第14話 2日目からの仲直り
翌朝、食堂に行くと重たい空気が流れていた。どうやら、まだミアの機嫌が治ってないらしい。
朝のうちに謝ろうとしたが、こちらが近づこうとしただけで、逃げてしまう。まさに、「取り付く島もない」とはこういう状況を言うのだろう。
朝食後、昨日同様にマリアさんに稽古をつけて貰っていたが、ミアの事が気になり全然集中出来ないでいた。
「・・・はぁ。そんなんじゃ、強くなるどころか大怪我するわよ。」
「すいません。」
「まぁ、理由は分かっているけどね。」
「はい、全部俺が悪いんです。」
「そんなに自分を責めなくても。男の子なんだから仕方ないわ。」
「でも!」
「仕方ないわね。今日の稽古はここまで!仕事も、私からアイラに言って休みにして貰うから、ちょっとお店の入り口前で待ってて。」
「えっ?」
いくら、集中してなかったとはいえ、急に稽古が中止されたかと思うと、仕事まで休めと言われ訳が分からなかった。
とりあえず、言われた通りお店の入り口前で待っていると、扉が開き、中からマリアさんに連れられて出てきた少女がいた。
白いワンピースにキャベリンハットと呼ばれる大きな白い帽子。どこかのお嬢様かと思うほど着飾れていたのはミアだった。
「・・・・・。」
ミアは黙っていたが、顔を赤くしてこちらをチラチラと見ていた。
「ほら、何か言うことは無いのかしら?」
何が起こっているのか分からずにいた俺に、マリアさんが助け船を出してくれた。
「すごく綺麗だ!ビックリし過ぎて一瞬誰だか分からなかったよ。」
「・・・ありがと。」
ミアは照れ臭そうに小さくそう言い、帽子で顔を隠した。
可愛すぎる!これはもう天使にしか見えない!
そんなことを考えていたら、マリアさんがわざとらしく手を叩き「いっけなーい。アイラに晩酌用の火酒を頼まれていたの忘れてたわぁ。悪いけど、二人で買ってきてくれる?ついでに、レン君に町を案内してあげなさい。」
そういうと、マリアさんはこちらが何か言う前に扉を閉めてしまった。
呆然と立ち尽くす俺達立ったが、このままでいるわけにも行かないので、俺は男を見せるべく、「じゃあ、行くか」とミアの手を握った。
ミアは驚いていたが、手を離そうとはしなかった。
歩き初めて15分、ここまで一切会話が無いまま酒屋に着き、頼まれていた火酒を買い、俺の【アイテムボックス】に入れた。
先にお店を出ていたミアが、向かいのお店の窓を覗いていた。俺も覗いてみると、そこは雑貨屋だった。
俺が「寄っていく?」と聞くと、「・・・いい。」と言われたが、中が気になる様子だったので「俺も欲しい物があるから」と言い店の扉を開けた。
「いらっしゃい。あら?ミアちゃんじゃない。どうしたの?そんな、おしゃれして!おや?もしかしたらデートかい?」
「こんにちは、お婆ちゃん。まぁ、そんなところかな?」
と、ミアと親しく話す60代くらいのお婆さん。どうやらここは、ミアがよく来るお店らしい。
ミアとお婆さんが話しているうちに、俺の買いたい物、ミアへの仲直りのプレゼントを選ぶ。
酒屋に行くまでの道中、どうすればミアと仲直り出来るか考えていたが、これしか思い浮かばなかった。ちなみにお金は、昨日働いた分、金貨1枚を貰っている。寝床と食事だけでなくお給金まで貰えるなんて思ってもみなかったので、表世界ではアルバイトもしたこと無かったことから、かなり嬉しかった。
こんな時にも覗いてしまうってことは、それだけここの雑貨を気に入っているということ、ここでなら喜んでくれる物もあるだろう。
そう考えていたが甘かった。品揃えが多く何を選べばよいか分からなくなっていた。その時、お婆さんが声をかけて来た。
「どうだい、お探しの物はあったかい?」
「あっ、いえ。これだ!っていうのはなかなか。」
「そうかい。なら、これ何てどうだい?」
そう言って見せてきたのは、虹色の羽が2つ着いたの首飾りだった。
「これは、レインボーバードの羽の首飾り。この羽を想い人と1つずつ分けて持つと、2人は永遠に離れることはないと言い伝えられている。」
「素敵な言い伝えですね。けど、何で俺に?」
「ホホホ。年を取ると何となく分かるもんだよ。年の功ってヤツさ。」
それを聞いて妙に納得してしまった。
「これ、買います。いくらですか?」
「本当は銀貨3枚だけど、特別に銀貨1枚でいいよ。」
「えっ?でも・・・。」
「良いから。それでちゃんとミアちゃんと仲直りするんだよ。」
そう言い、お婆さんは首飾りを袋に入れてくれた。
支払いを済ませ、俺達はお婆さんの店を出た。
ちょうど良い時間だったので、お昼ごはんを食べるためにイタリアぽいお店に入り、俺はペペロンチーノのような物、ミアはグラタンらしき物を食べた。
その後も特に会話をすることもなく、町を散策した。日が暮れ始めた頃、ミアが「少し付き合って」と言って来たので着いていった。
向かっていったのは、貴族街の方だった。ちなみに、貴族街は城を中心に段々畑のように屋敷が建てられており、爵位が高い程、城に近くに住めるそうだ。
そして、到着した場所は貴族街の少し手前にある小さな公園だった。
そこからは、町が一望でき、夕日に照らされて輝いていた。
「私、昔からこの場所が好きで疲れたり、嫌なことがあると決まってここに来るの。」
そう言うミアの姿は、夕日に照らされて白かったワンピースが赤く染め上がって、実に綺麗だった。
「今回のことは、本当にごめんなさい。私が勝手に嫉妬してるだけなのに、あなたや皆に迷惑かけて。」
「そんな、俺の方こそごめん。」
「気にしないで。アメリアは、女の私から見ても魅力的な人だわ。だけど、それでもレンを取られたく無かったの。」
ミアは俺の方に向き、目をまっすぐに見つめていた。
「私は、レンが好き。会って間もないけど、これは私の本当の気持ち。この気持ちは誰にも負けない。」
ミアはまっすぐな目と言葉で、俺に精一杯気持ちを伝えてきた。
その気持ちに俺も答えなくてはならない。
「俺も、ミアのことが好きだ。正直、一目惚れだった。この世にこんなに可愛い娘がいるなんて信じられないくらいだった。」
俺は、【アイテムボックス】から袋を取り出し、ミアに渡した。
「これ、レインボーバードの羽?」
「うん。さっきのお婆さんから、これを持ってると2人は永遠に離れることはないって聞いて買ったんだ。」
俺は、ミアから首飾りを受け取り、羽を1つ外し、首飾りの方をミアの首に掛け、外した羽は袋に入っていたヒモに通し、俺の首にミアに着けて貰った。
「これで、俺達は一緒だ。」
「・・・うん。」
俺達は見つめて合い、そっと唇を重ねた。
工房に戻った時には、とっくに日が沈んでおり、みんな夕食を食べ終わった直後だった。
「遅い!」っと、アイラさんから怒られたが頼まれていた火酒を渡すと、上機嫌に部屋へと言った。
他のみんなには、迷惑を掛けたと謝って回った。
アメリアさん、「私のせいでごめんねぇ。」と顔が大きな胸に挟まれる形で抱き締められた。
すると、ミアが引っ張り出してくれて、「レンは、私のなんだから!」と言ってしまい、女の子しかいない工房でミアはみんなに質問攻めに会っていた。
マリアさん、いや、マリア姉さんは俺とミアの首もとを見て、「素敵ね。」と言ってくれた。
いつまでも終わらない質問攻めに疲れはてていたミアだったが、アイラさんの「やかましい!!」の一言で解放され、何をどう間違ったのかは分からないが俺のベッドで寝てしまった。
その夜、俺は冷たい床で一夜を過ごすことになった。
大分、展開が早いかなとは思いましたが、個人的早く2人をくっつけたかったので、我慢できず、書いてしまいした(笑)
これからも、恋から愛を変わって成長していく2人を応援してください