかえ歩道の奥へと飛び退いた。



間に合った‥·



そう思った矢先。全身に激しい痛みが襲ってくる。

朦朧とする頭には悲鳴や怒号が聞こえてくる。


そして、私は意識を失った。


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