0.*1 ‐founder‐
物心ついたとき、既にそうだった。
北の寒い土地に生まれ、家もごく普通、田舎だったが貧しいわけではなく、かといって裕福であるとも言い切れない。これはあくまでも主観だけど。
でも一つ、一つだけ違った。自分は、他とは違った。これは主観じゃない、紛れもない事実だ。
それは容姿についてか。
…いや、確かに自分の見た目は、他の人間と比べても、程度を超えて白いようだった。それも髪や、眼の色だけではない。その他の全ての色素が薄く、ヒトである要素は他よりも薄かった。
けど実際それは、「それ」に比べたらそれは些細なこと。
少なくとも、自分ではまだそう思えた。
じゃあ、発達障害やその類か? …いいや、それも違う。
自分の自覚している限りではまだ、人間という特殊な生き物の枠組みの内では、前述の要素を除けば、大した特徴もない一人だ。そう扱われていたはずだ。「それ」を隠している間だけは。
初めて「それ」の、今となってはそれも一部であったそれが発覚した時、自分は特になんとも思っていなかった。これが、普通だと、ずっと思っていたから。
でも、違った。
それを初めて目の当たりにした両親の表情を、ずっと覚えていた。
…目だ。あの、得体のしれない生き物でも見るかのような、あの目つきだった。…それは小さく、だけど、深く。何かを抉った。
たとえそれが、刹那の表情だったとして、また変わらずに自分たちの子供として扱ってくれていたとしても、その衝撃はいつまでも残り続けた。
両親はその後、自分を医者に診せた。こんな地方の病院では、無意味だとわかっていた。すぐに遠出をする準備をし、時間をかけて、離れた都会の大きな病院へと連れてこられた。
初見で得られた情報からか、アルビノを疑われた。が、どうやら違った。視覚に異常は見られない、紫外線に対する耐性も普通だ。また、その見た目の白さの「それ」との関係も不明だった。
結論から言えば、明確な原因はわからなかった。突然変異の類かもしれない、なんて言われた。
親は医者と何か揉めているようだったが、自分はそんなもの気にならなかった。
だって自分は、突然変異で生まれた普通でない生き物なんだ。
…それも定かではない。ただ、得体のしれない存在なのだと、そう言い表されてしまったんだ。
しかし、それからの生活はさして変わらない。今まで通りの生活に、「自分は異常である」という認識がプラスされただけ。
だから、外面上は何も変わっていなかった。