射手の統領059 披露目の準備
射手の統領
Zu-Y
№59 披露目の準備
目覚めると隣から、頬杖をついたタヅナが覗き込んでいた。
「おはよう。」
「おはようございますぅ。うふふふ。寝顔を見ちゃったぁ。」
そう言われると、なんかこっ恥ずかしいんですけど。次のタヅナのときには、絶対に寝顔を見てやる!リベンジだ。
起き上がると、昨夜のままなのでふたりとも裸だ。タヅナは、朝の生理現象のマイドラゴンと出会って照れていたが、自分の裸を隠しはしない。ついつい小振りな双丘を目で追ってると、両腕で頭を抱え込まれて、顔が双丘の谷間に埋められた。く、苦し…くないな、タヅナのボリュームだと。でもさ、何とも幸せな気分なんだよな。これはリア充にしか分かるまい。
さあ、朝餉へ行こう。
皆が揃って朝餉を始めると、今日の段取りを打ち合わせた。
「サヤ姉、サジ姉、ホサキ、タヅナは、それぞれの実家で御父上たちに、山髙屋どのの提案の内容を伝えて、ご意向を聞いて来てくれ。ユノベは参加することと、帝家の宮様、おそらく次ノ宮殿下に声掛けすることを必ず伝えてくれ。」
「「「「はい。」」」」
「タヅナ、キノベが参加ならトウラクが必ず来るように画策せよ。次ノ宮殿下にお目見えが叶えば、次期統領としてトウラクに箔が付くからな。ハミどのからキノベどのに進言させれば通ると思うが、それでもキノベどのが煮え切らなかったら、俺がトウラクを次ノ宮殿下に引き合わせるつもりになってると言え。」
「えぇ?アタルはぁ、次ノ宮殿下とお知り合いなのですかぁ?」
「古都の帝家宝物殿から金剛鏑を貰い受けたときの勅許は、次ノ宮殿下から直接頂いたのだ。これから神龍鏑を得るたびに、ご覧に入れに行く約束をしている。」
「それ、初耳だわ。」
「え?言ってなかったっけ?」
「勅許を…貰って…来たと…だけ…聞いてた…。」
「侍従あたりから貰って来たのかと思っていたぞ。」
「そうか、勅許を貰って来た晩は、キョウちゃんズのブラデビューの日だったからゴタゴタしてたんだっけ。」
「ゴタゴタとはなんやの!」
「アタル兄が、うちらに暴言吐きまくったんやないの!」
「え?暴言?」暴言なんて吐いてねぇよな。
「幼児…体型…って…言った…。」サジ姉、ニマニマ。
「ブラを見せろとも言っていたな。」ホサキ、ニマニマ。
「ちょっと待て!お前ら面白半分に煽るな。事情を知らないアキナとタヅナがマジでドン引きしてるじゃないか!」
ちくしょう、ニマニマ×5、ジト目×2。
「話を戻すぞ。アキナは、総本店に飛んで御父上に、いつやる予定なのか、何人規模の披露目を考えているか、各家からの披露目への参加人数、護衛も含めての受け入れ態勢など、おおよそのことは三の叔父貴殿から聞いてはいるが、確実なところを詳しく聞いて来てくれ。それと、嫁たちの参加はしないでいいな、との確認も頼む。」
「あら、私たちは参加するんじゃないの?」
「もちろん連れては行くが、披露目へは参加はしない。サヤ姉たちも参加したら、5武家同盟と山髙屋の提携の発表というよりは、俺たち皆の婚約発表がメインになるだろ?5武家同盟との提携は山髙屋の宣伝にもなるのだから、私的な婚約発表はついでに話に触れるくらいだな。ただの提携ではなく、婚姻提携なら重みが増すからな。」
「それもそうね。」
「それにな、皆、飛び切りの美人さんだから、余計に婚姻が注意を惹くし、俺は確実に世間の男どもから嫉まれる。
サキョウとウキョウは誰だ?となるし、オミョシ分家の出だと分かれば、さらに話題をかっさらう。オミョシ分家は薄々知ってても、本家には寝耳に水のはずだから、どうなってるんだと騒ぎになる。
これだけで、同盟と提携の話なんかすぐに吹っ飛ぶぜ。
そんな場に呼ばれた次ノ宮殿下は蚊帳の外、自分がお飾りに使われた上、重要視されなかったとあっては、間違いなく御不快になるだろうよ。そのせいで帝家と拗れたら、いいことなどこれっぽっちもない。」
ん?皆、モジモジ&真っ赤っかなのはなぜ?
「だから、実家に報告するときは、自分たちは披露目には参加しないと言ってくれよ。特に、サヤ姉とサジ姉はな。」
「なぜ…私たちが…特に…なの…?」
「伯母御どのたちの動向が変わるからだよ。同盟と提携の披露目だけなら東都には来ないが、サヤ姉とサジ姉が披露目に参加するとなったら絶対に来るだろ。伯母御どのたちは後先考えないところがあるから、来たら何かしら、やらかすに違いない!」
俺の伯母御たち評に、サヤ姉とサジ姉がともに伯母御たちを庇い出す。さすがに娘だな。
「あの件は、思いっ切り反省してたわよ。」
「相当…凹んでた…けど…。」
「あの伯母御どのたちがいつまでもしおらしくしてるものか。もう復活してる頃だろうよ。」ちなみにこの見解は叔父貴たちも一緒だ。笑
それから俺は、提携に関して山髙屋とユノベで結んだ、護衛料は取らず、食費と宿泊費だけでよいという条件を話した。一見すると、山髙屋に有利な条件だが、普段はユノベの費用負担で家来たちにさせている実戦演習を、山髙屋に食費と宿泊費を負担させてやるのだから、決してユノベに損はない。
「トノベ、ヤクシ、タテベが加われば、連携の訓練にもなるから、サヤ姉とサジ姉とホサキは、この件も御父上の意向を聞いて欲しい。」
「「「はい。」」」
「キノベはいいんですかぁ?」タヅナが聞いて来た。
「キノベと山髙屋は、以前から協力関係にあり、条件面で合意しているから、わざわざ護衛料を放棄する必要はない。まぁ、その分、食費は自前というのがキノベの条件だがな。」
「アタルはどうするのだ?どこかの家へ行くのか?」
「昨日も言ったが、サキョウとウキョウと留守番だよ。今日1日流鏑馬の稽古をするつもりだから、報告はそちらに来てくれ。」
打合せが済んで、皆はそれぞれ実家に飛んだ。
俺は、昨日丸1日繰り返しやった流鏑馬を、今日も丸1日、徹底的にやることにした。ギャロとロップを弓の技の稽古に行かせて、ひたすら流鏑馬の稽古に励んだ。午前中の相棒はセールイ。これですべての馬との顔合わせが終了だ。
キョウちゃんズは、ずっと俺の流鏑馬の稽古を見て、的を射抜くたびに拍手していた。休憩のときは、タオルを出して来たり、飲み物を出して来たり、甲斐甲斐しく世話をしてくる。女の子だなぁ。
「アタル兄、ホンマに上手やねぇ。」
「1本も的を外さんねぇ。」
そう、流鏑馬は基本的には、親父直伝の精密狙いの技と、三の叔父貴から伝授された速射の技を組み合わせて、それを馬上で行えばよいのだ。あとは、馬上では的が流れて見えるから、末の叔父貴から伝授された動き的の技も効果がある。
しかしまだ、図星は外すことがある。すべての矢で図星を射抜けるようになるまでは、ひたすら稽古だ。
午前の稽古を終え、馬の手入れをしてシャワーを浴び、キョウちゃんズ連れて昼餉を摂りに食堂へ行った。いつもの通り、俺の左右に座るキョウちゃんズ。今日は俺たちだけなんだから向いに座りゃいいのに。笑
「ずっと見てるだけで飽きないの?」
「アタル兄が上手やったからねぇ。」
「アタル兄がカッコよかったんよねぇ。」
なんか無性に嬉しくなったので、ふたりの頭を撫でてやった。
「「はうぅ。」」
そう言えば、キョウちゃんズは、ホントによく食べるようになった。もはや一人前の大人と同じ量、いや、それよりも多いくらいだ。
ライやウズによると、桁外れの気力量を維持するために、摂取した栄養をほぼすべて使っていたせいで、からだの成長が遅かったらしい。キョウちゃんズは、ライとウズから育ちたければ食えと言われて、頑張って食べるようになった。最初のうちは、太らないか心配したが、そんなことはなく、初めて会った頃より少し背が伸びた気がする。
以前、口を滑らせてひどい目に遭ったが、ふたりは13歳だというのに、いわゆる幼児体型だった。今は、パッド入りのブラと背が少し伸びた?せいで、少女っぽく見えるようになっている。まだ、ぺったんこ&ツルツルだがな。
昼餉の後、小一時間ほど休憩して午後の稽古を開始。相棒は1周してキノベのキング。足癖は悪いが、指示はよく聞く素直な奴。
午後の流鏑馬稽古では、図星を射抜くたびに、キョウちゃんズが声援を送ってくれるのが、何とも励みになった。
そのおかげで、午後の稽古では、とうとう図星に皆中させることができたのである。
午後の稽古中に大人嫁たちが次々に帰って来た。武家の方は4家とも披露目には参加だった。まぁ当然だな。それから提携の条件には、トノベもヤクシもタテベに加え、なんとキノベの騎馬隊部門もこの条件に乗って来た。山髙屋に費用を持たせての実戦演習に加えて、他家との連携訓練が魅力だそうだ。
キノベの騎馬隊部門が他家と同じ条件で受け入れたのには正直驚いたが、従来の合意条件は、山髙屋と陸運部門とのことであって、騎馬隊部門は他家と同じ条件の方がよいという、トウラクの英断だそうだ。やはりトウラクは懐が深い。
トノベとヤクシはそれぞれ統領または座主と筆頭重臣の2名が披露目に参加し、重臣や護衛など30名程度が来る。
伯母御どのたちは、最初は婚約発表もあるかと思い、「わらわも行く!」と言ったそうだ。しかし、サヤ姉とサジ姉が「婚約発表はないから私たちは披露目に出ない。」と告げると、「なぜだ!」と息巻き、「アタルの意向だ。」と言った途端にフリーズして、俺の予想通り「そう言うことなら此度は遠慮する。」と言ったそうだ。
サヤ姉から聞いた動の伯母御の反応と、サジ姉から聞いた静の伯母御の反応が、あまりにもシンクロし過ぎていて驚いた。双子とはこういうものなのだろうか?
キョウちゃんズに聞くと、「「どうやろ?」」とシンクロした答が返って来た。どうやらそうらしい。笑
タテベは統領と世継ぎのシルドどのが参加する。披露目まで1ヶ月あるので、タテベ副拠を任せている世継のシルドどのを、副拠のナワテから呼び寄せると言う。
シルドどのはホサキの腹違いの兄だ。会ったことはないが若くしてタテベ副拠を切り盛りしているというので、切れ者なのだろう。それに重臣や護衛が供をして、やはり30名程度だ。
キノベは統領とトウラクが参加する。タヅナがこの話をした途端、キノベどのは、「トウラク、供をせよ。」と言ったそうだ。俺が心配するまでもなかったな。
トウラクは世継としての信頼を獲得しつつある。タヅナによると、トウラクは騎馬隊の運営を腹心数名に任せ、自分はハミどのの下で陸運を学び始めたそうだが、初日から、陸運の隊員に対して下手に出て、教えを乞うた。これは、隊員を困惑させたが、同時にハミどのを感心させた。
俺は陸運の隊員に同情するな。世継=次期統領に、下手に出られて教えを乞われたのだ。さらにそれが、あの騎馬隊のトップなのだから動揺するなという方が無理だ。笑
トウラクは、陸運を一から学ぶと言ってたからまあ当然なのだろうがな。トウラクは、短慮な一面もあるが、実は懐が非常に深い。頑なになっていたことでも、腑に落ちれば、さっと切り替える柔軟性がある。これは非常にいい資質だ。
キノベどのも、ようやくトウラクの良さに気付いたのだろう。
一方、ハミどのは、トウラクの長所に早々に気付いていた節がある。キノベでは、ハミどのが一番の切れ者だ。いや、油断がならんから、曲者というべきか。
ハミどのは他家に遣らずに、トウラクの腹心で切れる奴を娶わせた方がよかろうな。今度、トウラクにそっと耳打ちしておこう。やはり重臣と護衛が30名程度来るらしい。
それから別件だが、セプトの特注馬車は完成までおよそ1ヶ月だそうだ。随分早い。かなり気合を入れていると見える。
一方、取り仕切る山髙屋はやる気満々だ。
披露目の日取りは、三の叔父貴の情報通り、1ヶ月後の師の月中旬。場所として、総本店近くの東都で一番大きい宿屋を押さえており、各家の控室も3室ずつ別々に確保していると言う。
武家は、それぞれ帝家からお召しがあったときに本陣とする定宿が、帝居近くにあるから、そこに泊まることになるが、当日は重臣や護衛の供を引き連れて会場の宿屋に入る。どこも30名程度だから3室ならいい線だ。さすが社長、読みが鋭い。
ユノベは統領代理の代表として二の叔父貴と、次期統領である俺のふたりで行き、三の叔父貴と末の叔父貴は本拠で留守番してもらうことになっている。
俺は流邏石で飛ぶつもりだから、二の叔父貴にもそうさせて、面倒な護衛は抜きでいいかと考えていた。
しかし、二の叔父貴が、少しは護衛を連れて行かんと、ユノベの沽券に係わると言うので、嫁たちを護衛として連れて行くからそれで十分だろと言ってやった。
婚約発表は別の日にするから披露目には出さんが、実家から来る面々には会わせるつもりだ。
二の叔父貴も、三の叔父貴や末の叔父貴と協議して、嫁たちなら護衛として十分だし、東都までは流邏石で飛ぶからいいかな。と妥協し掛けていたのが、他家の状況を聞くと、3人揃ってユノベは50名連れて行くと言い出した。
「まったくそんなとこで張り合ってどうするのだ!それにユノベは盟主なのだから、他家を立てて少なくせよ!」
と反論し、重臣2名、護衛9名の計11名で納得させた。それを二の叔父貴が馬車で引き連れて行く。
最終的に、供の11名に二の叔父貴と俺、そして護衛役の嫁たち7名を加え、総勢20名で行くことになった。
結局、この調整は夜まで掛かってしまった。俺と3人の叔父貴たちとの評定は、午後の稽古が終わってから始まり夕餉で中断、夕餉後に再開してそれからも、結構かかって、ようやく話がまとまったのは夜の21時だ。
その後、白湯へゆっくり浸かり、部屋に戻ったのは遅い時間だった。今日はサヤ姉の日だ。そう言えばサヤ姉と1対1は初めてだな。
「アタル、随分掛かったわね。」
「そう、だから我慢の限界。」
俺はサヤ姉の口を塞ぐ奇襲に成功し、その流れで押し倒す。双丘と秘所の多方面同時攻撃を行って、一気に攻め立てた。
肉食のサヤ姉も当然負けてなどいない。強烈な逆襲に遭い、俺の多方面攻撃とは対照的に、マイドラゴンへの一点集中攻撃、大将首狙いである。
一騎討さながらの激しい営みとなったのだが、こういうのも悪くない。というか、こっちの方が好きかもしれない。
もちろん妊娠のリスクを避けるために本番はなし。あー、例のアレ、早く開発されねーかな。
設定を更新しました。R4/5/8
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://ncode.syosetu.com/n2050hk/
カクヨム様、アルファポリス様にも投稿します。




