表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/183

射手の統領051 アキナとタヅナのセプト加入

射手の統領

Zu-Y


№51 アキナとタヅナのセプト加入


 うーん、昨日はちょっと呑み過ぎたか?でも楽しい酒だった。トウラクはまだ眠っている。

 ん?トウラクの奴、テントを張ってやがる。ちくしょう、負けた。泣


 そのうちトウラクが起きた。

「トウラク、おはよう。」

「おう、アタルか。おはよう。いい朝だ!」トウラクはシャキッと飛び起き、体を動かした。

「馬の世話に行くが、一緒に来るか?」

「おう。」

 ふたりで厩舎に行き、餌やりやら、放牧地への誘導やら、俺も見様見真似で、ひと仕事こなした。キノベの家来衆もあちこちで馬の世話をしている。ハミやタヅナもいる。総出だな。


 キノベの朝餉に俺も呼ばれた。キノベ統領、奥方、ハミ、トウラク、タヅナの統領一家に、俺を加えて6人の朝餉だ。タヅナは俺の横にぴったりくっついている。御父上へのアピールだろう。笑

 ここで、昨日、表座敷には出て来なかった、キノベ統領の奥方、つまりタヅナの御母上と初めて顔を合わせた。挨拶を交わしたが、無口で微笑んでいる、おとなしい感じの人だ。


 当たり障りない会話を交えがら、朝餉の席は和やかに進む。すると、トウラクが切り出した。

「父上、俺は今日から姉上の陸運も手伝うことにします。」

「なんだと?どういう心境の変化だ?」

「昨日、アタルといろいろ語り合いましてね。アタルはユノベの次期統領だけあって視野が広い。将来もアタルと対等に付き合うには、騎馬隊と陸運のコラボを進めるべきだという結論に達しました。俺は騎馬隊しか知らないので、姉上の下で陸運も学びます。」

「トウラク、よくぞ申した。

 アタルどの、忝い。よくぞトウラクを説得してくれた。」

「説得ではなく、俺の考えを聞かれたので、答えただけですよ。トウラクがこの結論に達したのは、トウラクが熟慮した結果です。」


 ニヤニヤしながらハミがキノベ統領に話し掛けた。

「父上、アタルどのは昨日父上が仰ってた最後の条件を満たされたのではありませんか?」

「そうだな。アタルどの、ここは朝餉の席ゆえ、内々のこととして聞いて欲しい。後で表座敷にて正式に話すが、ユノベとの婚姻同盟、キノベとしては願ってもないこと。末永くよろしくお願い申す。」

「これはありがたいお言葉。舅どの、こちらこそよろしくお願いします。」

「あーあ、とうとう妹に先を越されたわ。」朝餉の席は6人の笑いに包まれた。


 朝餉の後、改めて表座敷に行く。キノベ統領が主の座。左にトウラク、右にハミ。そう、席次が変わっている。そして、その下座に重臣3名が居流れている。

 俺とタヅナはふたり並んで表座敷中央に、統領と対面する形で座った。


「ユノベとの同盟の件、受け入れようと思うがどうか。」キノベどのが形式的に重臣たちに諮った。

「依存ありません。」トウラクが真っ先に答え、ハミと重臣3名も頷いた。

「ではアタルどの、同盟締結の方向で話を進めたい。」

「されば、同盟の正式な申し入れとして、統領代理のひとりをユノベからキノベへ派遣致します。」

「ご配慮、痛み入る。

 さて、アタルどのの馬の技の取得であるが、トウラクが陸運を補助することになったゆえ、アタルどのへの技の教授を担当できなくなった。

 アタルどのは、ユノベの次期統領ゆえ、家来には任せられぬ。タヅナをトウラクの後任に付け、ユノベに派遣したいと思うがいかがであろう。」

「願ってもないことです。」

「ではタヅナ、そのままアタルどののもとで婚約を発表せよ。今後、ミーブへ来るときは里帰りと心得よ。」帰るとき、ではなく、来るとき、と言ったな。

「父上ぇ、お世話になりましたぁ。」タヅナは深々と頭を下げる。


「それと、馬の技の教授と、弓の技の取得のために、キノベの者を2名、それと、アタルどのの旅の馬車用の馬4頭を、ユノベへ派遣したい。この4頭で馬の技を学べば、旅にも都合がいいと思うが、いかがであろう。」

「ご配慮ありがとうございます。ぜひお願いします。

 ところで、その旅の馬車ですが、キノベ陸運の製造部に発注したいのですがお願いできますか?」

「ハミよ。請け負いは可能か?」

「もちろんです。喜んで造らせて頂きます。およそのイメージはタヅナから聞いております。」

「ではアタルどの、この後、ハミと馬車の設計について詳細を打ち合わせ、その後、タヅナとともにユノベへ連れて行く馬4頭を選んでくれ。4頭は、派遣する2名に連れて行かせる。テンバまではおよそ3日の行程となろう。」

「承知しました。」


 表座敷から出ると、トウラクが話し掛けて来た。

「アタル、馬の技の教授を続けられなくてすまない。」

「いや、トウラクが統領になるために必要なことだ。気にするな。それに、舅どのが技の教授の後任をタヅナにして、ユノベへ派遣してくれると言う。何とも粋な計らいじゃないか。トウラクが口添えしてくれたのだろう?」

「うむ。途中で教授を投げ出す俺のせめてもの詫びだな。タヅナをよろしく頼む。じゃじゃ馬だぞ。」

「兄上ぇ!」タヅナがむくれて、皆が笑う。


 俺はトウラクと別れ、タヅナとハミと一緒に製造部に行った。設計担当に希望を伝え、1両目の居住車両と、2両目の倉庫車両を、アイディア通りに設計してももらった。馬を繋ぐ轅に幌を掛けられるようにするアイディアと、2両連結にして、小回りが利き、緊急時には2両目を切り離すアイディアは、絶賛された。

 特注馬車と、馬4頭の費用で大金貨7枚になった。格安だ。身内価格だな。


 その後、牧場へ行き、馬車を曳く馬を4頭選んだ。馬車を曳くので、がっちりした大型の馬がよいだろう。漆黒の青毛ノアール、純白の白毛ヴァイス、艶のある暗色の黒鹿毛ダーク、濃い鈍色の葦毛セールイ、どれも3歳の牡馬で、仔馬の頃から一緒に育てられているので仲がいい。牡馬にしては気性がおとなしく人懐こいので、比較的扱いやすいそうだ。


 昼餉を摂ってから、流邏石で東都に飛んだ。

 そのまま山髙屋東都総本店に行き、アキナを訪ねると、引継ぎがもうすぐ終わるという伝言が来た。俺とタヅナはそのまま東都総本店を見て回って時間を潰した。ちょっとしたデートだ。笑


 程なくアキナが引継ぎを終えて合流した。社長に挨拶したかったが、後妻とマスマを総本店に迎える準備で出掛けており、帰りは今夜だと言う。

 引継をすべて終え、俺が迎えに来たらそのまま行ってよいという話になってるそうなので、また改めて挨拶に来ることにして、3人で冒険者ギルドへ向った。もちろん、アキナとタヅナをセプトに加えるためだ。


「チナツさん、このふたりを冒険者登録してセプトへ加えたい。」

「あらアタルさん、他のセプトの皆さんはせっせとクエストをこなしているのに、リーダーは女漁りですか?」

「おい!なんちゅーことを言うんだ。人聞きが悪い!」

 まったくてへぺろじゃねーっつーの!


 しばらくしてふたりの冒険者カードができて来た。職業は商人と騎士。当然Gランクである。

「ふたりが加入したのでセプトのパーティランクはDランクに下がります。」

「アタル、申し訳ありません。」

「私たちのせいでぇ、セプトのランクがぁ、下がってしまったわぁ。」

「パーティランクは構成メンバーのランクの平均だからな、新人を加えれば下がるのは当たり前だ。気にすることではない。それにふたりのランクはすぐ上がる。」

「普通はそう簡単には上がらないんですよ。セプトが異常なんです。自覚してます?」

「そうなのか?でもそのセプトに入るんだからすぐに上がるさ。」

「「頑張ります(ぅ)!」」


 俺はふたりに身代わりのペンダントを渡した。これは、登録者の受けたダメージを肩代わりし、肩代わりしたダメージが登録者の最大体力分に達すると砕け散るという優れモノだ。その分、金貨5枚と値は張るがな。ふたりは大喜びだ。


 ギルドを出て装備屋へ向かった。

 アキナの装備は、商人の服、もみ手の手袋、普通の靴、収納腕輪、身代わりのペンダント。値切の算盤、巫女の幣束、鑑定の眼鏡は、普段は収納腕輪に仕舞っている。頭部の防具がないので鎖鉢金を購入し、普通の靴は疾風の靴に買い替えた。

 タヅナの装備は、騎士の制服、ヘルメット、馬術のグローブ、拍車のブーツ、収納腕輪、身代わりのペンダント。得物の無銘の薙刀、無銘の刀剣、無銘の長槍は、普段は収納腕輪に仕舞っている。一番得意な獲物は薙刀というので、無銘の薙刀を偃月の薙刀に買い替えた。


 ふたりの装備を整えて、3人でユノベ本拠館に飛んだ。そのまま表座敷で、改めて叔父貴たち3人にアキナとタヅナを引き合わす。

「叔父貴どのたち、山髙屋のアキナ嬢と、キノベのタヅナ姫だ。」

「久しぶりだの。よくぞ参られた。」

 ふたりは、商都への旅の途中でユノベ本拠館の湯殿に立ち寄っており、そのときは旅の仲間として叔父貴たちに紹介している。

「「よろしくお願いします(ぅ)。」」


「ふたりとも、今日からユノベで暮らすので館に部屋の用意を頼む。」

「それはもう手配済みじゃ。」

「アタルよ、家来どもへの披露は明日でよいな。触れを出すぞ。」

「流石、叔父貴どのたち。手回しがよいな。披露の宴も明日でよい。

 それと、すまんが、叔父貴どのたちので、山髙屋とキノベへの正式な使者に立ってもらいたい。山髙屋との提携条件は先日話した通り。

 キノベからは馬の技の教授と、弓の技の取得を兼ねて、ふたりが明後日には、馬4頭を連れて来る。しばらく滞在するので、家来たちの宿坊にふたりの部屋と、厩舎に4頭分の馬房の用意を頼む。」


 ユノベには、当主の外出用と使者の派遣に備えて馬車がある。その馬車の曳馬と、一部の家来の流鏑馬訓練に備えて、小規模ながら馬場と厩舎もある。馬の技が苦手だった俺は、ほとんど関りがなかったが、ユノベにも馬は数頭いるのだ。


「ではキノベへはわしが行こう。タテベのときもわしが行ったからな。」末の叔父貴が名乗りを上げた。

「ではわしは山髙屋に行く。」三の叔父貴が名乗りを上げた。

 外交用の馬車に三の叔父貴と末の叔父貴が乗り込んだ。まず、三の叔父貴を東都の山髙屋総本店で降ろし、末の叔父貴がミーブのキノベ本拠へ向かう。


「ところでキノベでは七神龍攻略のための馬車を発注して来た。その馬車の曳馬4頭と合わせて大金貨7枚の費えだ。申し訳なく思うが、クエストなどをこなして、後々必ず返済する。」

「七神龍を眷属にすれば安いものではないか。」

「そうだな。神龍攻略1体につき大金貨1枚。すべて攻略すればチャラでよいと思うぞ。」

「いや、叔父貴どのたち、そこはしっかりケジメを付けたい。」

「分かった。そこまでの覚悟ならもう何も言わん。しっかり稼ぐのだぞ。」


 そこへ嫁3人とキョウちゃんズが帰って来た。

「「あー、アタル兄や。」」キョウちゃんズが猛ダッシュで飛びついて来る。ふたりのダイブを何とか受け止めた。

「もう、なんで昨日は帰って来ぃひんかったん?」

「うちら、寂しゅうて、夜に泣いてしもたんやで。」

「ああ、悪かったな。一応、伝言はしといたんだが。」

「今日は一緒に寝てな!」

「一緒に寝てくれたら、ブラ、見せたってもええよー。」

「えー、どうしようかなー、ふたりはもう大人なんだろー。ほいほいと見せちゃいけなかったんだよなー。」

「「いけずー。」」


「アキナ、タヅナ、ふたりとも実家の許可は取れたのね?」サヤ姉が聞く。

「はい。アタルがパパをぐうの音も出ないほど、やり込めてくれました。」

「ミーブではぁ、アタルが兄上をぉ、コロッと手懐けましたぁ。」

「おい、ふたりとも、人聞きが悪いことを言うな!

 それより、5人はクエストで、大活躍だったそうじゃないか。」

「キョウちゃんズの…デバフと…バフが…凄い…。」


「アタル、クエストの報酬だ。獲物の素材引取も加えて金貨3枚と大銀貨1枚になったぞ。」ホサキが金貨3枚と大銀貨1枚を差し出した。

「それは、5人で稼いだんだから、5人で分けろよ。」

「何を言っている。衣食住、流邏石に装備と、ユノベの世話になっているのだぞ。それにわれらはアタルの身内ではないか。」

「まぁそうだが。」

「そうよ。ホサキの言う通りよ。それに欲しいものがあったらアタルに買ってもらうわ。」

「今後も…馬車の…代金とか…必要に…なる…。」

 俺は金貨3枚と大銀貨1枚をありがたく受け取り、早速、叔父貴たちに返却した。


「馬車と言えば、キノベで発注して来たぞ。それから、キノベから馬車を曳く馬が明後日には4頭来るが、それで騎馬の技と御者の技を身付ける。まずは、俺と、サヤ姉、サジ姉、ホサキだ。」

「「「はい。」」」

「サキョウとウキョウも習うか?」

「「習うー。」」

「アキナは、弓の技を習得してくれ。」

「はい。頑張ります。」

 アキナは、タヅナとふたりで行商していた際に、御者の技を身に付けていたから、弓の技の取得に専念してもらうことにした。


「アタル…キョウちゃんズと…タヅナは…初対面…。」サジ姉が指摘してくれた。

「あ、そうか。

 タヅナ、サキョウとウキョウだ。商都でタヅナたちと別れた後、西都で仲間になった。サキョウはデバフ、ウキョウはバフの陰士だ。

 サキョウ、ウキョウ、このお姉さんはタヅナ。騎士で、7人いる俺の嫁のひとりだ。」

「ふたりともぉ、かわいいわぁ。よろしくねぇ。」

「「よろしゅう。」」

「そう言えばアタルぅ。嫁7人ってぇ、あとふたりはぁ、まさかこのふたりなのぉ。」

「そうだな。アキナにも、サキョウとウキョウのことは詳しく話してないから夕餉のときに、ちゃんと話そう。」


 とうとうセプトのメンバーが勢揃いした夕餉では、キョウちゃんズのことをアキナとタヅナに詳しく話した。

 オミョシ分家の出であるが、陰の術の一方しか習得できなかったのでオミョシ分家を勘当されたこと。

 その陰の術は、効果5割という信じ難い数値であること。これには流石にふたりとも驚いていた。

 さらに、ライとウズにより、ふたりは陽の術の素質があると分かったこと。

 その習得には、ふたりの陽の術の適性を持つ七神龍を俺の眷属とした上で、ふたりを抉じ開けねばならぬこと。

 ふたりを抉じ開ける以上は、男として責任を取るつもりであること。

を語った。


 キョウちゃんズには、東都から商都への旅を通してアキナとタヅナと知り合ったこと。

 ふたりからいろいろ学んだことで、七神龍攻略の旅に馬車と交易を用いることを思い付いたこと。

を話した。


 アキナとタヅナと、キョウちゃんズはすぐに仲良くなり、キョウちゃんズによって、ふたりは、アキ姉、タヅ姉と命名された。笑


 明日の動きだが、俺は、家来どもにアキナとタヅナを紹介する宴を行い、サヤ姉、サジ姉、ホサキ、キョウちゃんズの5人は東都へクエストに行くことになった。

 その後は、俺がこの2日間の5人の活躍ぶりを聞きたいと言い、サキョウとウキョウが大いに場を盛り上げながら、2日間の冒険を語った。


 夕餉の後は白湯で混浴タイムだ。待ってました、ひゃっほーい!


設定を更新しました。R4/4/17


更新は月水金の週3日ペースを予定しています。


2作品同時発表です。

「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n2050hk/


カクヨム様、アルファポリス様にも投稿します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ