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射手の統領058 同盟と提携の使者の帰還

射手の統領

Zu-Y


№58 同盟と提携の使者の帰還


 目覚めると隣ではアキナがまだ眠っていた。寝顔がかわいい。この無防備さを見ていると、あの的確な決断を迅速にするアキナと同一人物とは思えない。まったくこのギャップは何なのだ!などと考えていると、アキナが目を覚ました。

「おはよう。」

「おはようございます。ひょっとして寝顔を見られましたか?」

「うん。」

「もう、恥ずかしいじゃないですか。」真っ赤になるアキナ。かわいい!

 起きると、昨夜のままなのでふたりとも裸だ。アキナは毛布を纏ってさらに真っ赤になった。もう隠す間柄でもなかろうに。


 昨日、あれだけひどかった筋肉痛はほとんど収まっている。さぁ、昨日の分も取り戻すぞ。

 朝餉で皆と合流し、今日の予定を確認する。アキナは弓の稽古、俺たちは馬の稽古だ。俺は一昨日に引き続き、タヅナとマンツーマンで騎射の稽古をする。他のメンバーは外乗だそうだ。ただし、サヤ姉は刀、サジ姉とキョウちゃんズは杖、ホサキは槍を持って行き、馬上での得物の取り扱いの練習をする。


 俺の今日の相棒は、午前中はヴァイス、午後はダークで、どちらも素直ないい馬だった。

 駈歩の騎射ではもう的を外さない。というかほとんど図星を射抜いている。俺の精密狙いは、亡き親父の直伝だからな。と言っても、流鏑馬練習用のコースなので的は目の前なのだ。

 ちなみに、流鏑馬は馬を疾駆させて、3つの的を続けざまに騎射で射る速射の技なので、的が近いのである。


 そのうち、外乗で草原に行き、騎射での遠矢である笠懸や、騎射での動の的である犬追物をやることになるだろう。

 犬追物をやるには、脚だけで馬をコントロールする技や、走る馬上で体をひねって進行方向の馬手側を射る技術も身に付けねばならぬ。


 夕刻、三の叔父貴と末の叔父貴を乗せた外交用馬車が帰って来たので、二の叔父貴と俺で、ふたりの首尾を聞くのに表座敷に行った。統領が内定してから、俺が主の座の中央に座り、俺を囲むように叔父貴たちが座るようになっている。


「ではまずキノベの方から聞こうか。」二の叔父貴が切り出す。

「うむ。結論から言うと同盟は予定通り結ぶことができた。キノベはすでに婚姻同盟関係にあるとの認識だ。」末の叔父貴が答えた。

「タヅナが来てくれてるおかげだな。それにギャロとロップも来てくれているしな。」

「アタルよ、お前の手柄だぞ。キノベどのも、ハミどのも、トウラクどのもお前をベタ褒めだ。」

「え?なんでだ?」

「自覚がないのか?アタルは、それまで頑なだったトウラクどのを改心させたそうではないか。」


「改心というのはちょっと違うな。

 陸運のことなら、トウラクはもともと重要性を認識していたと思うぞ。ただ、トウラク旗下の騎馬隊の活躍の場がない反面、ハミどの旗下の陸運ばかりが脚光を浴びていたのが、トウラクには面白くなかっただけだろうよ。

 それに、キノベどのがトウラクに発破を掛けるつもりで、ハミどのを当て馬に使ったのが逆効果だったのだろうな。

 トウラクは、騎馬隊が軽んじられてると思い込んで、意地になってただけだ。」

「その意地になってたトウラクどのの気持ちを解したのだろう?キノベどのが大層感謝しておったぞ。」

「ふーん、キノベどのは、こちらに都合よく受け取ってくれたのだな。」


「トウラクどのは、アタルに、『俺はユノベの統領になる。馬が合うトウラクがキノベを継げば、心強い。』と言われて、それまでの陸運に対するわだかまりが吹っ切れたと言っていたぞ。」

「それは言った。実際にあいつとは馬が合うのだ。」


「ハミどのは、アタルが、ハミどのを無視してトウラクどのを立てたことで、一気にトウラクどのの心を掴みつつ、ハミどのにだけ、事前にそのことを告げていた周到さを褒めておった。

 それから、キノベどのの前で、堂々とタヅナといちゃついたそうだな。よくやるわ。まったく。」

「いや、あれは反対しても無駄だと言外に告げたまでだ。」

「ハミどのは、その強かさをえらく気に入っておる。キノベのためにも、アタルを敵にはできないと言っていた。」

「まぁ、いずれにせよすんなり同盟が結べてよかったではないか。」二の叔父貴が締めくくると一同が頷いた。


「さて、次は山髙屋との提携話だ。」二の叔父貴が、三の叔父貴へ報告を促した。

「こちらもアタルが詰めて来た条件の確認のみだな。

 販路の護衛にユノベの者を、護衛代を取らずに、食費と宿泊費のみで派遣する。見返りに、平時は物資の調達と、戦時には軍資金の提供。物資の調達には、代金をきちんと支払う。戦がなければ軍資金の提供は不要。

 この条件で山髙屋どのは大いに乗り気だ。本当に護衛の手数料はいいのか?と聞いて来おった。」

「もちろん要らぬ。こちらとしては、家来どもの実戦訓練だからな。飯代と宿代を山髙屋に持たせて実戦訓練ができるのだから、一石二鳥よ。」


「アタルよ、山髙屋どのに、物資調達の際は、ちゃんと儲けが出る範囲で少しは負けてくれと言ったそうだな。」

「ああ、そう言った。」

「山髙屋どのは、護衛代が要らない上に『こちらの儲けをしっかり出しつつ、少しは負けろ。』と頼まれては、負けない訳にはいかない。と苦笑いしておったぞ。」

「こちらも得するが、山髙屋も得する。いい提携ではないか。

 ところで、叔父貴どのたち、最初のうちは腕利きを選りすぐって派遣してくれ。山髙屋の商隊にユノベの旗も立ててな、ユノベがついていることを世間に知らしめるのだ。その上で、最初のうちに盗賊どもを徹底的にやり込めれば、そのうち噂が広まって、山髙屋の商隊には手を出さなくなるだろうよ。」

「うむ。それはよき思案だの。」


「それから、トノベ、ヤクシ、タテベをこの条件で護衛に誘ってみるが、キノベは山髙屋と以前から陸運で契約が成立しているから誘わないでおく。キノベと山髙屋の契約に横槍を入れることになるからな。

 護衛を誘った他家から応じるところが出れば、家来の実戦訓練に、他家との連携訓練もできる。」

「なるほどのー。そこまで考えておったのか。アタルは知恵者じゃの。」三の叔父貴はしきりに感心している。


「そう言えば、昨日の夜にアキナとふたりで山髙屋どのに別件で会って来た。その折、山髙屋どのは、三の叔父貴どのに何か提案をしたと言っていたぞ。」

「そうそう、そのことよ。

 ユノベ、トノベ、ヤクシ、タテベ、キノベの5武家同盟に、山髙屋が提携したと、帝家から宮様を呼んで、東都で大々的に披露目をしたい。費用はすべて山髙屋で持つゆえ、他の4武家の代表と引き合わせて欲しいとのことだ。」

「山髙屋どのは流石よな。いち早く提携を商売に利用する気だな。宮様と言えば、次ノ宮殿下であろうが、山髙屋どのは次ノ宮殿下にツテがあるのかな?」俺が疑問を呟くと、三の叔父貴が応じた。

「山髙屋は帝家の御用商人でもあるから、当然ツテはあろうの。」


「叔父貴どのたち、いかが思われる?」

「よいのではないかな。」

「アタルよ、披露目の費えは山髙屋にだけ持たせてもよいものかの?」

「同盟と提携の発表だけなら、東都で一同に会して行うか、それぞれの本拠で個別に行ってもよい。ましてや次ノ宮殿下を呼ぶ必要はない。

 次ノ宮殿下を呼んで派手に披露目をやるのは山髙屋の宣伝だ。それに付き合ってやるのだから、こちらがその費えを持つ必要はない。それに、こちらも出すと言っても山髙屋どのは受け取らんだろうな。」

「それもそうじゃな。」

「では嫁たちをそれぞれの実家に派遣して、諸家の意向を聞いてみるか。三の叔父貴どの、各家から披露目への参加人数、護衛も含めた一行の規模、開催時期についての情報は?」

「うむ、次ノ宮殿下と同じ主賓席へ座るのが各家2名、護衛も含めた一行の規模は各家30名程度を見込んでいるようだの。開催時期は1ヶ月半後の師の月中旬だそうだ。」

「各家2名か。叔父貴どのたちからはどなたが行かれるのだ?」

「「二の兄貴でよかろう。」」

「ではわしが行く。」二の叔父貴が頷いた。

「三の叔父貴どの、末の叔父貴どの、お使者の任、大儀であった。」

 俺はその場を締めくくった。


 夕餉の席で風呂上がりの嫁たちと合流した。キョウちゃんズが、一緒に風呂に入れなかったと文句を言っている。どうせ、夕餉の後に俺が入るとき、一緒に入って来るくせに。笑


 夕餉を摂りながら、三の叔父貴がもたらした、山髙屋どのからの披露目の提案を話した。アキナが呆れたように呟く。

「まったくパパったら。早速、提携を宣伝に利用する気なのです。次ノ宮殿下まで利用するなんて!」

「まぁ、いいではないか。来るか来ないかの判断は次ノ宮殿下が下すのだからな。」

「大々的なお披露目なら、しておいて損はないわね。サジ。」

 こくり。「いい…機会…かも…。」

「そうですねぇ。他家の皆様とお会いできるのは、楽しみですぅ。」

「私も賛成だが、父上が何と仰るかだな。」


「そうだな。そういう訳で、明日、皆には実家に飛んでもらって、それぞれの御父上どののご意向を聞いて来て欲しい。参加するとなると護衛なども必要になるからその規模もな。

 叔父貴どのたちとも協議したが、ユノベは、俺と二の叔父貴が代表で参加する。これも伝えてくれ。」

「明日、姉さんたちが実家に行かはったら、うちらはどないするの?」

「俺とお留守番だな。」

「「やったー。」」


 夕餉後の風呂には、やっぱりキョウちゃんズがついてきた。ついてきたのがキョウちゃんズだけということは、ある意味試練だ。ロリ疑惑の…。

 脱衣所にて、…マイサンよ。なぜドラゴン化するのだ?早々に、試練に挫けてしまった。

 もはや疑う余地はない。キョウちゃんズに反応している。しかし、天に誓って言うが、俺は欲情していない。泣


 アキナとタヅナとの婚約を発表した宴の後に、アタルが酔い潰れてしまった夜、大人嫁たちから嫁認定されて嫁会議の正式メンバーとなったキョウちゃんズは、サヤサジ流アタルのドラちゃん調教法を伝授されている。これにより、それまでキョウちゃんズに見向きもしなかったアタルズドラゴンが、キョウちゃんズにすっかり懐いた。

 何となくしかその事情を知らない、というか、真相を知りたくなくて眼を逸らしているアタルは、キョウちゃんズでドラゴン化する事実を垣間見て、自分にロリコンの気があるのではないかと秘かに心配するようになってしまったのである。

 まったくばかげた話だが、本人にとっては深刻なのだ。


 入浴中の日課である頂マッサージ中も、ドラゴン化を見て上機嫌なキョウちゃんズから、無邪気なジャブを連打されていた。

「今夜もドラちゃん登場やー。」ニマニマ。

「アタル兄、うちらに反応しとるんやろ?」ニマニマ。

「…いや、違うと思うんだが。」

「ここんとこ毎晩変身しとるよー。」ドヤドヤ。

「ほれほれ、認めて楽になりなはれ。」ドヤドヤ。

「くっ。」


 そうだ!こう見えてもキョウちゃんズは13歳だ。幼児体型に惑わされたが、俺のたった2コ下ではないか。それにふたりは将来、俺の嫁になる。つまり、このふたりに反応してもロリコンとは言えないのではないか?

 うん、そうだ。そう言うことにしよう。見ず知らずの少女に反応したら、そのときは甘んじてロリ認定を受け入れようではないか。

 俺は吹っ切れた。というか無理やり吹っ切った。


 風呂を出てキョウちゃんズと別れ、自室に戻ると、タヅナがいた。今日の担当はタヅナだ。ベッドに座ってモジモジしているタヅナをそのまま押し倒す。

 今日は先攻だ。指と舌で栗色の頂から攻略し、全身を余すところなく…、そして最後は痙攣に導いた。その後、復活したタヅナからのご奉仕だ。まだたどたどしいのはアキナと同様に新鮮だ。


 いつも通り、妊娠回避のために本番は抜きである。あー、例のアイテム、早く開発されないかなー。

設定を更新しました。R4/5/1


更新は月水金の週3日ペースを予定しています。


2作品同時発表です。

「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n2050hk/


カクヨム様、アルファポリス様にも投稿します。


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