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射手の統領068 ロリ双子の小悪魔、再び

射手の統領

Zu-Y


№68 ロリ双子の小悪魔、再び


 今日はいよいよシルドたちと廻船で西へ向かう。


 朝餉を摂って宿を出発。北斗号に乗って東都総本店に行く。

 昨日、アキナと注文した、簪や櫛や指輪などの装飾品、紅や白粉などの化粧品、保存の効く佃煮や雷おこしなどの乾き物の銘菓などを、交易品をたっぷりとサブ車両に積み込んだ。

 干し肉、魚介の干物、漬物、味噌、塩、醤油などの食料品は、メイン車両の倉庫エリアに入れた。飲料水、米、馬の干草は、名府で下船してから補給する。


 準備が整って、東都総本店の船着場に行き、待合室で昼餉を摂った。

 夕餉用には、売店でフカガめしを購入した。フカガめしは、折りの中に、茶飯を敷き詰めて、その大半に、アサリ、油揚げ、生姜、ゴボウのフカガ煮をどんと乗っけて、残りの部分には浅草海苔を敷いてその上に煮穴子をふた切れ、後は卵焼きと煮物と漬物と言う、東都の名物を集めた弁当だ。

 値段も手頃でとにかく旨い。俺のお気に入りの一品だ。あとは酒をいろいろ見繕って、と。


 じきにシルドたちが船着場にやって来て、夕餉用の弁当や、酒を買い込んでいた。考えることは同じだ。笑


 間もなく乗船が始まった。

 この廻船は馬や馬車も運べる大型だ。船内に馬房と馬車の駐車スペースがある。

 馬車のまま乗船し、馬車を固定して、馬を馬房に入れた。船が揺れ出したら馬たちが不安がるだろうから、そのときは馬房に来よう。


 俺たちは船室に向かった。和室の6人部屋だが、広さ的には8人でもOKである。ちゃぶ台があり、一家団欒的な雰囲気になるので落ち着く。出航前に、サジ姉が皆に酔止の術を掛けて、航海への対策は万全だ。


 出航し、船は東都前湾を進む。

 シルドが誘いに来て、皆も一緒に甲板に出た。東都前湾は廻船の他、様々な船が行き交う。

 この船も大型だが、所詮は沿岸航海用だ。外洋航海用の異国との交易船はさらに大きい。島国の和の国は、当然、海洋国家でもあるので、航海術が盛んに研究され、その技術は日々発達している。


 沿岸航海用の船にも、異国からもたらされた外洋航海用の技術が導入され、船足がかなり速くなっている。廻船は多くの荷を積めるので、運輸の主役だ。

 そして、内陸には陸運が隅々まで物資を行き渡らせる。こちらは派手に目立たないが、なくてはならない名脇役だ。


 海には海賊もいることはいるが、大型の廻船は外洋航海技術の導入で船足も速く、船が作る波の影響で小型船は近付けないから、さほど脅威ではない。


 師の月も後半になるので甲板は寒い。一旦船室に戻ることにした。

 普段の鎧などを脱いで収納腕輪に入れ、普段着でゆるりと過ごす。大人嫁たちがちゃぶ台を囲み、俺が畳に寝転んで、キョウちゃんズが俺にまとわりつくという、お馴染みの光景だ。ひとりっ子で、幼くして両親を亡くした俺には、こういう雰囲気が実に心地よい。

 やっぱ大部屋はいいなぁ。


 再び甲板に出ると、冬なので早々に日が暮れ、辺りは暗くなっていた。馬手側に見える小さな無数の光は、タテベ本拠のコスカあたりだろうか?

 そろそろ夕餉だ。夕餉はタテベの一行と共に摂ることになっている。各々弁当や酒を持参して、食堂で合流した。


「なんだ、シルドもフカガめしにしたのか?」

「うむ、これが東都の旅飯の名物だと聞いたからな。」

 まだ東都湾内と言うこともあり、揺れはほとんどなく、夕餉からそのまま、東都総本店の待合室で買い込んで来たいろいろな酒で、酒盛りとなった。

 未成年のキョウちゃんズはもちろんジュースだ。つまみは食堂でいろいろ注文した。


 タテベの副拠を任されているシルドからは、副拠経営の話などを聞いたが、大いに今後の参考となった。

 ホサキがシルドに酌をしながら談笑している。

「ホサキとこうして呑むときが来るとはなぁ。」

「そうですね。兄上からは盾の技も槍の技も教えて頂きましたから、今の私があるのは兄上のおかげです。兄上がナワテに行かれてからは、お会いする機会もほとんどありませんでした。」ホサキって、普通の口調もできるのな。笑


 ホサキが8歳で母を亡くし、タテベ本拠に引き取られると、盾の技と槍の技を兄上のシルドから教わったそうだ。ホサキによると、16歳も離れているので、兄上というよりは師匠という印象が強いと言う。

 2年前にシルドがナワテの副拠を任されて赴任してからは、なかなか会う機会がなかった。


 しみじみと呑んでいるシルドとホサキを、温かい目で見守っていた俺は、ふと辺りを見回して、しまったと思った。

 いつの間にかキョウちゃんズが天使の笑顔を浮かべて、タテベの家来衆の間に入り込んでいるのだ。タテベの衆、騙されてはいかん。あの天使の笑顔の下には小悪魔が隠れているのだぞ!


 すでにひとりが突っ伏している。ふたり目と3人目の餌食となるであろう家来衆が、サキョウとウキョウに煽られて、勝負をしているところだった。

 サキョウとウキョウがそれぞれの獲物=タテベのふたりに注ぐ。それを獲物ふたりは一気呑み干す。先に呑み干した方が勝ちらしい。負けた方がさらに注がれ、それを呑み干して次の勝負となる。あちゃー。


 結局、シルドと被災を免れた残りのふたりの家来の3人で、キョウちゃんズに撃沈された3人を、船室まで担いで行く羽目になった。

「サキョウ、ウキョウ、いい加減にしろよ。」溜息交じりに言うと、

「うちら、注いだだけや。」ニヤニヤ。

「呑みはったんは家来衆や。」ニヤニヤ。

「ぐっ。」まったくその通りだ。しかしなぁ。

 天使の微笑みが小悪魔の微笑みに変わっていた。

「アホやなぁ、後先考えんと呑みよる。」「ちょっとおだてたらホイホイや。」


 嫁たちはと言うと、

「自己責任ね。」「これで…懲りる…。」「自分の限界は知っとくべきです。」「私もぉ、注いじゃいましたぁ。」だそうだ。

 シルドと話し込んでいたホサキだけが、???だった。


 翌朝、食堂で朝餉を摂ってると、タテベの衆は、シルドを含めて3人しか来なかった。

「シルド、おはよう。3人か?」シルドは苦虫を噛み潰したような顔をして、

「ああ、残りの3人は、今日は使い物にならん。昨夜は何度もトイレを往復だ。」

 キョウちゃんズが、てへぺろをやっていた。

「なんかすまんな。うちの身内が煽ったようで。」

「ふん、自分で呑んだのだから自業自得だ。まったく、武家にあるまじき不覚者どもよ。

 今朝は、起こしても起きんのでな、こいつらに頭を丸坊主に刈らせて、トドメに俺が、顔いっぱいに墨で『寝首』と書いといてやったわ。」

 嫁全員が大爆笑しやがった。ちくしょうめ!泣


 午前中にズオカに到着。

 セプト全員とシルド以下タテベの3人はズオカに上陸した。キョウちゃんズに潰された3人は、外に出られる状態ではないらしい。

 昼餉には、名物の自然薯のとろろ汁を食べた。これは自然薯をすりおろし、鰹節のだし汁と味噌を合わせたとろろ汁を、麦飯に掛けて食うのだが、自然薯の土の香りと、かつおだしと、味噌がいい塩梅に調和して、麦飯との相性が抜群だ。シルドもいたく気に入ったと言っていた。


 ズオカといえば特産品は茶だが、冬の今は時季外れだ。海産物ではサクラエビと生しらすだが、どちらも生ものなのでセプトの交易には向かない。結局ズオカで仕入れるものは、今回はなかった。


 昼下がりに廻船はズオカを出航した。

 出航前にサジ姉が皆に酔止の術を掛けたが、潮帆を張らないので揺れは大したことはなく、2度目の航海で皆も慣れてきているので大丈夫だ。


 夕餉には、タテベのクリリン3人がようやく復活して来た。見事に剃り上げられた頭が青々としている。しかしシルドも思い切ったことをやるものだ。

 3人は、醜態をさらして申し訳ないと、皆に謝っていた。キョウちゃんズの満面の笑みが、なんか怖かった。あいつら、小悪魔ではなく鬼だ!


 夕餉の後にまた宴会が始まると、最初は遠慮していたクリリン3人だが、キョウちゃんズから、「今夜でお別れやんかー。」とか、「この旅の最後の思い出やー。」とか、結局口車に載せられて呑んでいた。


 最後には、「もう剃られる髪はない。」「俺たちに失うものはない!」と言って、ガンガン呑んでいた。キョウちゃんズの思う壺だ。今夜は大人嫁までもが、呑ませる側…じゃなかった、注ぐ側にまわっていた。


 シルドは呆れていたが、

「まぁ、適材適所と言うから、ああいう奴らでも使い道はあるものだ。」と、大変参考になるアドバイスをくれた。

 結局この晩も、シルドと残りのふたりが、酔い潰れたクリリン3人を背負って船室に戻って行った。笑


 船室に戻ると、嫁たちから「一歩間違うとアタルもああなる。」と忠告を受ける羽目になってしまった。言い返せないのが悔しい。

 もう寝よう。8人分の布団を敷くと、部屋はいっぱいだ。俺の両横にはキョウちゃんズが来て、ぴったりくっついて来る。

「アタル兄、美女に囲まれて幸せやなぁ。」ニマニマ。

「いや、生殺しだから結構辛い。」

「生殺して、なに?」ふたりともキョトンとしているが、大人嫁たちは笑いを噛み殺している。


「まぁいいから。もう寝るぞ。」と言って布団を被ると、キョウちゃんズが潜り込んで来た。両腕で掻き抱くと、当たった胸がむにょんとしている。そう言えば、披露目に向かうときもそうだったな。ブラのパッドの材質を変えたようだ。

 そのままむにょんパッドごと頂マッサージをしてやった。しかしこのむにょんパッド、なかなかいい出来だ。感触が本物にそこそこ似ている。これが本物の感触になるのはいつのことだろう?もうすぐ、なのかな?

 ふたりはとろんとして、最後にぶるるっとなった。


 翌朝、予想通り、朝餉の席にクリリン3人組は来なかった。笑

 午前中に廻船は名府に到着し、俺たちはここで下船する。北斗号で名府に降り立った。

 シルドたちとの別れの昼餉を共にする。名府といえば、ひつまぶしか、きしめんか、味噌カツか…うーん、迷う。

 シルドの希望を聞いて、ひつまぶしになったので、北斗号を一旦キノベ陸運の名府営業所に預け、ひつまぶしの店に向かった。


 ひつまぶしは、細かく切った鰻を、お櫃に入れた温かい飯に乗っけて供される。これを小振りの茶碗に取って食うのだが、大体3~4杯分。まずはそのまま。次は、刻み海苔、刻みネギ、山葵を乗っけて食う。3杯目は、2杯目と同じものにダシ汁を掛けて掻っ込む。最後が4杯目になったら、1~3杯目のうちの、好きな食い方で締める。

 俺は鰻が大好物で、鰻丼でガッツリ行くのが好みではあるのだが、この食い方もなかなか乙だ。


 鰻には目がない俺は、それなりのこだわりもある。鰻の食い方の正統派は、炊き立てのホカホカの飯に乗せることだ。こうすれば鰻は冷めない。鰻を皿の上に乗せ、飯と分けて出す食い方は、一見上品かもしれないが、鰻がすぐ冷めて風味が落ちるので、鰻好きはこんなバカな食い方はしない。


 白焼を山葵で食うのもいいが、やはり鰻は蒲焼だ。タレは店ごとの工夫があって、千差万別、このタレを味わうのが蒲焼の醍醐味だ。

 焼きは、東都を含む中和以東で主流の背開き蒸しありと、西三都を含む西和以西で主流の腹開き蒸しなしのどちらにもそれぞれの趣がある。あとはやっぱり肝吸いだ。

 ひつまぶしは、あったかい飯の上に乗せているから合格点だ。そのままと、薬味やダシ汁では、まったくの別物になるのも面白い。堪能した。


 昼餉をすますと、シルドとは再会を約し、固い握手をして別れた。

 そして俺たちは名府営業所で北斗号を受け取ると、曳馬たちの食糧として、干草、雑穀、豆類をたっぷり買い込んだ。

 タヅナがいるのと、キノベ陸運営業所特別優遇利用許可証のおかげで原価だ。そして、ガハマの副拠へ2~3日中に8人で行き、1~2泊するのでよろしくという早馬伝令を頼んだ。

 その後、山髙屋名府支店で八丁味噌を10樽仕入れ、サブ車両に積んだ。味噌は保存食だから日持ちする。

 それと旅の必需品の、飲料水、米、干草もしっかり補給した。こちらはメイン車両の倉庫スペースだ。こちらもアキナと山髙屋移動店舗証明書のおかげで仕入値だ。


 名府ギルドへ行き、これから行く西の方のクエストをいくつか受けた。名府の北西の原野で大狐3頭と猛烏4羽、オーガからガハマへ抜けるセキガの原野あたりで猛熊1頭、大鳶4羽、まぁ、こんなとこだろう。

 名府ギルドの流邏石は俺しか持っていないので、新品の流邏石を7個登録して、嫁全員に配った。

 緊急で東都・西三都間を行き来するときの中継点としても必要である。


 もうすぐ夕暮れなので、今日は名府に泊まることにして、再度名府営業所に行き、北斗号を預けた。


 近くの宿屋で4人部屋2部屋を取る。

 夕餉は味噌カツにした。宿の受付に近場でお勧めの味噌カツ屋を聞き、その店に行った。この店の名物は、わらじトンカツといい、普通のサイズの優に2倍、正しく草鞋の大きさである。これに、八丁味噌をベースにした味噌だれを掛けて食うのだ。ボリューム満点だ!俺とキョウちゃんズはわらじトンカツ、大人嫁5人は普通のトンカツで、味噌だれをたっぷり掛けて頂いた。八丁味噌の味噌だれが絶妙で、メシが進む進む。たらふく食った。


 さあ、明日は、クエストをこなしながらオーガの町を目指そう。

設定を更新しました。R4/5/29


更新は月水金の週3日ペースを予定しています。


2作品同時発表です。

「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n2050hk/


カクヨム様、アルファポリス様にも投稿します。


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