第6話 ダンジョンからの探索
翌日、軽い朝食を食べてから、昨日ミアと出会った森の開けた所まで行き、そこからはミアの案内で俺たちはダンジョンに向かった。
ちなみに、水や食料、その他の物資は俺のスキル【アイテムボックス】に収納してある。
昨日どのくらいの量を収納できるか実験をしたが、7日分の食料を入れた時点でやめた。理由は実験をしていた俺を見てミアが「人によるけど、家一軒は入るらしいよ」と言われたからだ。実際、小屋を出る前に必要だと思う道具を詰め込んだら全部入った。しかも、まだまだ、余裕がありそうだ。
「Lv. 1でこれってどうなんだよ・・・。」
改めて、自分の能力に呆れていると。
「レンっ!着いたよ。あれがダンジョンの入り口。」
ミアの呼びかけに我に返った俺は、彼女の指さす方へ眼をやる。
そこには、ザ・洞窟と言わんばかりの入り口と、石で出来た鳥居が建てられていた。
「ミア、あれは?」
「あれは、結界。あれで、魔物が外に出るのを防いでるの。」
なるほど、この鳥居のおかげで魔物の被害を最小限に出来るのか。・・・あれ?
「魔物って、ダンジョンから沸いて出て来る以外に地上にいないの?」
「そんなこと無いわ。魔力の濃度が濃い所でも、動物から魔物に変わることもあるわ。ちなみにこの辺りは、魔力がそこまで濃くないから魔物も少ないの。」
なるほどね。いくら何でも魔物の数が少ないと思った。
「でも、何で魔力濃度が薄いってわかるの?」
「魔力操作が上手く出来るようになると、魔力の集まり方で大体分かるの。そんなことより、早く行くわよ。時間もないし。」
そう言うと、ミアはダンジョンの方へ向かったので、慌てて追いかけた。
ダンジョンの中は灯りが無くても大丈夫なくらい明るかった。なぜ、明るいか気になってミアに聞こうと口を開きかけたが、すぐに閉じた。
ミアは緊張しているようで、顔がこわばっていた。
「ミア、大丈夫?」
「・・・うん。ただ、私、あまり戦闘は得意じゃなくて、少し緊張してる。」
戦闘苦手なのに、1人でやろうとするなんて、無謀過ぎるだろ。
ちなみに、彼女の武器はメイス、打撃による攻撃を得意とする強力な武器だが、ミアは緊張のせいか手に力が入っている。あれでは、俺でも攻撃を食らうことはまず無いだろう。
俺は、ミアに近づき肩に手を置いた。
「落ち着けって、もしもの時は俺がフォローする。」
「・・・なんか、生意気。」
「えぇー。」
「うふふ、でも、ありがと。」
まったく、でもちょっとは緊張がほぐれたかな。
ダンジョンを進むとネズミや狼などの魔獣が現れたが、一角猪に比べると大したことはなかった。一番苦戦したのは、コウモリの魔獣だった。相手は飛んでいる上に、超音波攻撃を仕掛けてくる。万が一のために、【アイテムボックス】に槍を入れていなければ、状況はかなりヤバかったかもしれない。
「よく、槍なんて持ってたわね。」
「まぁ、何が起こるか分からないからね。色々と持ってきてたんだ。」
実は、昨日ミアに武器庫にあったものを【鑑定眼】で診てもらっていた。なぜ、自分で診ないかというと、まだLv. 1のため、物の名称しか分からないからである。
ミアに診てもらった限り、俺の剣のようなミスリルで出来たものはなく、全て鋼製の物だと分かった。なので、特に何も考えず役に立ちそうな物は適当に持ってきたのだ。
「必要な鉱石が取れる場所って、まだ掛かりそう?」
「いえ、次の角を右に曲がれば採掘場所に着くはずよ。」
そうこう言っているうちに、分かれ道に来た。ミアの指示通り右に曲がるとすぐ行き止まりだった。
「ちょっと、待ってて。」
そう言うと、カバンからピッケルを取り出し、鉱石を採掘し始めた。
俺は、念のため辺りを警戒していると、俺達が来た道と反対に道から犬の顔をした二足歩行の生き物、二体がこっちに向かってきている。
「・・・ねぇ、あれ。何か分かる?」
「えっ?っ!!あれは、コボルト!魔物よ!」
ミアは、俺が指さす生き物を見て、そう答えた。俺達は慌てて武器を構えた。
「「ウオオオ!!」」
コボルト達は、吠えながら突撃してきた。
コボルトの武器は棍棒。当たっても、たいしたダメージにならないが油断は出来ない。
そう考えていると、一体が攻撃を仕掛けてきた。
「おっと!はぁぁ!」
コボルトの攻撃をなんとか躱し、逆に切り倒した。
「ふぅ。」
「油断しない!もう一体いるよ!」
「分かってる!」
ミアの声に我に返った俺は剣を構え直した。
コボルトの方は、威嚇しながらこちらの様子を伺っている。警戒しているようだ。
「来ないなら、こっちからっ!!」
攻撃を仕掛けようとした瞬間、コボルトは目の前から姿を消した!!