第10話 鍛冶屋フローガからの結果
門をくぐって最初のに目にしたのは、日本とは違う町並みだった、ラノベで良く出てくる中世のような町並みに町の中央には大きくそびえ立つ城が見えた。
「本当に日本じゃないんだなぁ。」
改めて、自分が異世界に来たと感じた瞬間だった。
それと同時に、二度と日本に戻ることの出来ないと感じた瞬間でもあった。
「何してるの?早く行くわよ。」
「えっ?あぁ、今行く!」
感傷に浸っていると、ミアに呼ばれた。
「・・・もう俺の生きる世界はここだ。ここで、俺自身の新たな人生始めるんだ。」
気持ちを新たに、ミアの元へと向かった。
俺が乗り込むとミアは馬車を発車させた。馬車は中央に向かうのかと思ったら、何故か城壁に沿って東に向かって馬車を走らせていた。
しばらくすると、門の前では密集していた建物が適度に間隔が空いて、どの建物も先ほどより大きかった。
「ここはあらゆる職人が集まる、通称『職人エリア』。鍛治職人やガラス職人、大工なんかもいるよ。私の師匠の工房もこのエリアにあるの。」
「へぇ、でも何でここに職人が集まるの?」
「理由は、いろいろ言われてる。職人の朝は早いから太陽が昇る東側に集まったとか、この国で1番最初の鍛治師がこの辺りに工房を構えたとか。」
「なるほどねぇ。」
そんな話をしていると、一際大きなレンガで出来た建物の前で馬車が止まった。
「ここが、私の師匠の工房だよ。馬と馬車を置いてくるからちょっと待ってて。」
そう言って、ミアは馬を引いて建物の裏に行った。
改めて見ると、レンガで建てられた建物の入り口の上には大きく『鍛治屋 フローガ』と書かれた看板があった。
門番の人が、ミアを見て「アイラさんのところの」と言っていたの思いだし、看板と名前が一致しないことから。おそらく、このフローガというのが名字なのだろうと考えていると、ミアが戻ってきた。
「お待たせ。さぁ、行きましょ。」
ミアに招かれ、店へと入るといきなり・・・。
「「「いらっしゃいませ!!!」」」
っと、言われ思わずビックリしてしまった。
お店なのだから従業員が居てるのも当たり前なのだが、もっと屈強な男が働いているイメージがあったのだが、そこに居たのは若い女性達だった。制服はオレンジのワンピースにフリル付きの腰エプロンだった。いや、オレンジというよりもマリーゴールドのような色だった。
すると、奥から他の人より濃いオレンジの制服を着た茶色い髪のショートカットの女性が出てきた。
「いらっしゃいませ。あら?ミアじゃない!お帰りなさい!」
「マリア姉さん、ただいま!師匠は工房の方?」
「えぇ、もう少ししたら出てくると思うから、待ってなさい。ところで、後ろの彼は?」
「あっ、紹介するね。彼は、レン。色々あって、一緒に行動していたの。」
「あら、そうなの?はじめまして。私はマリア。今回は、ミアがお世話になったみたいね。」
「はじめまして。こちらこそ、ミアにはお世話になりっぱなしです。」
マリアさんは、この販売スペースの責任者、つまり店長をしているそうだ。また、皆のよき相談役で姉さんと慕われている。
マリアさんや他の従業員の人と話していると、ドンッ!と扉が開き、奥からまた人が出てきた。
「ミアが帰って来たって!」
野太い女性の声が店内に響き渡る。すると、同時にミアが勢い良く立ち上がり。
「師匠!!挨拶が遅れてすいません!ただいま戻りました!」
「何が、『ただいま戻りました』だ!期限ギリギリに戻ってきよって!」
この人がミアの師匠。
身長は180cmくらいで、肌は褐色、赤く長い髪は束ねられ、胸はサラシを巻いて、下は赤い袴を履いた、何とも気の強そうな女の人だった。
「まったく。ほら、結果を見てやるからオレの部屋に来い!」
「はい!分かりました!」
そう言うと、ミアの師匠、アイラさんは奥の扉に入って行った。
一人称が「俺」って、ますます男みたいな人だなぁと考えていると、ミアも置いていたカバンを持ってアイラさんの後を追いかけようとした。しかし、立ち止まりこちらを見て。
「レンも着いてきて。」
「えっ?なんで?」
「だって、あなたも今回の試験に関わったからにはいた方が良いでしょ。とにかく、近くに居て。」
と言われたので、「わかったよ。」俺もミアの後を着いて行くことにした。その時、マリアさんが「へぇー」と呟いていたが気にしないことにした。
「・・・来たね。ん、アンタは確かレンとか言ったね。」
「あっ、はい。そうです。今回、ミアさんの試験の手伝いをしたので、その結果を見届けさせていただきたいと思いまして・・・。」
改めて、前にすると凄い迫力のある女性だ。思わず、緊張してしまう。
「まぁ良い。ミア!アンタの取ってきた鉱石を見せて見な!」
「は、はい!」
ミアは、震えた手でカバンから鉱石の入った袋を取り出し、アイラさんに手渡した。渡した後のミアの手はまだ震えていた。良く見ると、耳は垂れ下がり、尻尾も力が入っていないように感じる。
この辺は、動物と一緒なんだなぁと思っていたら、突然ミアが手を握ってきた。
ビックリして、ミアの顔を見るとアイラさんの手元を心配そうに見ていた。これは、完全に無意識で握ってるなと思いながら、軽く握り返した。
取ってきた鉱石を全て見終わると、アイラさんはこっちを見て言った。
「1層で取ってきた割には、純度が良い、不純物はほとんど入っていない。良い鉱石だ。」
「それじゃあ!」
っと、ミアが笑顔になりかけた瞬間。
「結果は、不合格だ!」
その時、俺達は耳を疑った。