射手の統領089 トノベ副拠
射手の統領
Zu-Y
№89 トノベ副拠
「アタル、そろそろ朝餉の時間だぞ。」起こされて眼を開けるとホサキの笑顔があった。ああ、起きるか。でもその前に…。
ホサキをギュッと抱き締める。
ホサキは盾槍士で普段から重装備なのだが、それでもよどみなく動けるように、筋トレを欠かさない。そのため、芸術的に引き締まった見事な体をしている。引き締まっているがゆえに胸は控えめだが、巨乳が苦手な俺の好み的には、どストライクなのだ。
「アタル、寝ぼけているのか?」
「寝ぼけてない。確信犯だ。」
「そうか、愛い奴め。」ホサキもギュッと抱き締めてくれる。
「そりゃ俺の台詞だ。」なんかいい雰囲気になって来たのだが…。まぁ、名残惜しいが起きて朝餉に行こう。
朝餉では今日の行程の確認だ。
今日はオミョシ分家の家来衆がシエンの求めに応じてアーカに帰る。その前に、隠居に挨拶に行くだろう。それをどうやって躱すかだ。
どうせいつも通りなら、朝餉の後に側室を連れて今日2回目の混浴に行くはずだ。と言うのも、1回目は寝起きのとき、即ち朝餉の前なのだ。もともと仮病だから頗る元気な隠居なので、当然ではあるのだがな。苦笑
隠居が2回目に入った直後に、家臣どもが目通りを願ってると言えば、側室としっぽりやりたい隠居は面会を拒むだろう。それをそのまま伝えて、家臣どもを出立させればよいよな。
その後はサヤ姉とふたりで商都に飛び、キノベ陸運商都営業所で馬を2頭借りて、トノベ副拠のシリタへ行く。
シリタは商都から馬で3時間の港町だ。港町と言っても実際は漁村に毛が生えたようなものだが、シリタのすぐ北東には比較的大きなノーサの港町があり、シリタはノーサの一部と誤解されることもある。まあ、実質的と言うか、地理的に言えばノーサの南東の外れと言ってもよい。このため漁村ではなく港町扱いになっているのだ。
トノベはわざとノーサを外してシリタに副拠を構えた。門弟はシリタよりは遥に開けたノーサに住まうことが多いから、通いの往復が鍛錬になると言うことなのだ。それを厭う者は門弟たる資格なしと言うことだな。
オミョシ分家の家来衆を送り出すのにどれくらい時間が掛かるか分からんが、昼過ぎにはシリタに着けるといいな。
キョウちゃんズには、オミョシ分家の家来衆が帰路に着いたら、そのことをシエンに報告するために、今日もアーカに飛んでもらう。
ホサキはナワテへ行って鍛錬だ。
サジ姉、アキナ、タヅナは、ガハマに留守居で、アキナは弓の鍛錬、サヤ姉とタヅナには隠居の監視をしてもらうことにした。
とまあ、こんなところで話はまとまったので、早速行動に移ろう。
俺は隠居の世話役を申し付けた家来に聞いて、予想通り隠居が側室とよろしくやっている黒湯に向かった。
脱衣所から中の様子を窺うと、浴室からは側室の嬌声が聞こえて来る。まったくお盛んなことだ。俺は脱衣所から声を掛けた。
「隠居どの、お楽しみのところを誠に無粋で申し訳ないのだが、ご家来衆が目通りを願っておる。ここ数日お目に掛かってないゆえのご機嫌伺いのようだが、ぶっちゃけお邪魔であるし、返してよろしいか?」
「アタルどの、家来どもが相すまぬことやの。緊急の用事以外は無用と伝えてくれるか?」
「さもありなん。隠居どの、お励みなされよ。隠居どのがご健康を取り戻しつつある証よの。かく言う俺も風呂場で致すはまた格別ゆえ、風流のひとつと心得ておる。まさか隠居どのとここまで好みが合うとは思わなんだ。同志を得た思いぞ。」
そんな訳ねーだろ!と俺の本音が突っ込むが、嘘も方便と言うではないか。笑
「おお、それは重畳や。話が合う良き婿を得たで。サキョウとウキョウもかわいがってな。」
「むろんのことよ。隠居どの、俺がサキョウかウキョウを孕ますが先か、隠居どのが側室どのを孕ますが先か、尋常に勝負!と言う趣向はいかがか?大金貨1枚でどうだ?」
「それはおもろい趣向やなぁ。アタルどのもなかなかの風流人やの。手加減はせぇへんで。」
再び側室の嬌声が響く。何とも目出度い隠居ではある。俺は笑いを必死に堪えて、
「うぬ。負けてはおられぬ。サキョウ、ウキョウ、いずこぞ?」と、隠居に聞こえるように言って黒湯を後にしたのだった。爆笑するのは何とか堪えた。笑
しばらくしてオミョシの家来衆が、アーカへ帰還する挨拶に来た。
「アタル様、大人数でえろうお世話になりましたな。ご隠居様にご挨拶を申し上げたいんやが…。」俺の様子を伺って来る。昨日の脅しが聞いたか?笑
「すまんな、昨日の話を受けて、たった今、隠居どのに取り次いで来たのだが、緊急の用件以外は取り次ぎ無用と申されてな…、その、何だ。言い辛いのだがな、ちょうど側室どのとの混浴でよろしくやっておられるのだ。邪魔されたくないようでの。」
「さいでっか…。」重臣どもは溜息をつく。
「すまぬ。そなたらのことは伝え置く。
話の流れで、隠居どのが側室どのを孕ますのと、俺がサキョウかウキョウを孕ますのと、どちらが先かの賭けになってしもうた。いくら何でもあのような子供たちには俺は手を出せぬ。大金貨1枚は諦めたぞ。」俺は溜息をついて見せた。
「アタル様はそないなことをご承知なされたんでっか?」承知も何も、俺から持ち掛けたんだけどな。笑
「わが盟友シエンからお預かりした隠居どのゆえな、粗略にはできん。せっかく湯治でご回復の兆しが見えた隠居どのの申し出よ。断る訳にはいかんであろう?隠居どのも俺がまだ幼いサキョウやウキョウに手を出せるはずがないことを承知の上での戯れよ。本気ではないと見ておるが…、まぁ、しかし大金貨1枚で隠居どのが喜ばれるなら安いものよな。」
「誠に相すんまへんなぁ。」
「よい。オミョシ分家とは婚姻同盟の仲よ。その分そなたらはシエンに尽くしてくれたら元は取れると言うもの。シエンの下で励めよ。」
「「「ははっ。」」」重臣3名が揃って頭を下げ、オミョシの家来衆は俺の言い分を真に受けて、ひとり残らずアーカに帰って行った。俺、グッジョブ!笑
家来衆の出発を見届けてキョウちゃんズが今日もアーカに飛んだ。俺とサヤ姉は商都ギルドへ飛び、キノベ陸運商都営業所で馬を2頭借りて、ふたりでそのままシリタへ向かった。
オミョシ分家の家来衆があっさり出発したから、この分なら昼過ぎにはシリタに着くな。
「姫さん、ようお来こしで。こちらがアタル様でんな?」
「そうよ。ご苦労様。」
「ささ、代官がお待ちかねでっせ。」
門番のひとりに案内されてすぐ表座敷に通された。
表座敷には重臣と思敷き家来衆が居並んでおり、中央には白髪頭の年配の家来がいる。この家来が代官か。このパターンは昨日と一緒だな。この白髪頭を黒くすると…、うむ、トコザの爺だ。
「姫様、お久しゅうございます。」
「爺、元気にしてた?」
「この通り元気ですぞ。
アタル様もご立派になられましたな。と言っても覚えていらっしゃらぬでしょうな?」
「ふむ、子供の頃に会ったトコザの爺だよな?」
「おお、これは嬉しゅうございますな。」
「あら、よく覚えてたわね?」
「まぁな。髪の毛、あるしな。」
「は?」爺が首を傾げる。
「いや、こっちのことだ。」
「この度はご婚約、おめでとうございます。」爺が口上を述べ、居並んだ重臣が一斉に頭を下げた。やっぱり昨日と同じパターンだ。
「あら、ありがとう。うふふ。」サヤ姉はご機嫌である。
「ユノベのアタルである。此度、縁あってサヤ姫を迎えた。動の伯母御に続いて、トノベとユノベは二代に渡っての姻戚となる。動の伯母御同様、よしなに頼む。」
「「「「「ははっ。」」」」」
「お奥方様と言えば、アタル様はあのお奥方様をやり込められたようで?」やっぱりこの展開か。昨日と一緒だな。笑
「やり込めたと言うほどでもないが、ふたりの伯母御どのが揃うと少々暴走するのでな、お諫めしただけよ。」
「呆れた。あれだけやっといて。」
「手加減したじゃないか。」
「何言ってるのよ。トノベの馬車とヤクシの馬車を廃車にするし、母上たちを散々脅して震え上がらせたじゃないの。それに東都まで歩いて帰らせるし。
まあでも、あのくらいコテンパンにやらないとあのふたりは懲りないから、いい薬になったけどね。」
なんかやばい。俺とサヤ姉のやり取りを聞いて、重臣どもが完全にドン引きしている。
「おいおい、歩くと大変だから流邏石を渡したじゃないか。もっとも伯母御たちは流邏石を使わずに丸1日歩いたそうだけど、それは俺のせいじゃないだろ?」
「うーん、どうかしらね。誰かさんにこっぴどく叱られたから、反省してるところを態度で示すために丸1日歩いたのよ。」
「姫様、それは本当の話だったんですか?てっきり尾鰭が付いたものと思ってましたが。」
「そうよ。父上でも頭が上がらない母上が、アタルにだけはビクビクしてるわ。」
重臣たちから尊敬の眼差しが来た。
「サヤ姉、それこそ尾鰭端鰭だろう?
しかしまあ、なんだ。伯母御どのたちが、皆にも苦労を掛けてるようで相すまぬ。」
その後、昨日と同様に、積もる話や思い出話であっと言う間に時が過ぎた。
帰り際、サヤ姉用の流邏石を登録させてもらったので、ガハマの滞在中にサヤ姉は日帰りでシリタへ鍛錬に来られるようになった。これも昨日と同じ。
馬での帰路も順調で、商都に着いたのは夕刻だ。そのまま商都営業所で馬を返した。
あとは帰るだけだが、昨日は短時間だがサジ姉と古都公園でデートしたな。サジ姉とふたりきりでのデートは昨日が始めてだったが、サヤ姉ともふたりきりのデートも今までしたことがない。
「なあ、サヤ姉、少し時間あるから商都の町を見て歩こうぜ。」
「あら、いいわね。」
俺はサヤ姉の手を取って恋人繋ぎをして、イチャラブモードに入ると、サヤ姉も寄り添って来た。そのまま商都の町をふたりで散策する。こう言うのも悪くないな。
「おやおや、おふたりさん。見せ付けてくれるねぇ。」
「ひゅーひゅー。」
来たー!テンプレのお約束。マジであるのね。こう言うの!で、大抵3人組なんだよな。
嬉しくなって振り向くと、やはり3人組だったが、真ん中のリーダー格っぽい奴が、俺の顔を見てぎょっとした。そして…、
「すみませんでしたー!」と言ってダッシュで逃げて行った。
「「兄貴~。」」子分ふたりがそいつを追っ掛けて行く。
えー、これで終わりっすか?
「何、今の?」サヤ姉が訝し気に聞いて来たが…。
「いや、分かんねぇ。」としか言いようがなかった。
俺のこと知ってるっぽいんだが、マジ、誰よ?
それから商都を小一時間ほどふたりで見て回り、夕餉の頃にガハマに帰還した。
夕餉では皆から今日の報告が来る。まぁ変わりはない。
留守居のサジ姉、アキナ、タヅナによると、隠居はいつも通りとのことだ。そう言えば隠居は家来衆がアーカに帰ったことを知らないんだよな。知ったときにどんな顔するか見ものだな。つーかずっと気付かなかったりして。
キョウちゃんズはシエンに、家来衆がアーカに帰還すべくガハマを発ったことを知らせるために今日もアーカへ飛んで行き、そのまま鍛錬して来た。ホサキもナワテで訓練だ。
夕餉が終わると風呂がまだの俺とサヤ姉で湯殿に向かったが、入浴済みのキョウちゃんズも付いてきた。まったくこいつら、本当に温泉が好きだな。
サヤ姉とのお背中流しを堪能し、キョウちゃんズには頂&秘部マッサージと言う、昨日と同じ展開だ。そう言えば今日の輪番はキョウちゃんズなんだよな。だったら頂&秘部マッサージはしなくてもよかったんじゃね?
キョウちゃんズを連れて寝室に行くと、忍の者が来たことを家来が告げに来た。キョウちゃんズを寝室に待たせて、俺は忍の者の報告を聞きに行った。
「大儀。」
「主様、シノベとエノベの親睦を深めて参りました。」
「それはよかった。」
「影の者がお礼に参上しておりますが御目通りは叶いましょうか?」
「構わんよ。影の者も味方だからな。」
するともうひとりが現れた。エノベだな。黒装束ではっきりとは分からんが。随分小柄だな。相当身軽そうだ。
「この度はぎょうさんなお振舞、おおきにありがとさんでおました。」この声音、女か?くノ一だな。一瞬、影の者の頭巾から覗く眼が合った。とても澄んだ印象的な眼だ。
「こちらこそ、商都での隠居の命令を早々に知らせてもらって感謝している。ユノベとオミョシ分家が同盟した以上は、これから先、シノベとエノベで共同作戦を行うこともあろう。引き続きシエンの手足となってくれ。よろしく頼むぞ。」
「委細承知。」
「主様、大層頂きましたので。」忍の者が大金貨1枚を差し出して来た。
「それはよい。エノベをシエンに付けた大手柄の特別報酬として遣わす。」
「ではありがたく。皆、喜びましょう。」
「報告大儀。そなたもアーカからわざわざすまんな。」
「いえ。」
「ではこれより護衛任務に戻ります。」
「ああ、これからもよろしくな。
そなたもシエンをよろしく頼む。」
「はっ。」
ふたりは闇に消えた。
寝室に戻るとキョウちゃんズが全裸で待っていた。まったく。と思いつつ、俺もさっと脱いで大の字になる。
ふたりしてマイドラゴンを構おうとしたのでひとりを捕まえてこちらに向け、仰向けになっている俺の胸に座らせた。捕まえたのはウキョウだった。仰向けに寝た胸の上に、こちらに向けて座らせたのだから目の前に秘部が来る。サキョウがドラゴンの世話を始めたので、俺はウキョウの蜜壺を堪能した。
しばらくしてサキョウとウキョウが入れ替わり、ウキョウがドラゴンの世話をし、俺はサキョウの蜜壺を堪能した。結局夜遅くまで交互に何回もふたりを入れ替えることになった。
しかし最後の一線を越えるのは我慢した。成長を始めて大人になりつつあるが、まだ子供の部分も結構残っている。それが消えるまでは待とう。どうせもう少しの辛抱だ。
俺の理性が強いことが証明された夜だった。俺、グッジョブ!
設定を更新しました。R4/7/17
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://ncode.syosetu.com/n2050hk/
カクヨム様、アルファポリス様にも投稿します。




