第16話 14日目からの試合
ついに、約束の2週間が経過した。みんなに見守られる中、俺とミアはアイラさんの前に立っていた。
「それじゃあ、作った物を見せて見な!」
「はい!」
ミアは、手に持っていた袋から3つの物を取り出した。
1つ目はヴァンブレイスと呼ばれる腕をガードする防具、2つ目はグリーヴ、足のスネをガードする防具、この2つは全て金属製で出来ていた。最後は黒の革製で手の甲に金属プレートが付けられた指先が無いタイプのグローブだった。
「・・・ミア、これらを作った理由を言ってみな。」
「はい。レンの元々の装備は、ミスリルの剣、鋼の短剣、ミスリルとオリハルコンを混ぜたアーマープレート、そして、地龍の皮で出来たコートでした。」
それを聞いて、周りはどよめいていた。それもそのはず、俺の装備はどこかの英雄や勇者が使うような超一級品の物ばかりである。特にミスリルの剣と地龍のコートは1つで町1つ簡単に買えるほどの価値がある。
ミスリルの剣に関しては、ミアに初めてあった日に言われたのでその価値を知っていたが、まさかコートまでそんな凄いものだったとは昨日の夜まで知らなかった。
昨夜、ミアから明日の試験で作った理由を聞かれた際、今の俺の装備の話をしないといけないから許可して欲しいと頼まれたのである。その時、前回は剣に気を取られて他の装備をちゃんと見てなかったからと、改めてミアに【鑑定眼】で見てもらったことでコートのことが発覚した。
ちなみに、地龍の皮はそこら辺の剣では傷ひとつ付けることも出来ず、さらに柔軟性に優れている。軽装戦士には理想の素材だ。
「なるほど、コイツの装備が異常なのは分かった。だが、何故この3つを作った?」
「それは、レンとマリア姉さんの修行を見たからです。」
「どういうこと?」
後ろからマリア姉さんの方から訪ねてきた。
アイラさんの指示で当日まで装備は見ることがなかったで、何故なのかこれだったのか気になっていた。
「レンの装備は高い性能を持っているけど弱点もあるの。それは、打撃に対する弱さ。」
マリア姉さんとアーシャは何かに気付いた様子だったが、俺を含め、周りは分からない様子だった。
「初日の稽古で、レンはマリア姉さんの回し蹴りをまともに食らってダメージもある感じだった。そのことから、レンの装備は打撃を吸収することが出来ない物だと分かったの。つまり、今回作ったヴァンブレイスは打撃対する防御を強化する目的で作りました。」
「なるほどな。ヴァンブレイスのことはわかった。しかし、他のはどうして作ろうと思った。」
まるでタチの悪い圧迫面接でも受けているような、アイラさんの気迫に俺が飲み込まれそうになる。
「ブリーヴとグローブは、防御力を上げる他に、今レンが学んでいる格闘術に活かすことが出来ます。
ブリーヴは、蹴り技の威力を上げる他にも相手が刃物でガードしても無傷で済みます。グローブは地龍ほどでは無いですが、丈夫な一角猪の皮を使用し、手に対する傷を回避、また拳を握るとちょうど殴る面に鉄プレートが来るように設計し、打撃のダメージをアップしました。
これが、私の考えたレンの足りない部分を補う装備です!」
アイラさんは、話を聞き終わると黙ってそれぞれの品を手に取り、見ていた。
全て見終わると、アイラさんは口を開き「それじゃあ・・・
」と言った。いよいよ結果発表かと思い緊張していると。
「レン!これを着けてマリアと試合しな!」
予想外の言葉に皆、驚いていた、
「試合ですか?」
「そうだ。今回の試験、合否を付けるのはオレじゃない。お前だ。」
その言葉に耳を疑った。
「そんなの俺だったら、悪くても合格と言ってしまうかも知れませんよ。それなのに、なぜ俺が合否判定を?」
「そんな心配はしてないからさ。さぁ、さっさと表な行きな!」
答えになってない。そう思いながら、俺達は外に出た。
「ルールはミアの装備を見るため、格闘戦のみで行う。どちらかが戦闘不能、ギブアップをするか、こちらの止めの合図が入るまで行う。双方構え!」
そう言われ、俺とマリア姉さんは構えた。いつもと同じ穏やかな雰囲気は消え、真剣な顔になるマリア姉さん。
「・・・はじめ!」
アイラさんの合図とともに、マリア姉さんは一気に距離を詰め、俺の腹部に目掛けて右拳を繰り出していた。俺は、それを左に躱し、そのままの勢いで来ていた回し蹴りを俺はヴァンブレイスでガードし、俺は吹っ飛ばされていた。
これは特訓の初日、ミアが俺の装備の弱点に気付いたと言われたので状況とほとんどおなじである。俺は防具を試すのに、この状況が一番分かりやすいと考えていたが、どうやら、マリア姉さんも同じことを考えていたらしい。
ただ違うのは、今回はガード出来たこと、そして自分から吹っ飛んで行ったことである。自分から飛ぶことで衝撃が弱るなることは、この2週間で学んだことの1つである。
ガードに成功した左腕を確認したが前回ほどダメージは無いようだった。
さぁ、ここからが本番だ!