第1話 到着からの準備
鳥居をくぐると周りは森で囲まれており、目の前に大きめの2階建ての小屋があった。
周りを見渡しても特に何も無さそうだったので、とりあえず小屋に近づいた。
「ここがアマテラスが言ってた小屋か。」
アマテラス、俺がこの世界に来るきっかけとなった人物。異世界への道の番人をしているという、謎の女。正直、最初は名前的に神様ご本人かと思ったが、彼女の口から何度か神々という単語が出てきたことからおそらく違うのだろう。もし、彼女が神なら私達とか我々とか言いそうだからだ。多分、その神々が作った精霊かなにかだと思う。
俺が、異世界へ来た理由はアマテラスから魔法の才能があるからだと言われたからなのだが。
「そーいえば、俺魔法の使い方知らないんだけど・・・。」
ドアノブに手を掛けた瞬間そのことに気が付いた。
魔法の使い方知らないのに、どうやって才能を開花させるんだよ。
俺は、ため息を付きながら小屋の中へ入った。
小屋の中は到って普通だった。リビングには木で出来た椅子やテーブル。談話室には暖炉がありその前にはちょっと高級そうなソファーが置いてあった。風呂は木で出来た広めの浴槽だった。最後にキッチンは・・・。
「ガスコンロ?ではない。どう使うんだ?」
コンロのようなそれは、魔法陣のような模様が描かれており、中心には赤い石が埋め込まれていた。
ノブを回しても反応がない。うーん、あっ!もしかして、魔力を流しながらじゃないといけないやつか?もしそうなら、今は使えないな。魔法も魔力も何も分かってないし。そういえば、浴槽にも似たような魔法陣があった。しばらく、風呂にも入れないか?
とりあえず、魔道具類は後回しにして、装備を整えよう。裏世界には、魔獣が出るらしいし。
「1階には置いてないみたいだな。2階に行ってみよう。」
2階には4つの部屋あり、うち3つは寝室、一番奥の部屋が武器庫になっていた。
「おぉ!」
そこには、様々な武器や防具が置いてあった。
まぁ、武器庫だから当たり前だけど、俺も男だからこの光景にちょっとワクワクしてる。
「さて、何を使うか。・・・やっぱり、剣がいいなぁ。」
俺は男のロマンとも言える武器を選択し、立て掛けあった剣持ってみた。
「・・・少し重いか。けど、思ったほどじゃない。」
うーん、こんな鉄の塊を持てる程の筋力なんてないはずだけど。
試しに、他の剣でも試してみるが、少し重いがやはり持てる。
「よく分かんないけど、持てないよりはいいか。」
そう思いながら、どの剣がいいか選んでいると他に比べると極めて軽い剣があった。
「これいいな。メインはこれにするか。」
見た目はごく普通?だが、扱いやすさを優先した。命に関わることだからだ。どれが選んだものかすぐにわかるよう部屋にあった机に上に置いた。
「さて、他はどうするか。」
周りを見渡すと2本の短剣が目に入る。狭い所や素材の剥ぎ取りに役立ちそうだな。
2本の短剣も机の上に置いた。
「武器はこれでいいとして、あとは服と防具か。アマテラスも言ってたけど、この格好だと目立つしなぁ。ついでに、服も着替えるか。」
元々俺は、学校帰りに自殺するつもりだったから制服のままなのだ。
「とはいえ、この世界での普通の恰好ってどんなのだ?とりあえず、あるもの適当に着るか。こんな、山の中じゃあ滅多に人に会うこともないだろう。」
そう考えてクローゼットの中にあった黒い服とズボンを取り出し、それに着替え、下駄箱(なぜここに下駄箱があるか気になったが。)にあったブーツに履き替えた。
「まぁ、服はこれでいいか。あとは、・・・防具か。」
正直、これが一番時間がかかった。重装備がいいか、軽装にするか。それとも、何も装備しないか。装備するとして、兜やグリーブまで付けるか、それとも胴体だけにするか。
すると、一着の茶色いロングコートに目がいった。近づいて触ってみると、何かの獣の皮でできているようで結構、頑丈だった。
「・・・決めた。」
俺は、今着ている服の上から銀のアーマプレートを装備し、その上からロングコートを羽織った。その後、机に置いてあった剣を背中に斜め掛けにし、左右の骨盤に短剣を付けた。
「よし、これで準備が整った。これなら外に出ても問題ないはず。」
鏡の前でそう呟きながら、自分の格好を確認した。
思ったより、カッコいいかも。
そんなことを考えながら、外へ出るため階段の方へ向かう。
「あっ、外に出る前に1つ確認しないと。」
そう思い階段を降り1階に行き、キッチンの棚や冷蔵庫風の魔道具(コンセントなどは見当たらなかった)を開けて中を確認した。生きていくには、何より水と食料が必要である。まして、ここは異世界。表世界と見た目が同じでも毒を持ってる可能性だってある。今の俺にそういうのを見分ける力はない。
「だからと言って、食べ物無いと餓死することになるからな。最悪、しっかりと火を通せば何とかなるかと思ってたけど、とりあえず食料の心配は大丈夫そうだな。」
キッチンの棚には大量の缶詰が、冷蔵庫には肉や魚、野菜が入っていた。水の方も水道から出たので一口飲んでみたが問題なさそうだった。むしろ、うまい。
キッチンの棚には缶詰の他に、水筒や弁当箱のような容器がいくつかあり、引き出しには缶切りや包丁、調理用バサミなどがあった。
その中から、缶詰3つ、缶切り、水筒を取り出し、水筒には水を入れた。まぁ、簡単に言うと弁当だ。腹減ったら困るし。水筒は念のために2つ持っていく。
「あとはこれをカバンに詰め込んで・・・・・。しまった。カバン持ってくるの忘れた。」
2階の武器庫にウエストポーチがあったので、それを持ってキッチンに戻り、改めてウエストポーチに水と食料を入れた。
よし、これで全ての準備は整った。さぁ、いよいよ外の世界へ。