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射手の統領043 東都帰還

射手の統領

Zu-Y


№43 東都帰還


 翌朝、ヌーマに向けて、廻船は黒海流を外れ、潮帆を畳んだので、廻船の揺れは収まった。

 昨日、船酔いのため、俺以外は食べられなかっためはり寿司で、皆が朝餉を済ませた後、皆で甲板に出た。11時の方向に霊峰がドーンと見える。ああ、帰って来たなぁ。と実感した。

「凄いお山やなぁ。」

「あれがフジのお山やろか?」

「そうだ。あれがフジの霊峰だ。そしてその東麓の町テンバに、ユノベの本拠がある。」


 廻船は10時にヌーマの港町に着いた。俺は流邏矢の甲矢にヌーマの港町を登録し、流邏石でユノベ本拠に飛んだ。

「あ、若、お帰りなさい。」

「おう、ご苦労。商都から東都へ海路で帰還する途中で、今、ヌーマに寄港している。廻船は明日、東都に着く。明日の夜には帰館すると叔父貴どのたちへ伝えておいてくれ。サヤ姉、サジ姉、ホサキの部屋に加えてもうひと部屋、双子の子供用の部屋を用意してくれ。それと、先々はさらに2部屋が必要となると思う。」

「承知しました。」

 俺はキョウちゃんズの分の流邏石2個を、テンバのユノベ本拠館で登録し、流邏矢でヌーマに帰って皆と合流した。キョウちゃんズに登録して来たテンバの流邏石を渡す。


 昼餉はヌーマ名物の生シラスと生桜エビの二色丼だ。生シラスも生桜エビもどちらも新鮮で旨い。山葵醤油をちょっとだけ垂らすといい。

 夕餉用に、やはりヌーマ名物の港アジ寿司弁当を購入した。山葵の茎を混ぜた酢飯を山葵の葉で包んだ山葵アジ寿司、昆布と紫蘇の香りを聞かせた昆布紫蘇アジ寿司、大場とゴマを合わせた大葉アジ寿司の三種盛だ。薬味の山葵も下ろしたてでアジ寿司を引き立てる名脇役だ。


 廻船は、昼過ぎに出航した。明日までの最終航路は、ズイ半島を弓手に見ながら南下し、先端を東にまわり込んで、ズイ半島を反時計回りに北上する。ホサキの故郷のコスカの沖を通り過ぎ、東都前湾に入り、明日の午前中には東都港に着岸する。


 ズイ半島の東で黒海流は、北の島から東北和の東沖を南下して来た親海流とぶつかり、南東へ流れて行くので、最終日の海路は黒海流に乗らない。潮帆も使わないので揺れは少ない。

 それでも出航前にサジ姉が酔止の術を掛けたお陰で皆は元気だ。


 出航後、俺は元気になったキョウちゃんズに連れまわされて、廻船の隅から隅まで一緒に探検することになった。かわいくて愛嬌があり、人懐こいキョウちゃんズは、行く先々で船員からチヤホヤされていた。こいつら、世渡り巧みだ!


 夕暮れになってようやく船室に戻ると、嫁3人は寛いでいた。キョウちゃんズが嫁3人に廻船探検の話を一生懸命語り出し、嫁3人もうんうんと根気よく聞いていたので、キョウちゃんズは満足気だ。俺はその光景を微笑ましく眺めていた。

「アタルは子供好きなのだな。」

「ちょっと…意外…。」

「そうね。ここまで面倒見がいいとは思わなかったわ。」

「サキョウとウキョウといるのは楽しいからな。」

「「おおきに。」」喜んだふたりがまとわりついて来たので頭を撫でてやった。


 夕餉に、ヌーマで買い込んだ港アジ寿司を食べながら、大人4人は宴会を始める。一昨日、サワーを試してコロッと眠ってしまったキョウちゃんズは、アルコールを警戒しており、今夜はジュースオンリーだったので、遅くまで起きていた。


 いい塩梅でほろ酔いになった俺が、ちゃぶ台でウトウトしだすと、キョウちゃんズの声が聞こえて来る。

「もう、アタル兄ったら、酔いつ潰れてしもたんか?」まだ酔い潰れてはいないぞ。

「しゃーないな、うちらが面倒見たるわ。」あらら、幼くても世話好きなんだな。やっぱ女の子だ。


 意識ははっきりしてるが、寝たふりをして観察していると、キョウちゃんズは、両脇からふたり掛かりで俺を抱え、うんしょうんしょと運んで、俺を布団に寝かせた。目が合った嫁3人は、微笑ましくキョウちゃんズを見ている。

 キョウちゃんズは両サイドから添い寝して、俺を寝かし付けると言っていたのだが、自分たちが先に眠ってしまった。笑


 ふたりを起こさないようにそっと起き、嫁3人と合流して、もう少しの間、4人で呑んだ。

 夜も更けた。そろそろ寝るか?おやすみのキスと言う名目で、俺は嫁3人の唇を貪った。当然マイサンはマイドラゴンに変身していた。


 翌朝、何かがもぞもぞするので眼が覚めてしまった。ん?キョウちゃんズが布団に潜り込んで来てるのか。

「「おはようさん。」」あ、またかわいいスキルを発動している。

「ああ、おはよう。」

「アタル兄、おめざちゅー。」了解。

「あー、うちもー。」了解。


 ふたりがとろんとしている。あ、しまった。昨夜の流れで、嫁3人へのキスと同じ勢いでやっちまった。

「なんか入って来よった。」ごめんなさい、舌です。

「こないだのより、なんやごっつかった。」ごめんなさい、吸いました。

「ごめん、ふたりがかわいかったから、つい恋人用のキスをしちゃった。」

「「恋人用て!」」ボンッ&真っ赤っか×2。


 朝餉は船の食堂で摂った。朝定食だ。船は東都前湾に入っており、間もなく桟橋に着くだろう。3泊4日の船旅が終わる。俺は全然船酔いしなかったこともあり、船旅がえらく気に入ったのだが皆はどうだろうか。


 そして、東都に着いた。まずは冒険者ギルドだ。ギルマスのタケクラに首尾の報告を兼ねてお礼を言いに行こう。

 東都ギルドに着くと、そこで流邏石2個を登録して、サキョウとウキョウに渡した。


 ギルドに入るとチカラワザが呑んだくれて騒いでたが、俺を見るなりシュンとしておとなしくなった。コソコソと会計をしてギルドから出て行く。


 受付に行くとチナツが笑顔で迎えてくれた。

「アタルさん、お帰りなさい。商隊護衛では大活躍だったそうですね。」

「チナツさん、ただいま。一番活躍したのはサンファミのジュピだよ。はい、これ土産。」おれは西都の千枚漬をチナツに渡した。

「うわぁ、ありがとうございます!西都の千枚漬ですね。」

「うん。」

「皆さんもお帰りなさい。あら、この子たちは?」

「西都でセプトに加わったサキョウとウキョウだ。」

「「よろしゅう。」」にこやかに挨拶するふたり。


「えー、こんなに小さいのに冒険者なんですか?」

「チナツさん、見た目で判断するとはらしくないな。このふたりはこう見えても非常に優秀な陰士だぞ。」

「あ、そうですね。サキョウちゃんにウキョウちゃん、すみませんでした。」

「かまへん、かまへん。」

「うちら、ホンマに小っちゃいしな。」


「護衛の旅で、サンファミのジュピの活躍を見て、陰士の力を思い知ってな。陰士を探してたら、西都でサキョウとウキョウに出会った。サキョウはデバフの、ウキョウはバフのエキスパートだ。聖湖の蒼碧龍を攻略できたのはこのふたりのお陰だ。」

「え?もう蒼碧龍を攻略して来たんですか?」

「ああ。で、タケクラさんに報告したいんだが取り次いでくれないか?」

「少々お待ちください。」そう言ってチナツはギルマスルームに向かった。


 ほどなくギルマスルームに通され、タケクラに出迎えられた。

「まあ座れ。早々に蒼碧龍を攻略して来たそうだな。」

「ああ。タケクラさんのお陰だ。」俺はウズ鏑を出してタケクラに見せた。ウズ鏑は青く光っている。

「なるほど、蒼碧龍は水属性だから青なのだな。」タケクラはひとりで納得している。


「西都ではサンキさんによくしてもらった。紹介してくれてホントに助かった。タケクラさんによろしくとのことだ。

 そうそう、西都の土産だ。」俺は千枚漬を渡した。

「お、すまんな。西都の千枚漬か。東都ではなかなか手に入らん。」

「それから、新しい仲間のサキョウとウキョウだ。サキョウはデバフ、ウキョウはバフの陰士だ。」

「ほう、あのサキョウとウキョウか。よろしくな。」

「「よろしゅう。」」

 今、タケクラは、「あの…」と言ったな。キョウちゃんズの出自を知ってるようだな。


 その後、俺は、タケクラに請われるまま、蒼碧龍攻略の顛末を語った。意外にもタケクラが興味を示したのはキョウちゃんズだった。

「陰の術の効果が5割もあるのか?」

「そうだ。相手の力を半減し、こちらの力は5割増。サキョウとウキョウがいなければ、蒼碧龍攻略はかなり難しいものになっただろう。」

「ふたりはオミョシ分家の出だな?」

「「せや。」」


「でもなんでタケクラさんが知ってるんだ?」

「アタル、オミョシ分家の姫がふたり、未成年で冒険者になったのだぞ。ギルマス同士の情報交換では最重要連絡扱いだ。」

「では俺たちも?」

「お前たちは成人だから他のギルドには伝えていない。特別扱いする必要もないし、そもそも登録名に氏がなかったから隠したいのだろうと思ってな。サンキにだけは伝えたがな。」


「ほなら、うちらは特別扱いされてたん?」

「全然気付かへんかったわ。」

「うむ。特別扱いと言ってもせいぜい見守る程度だな。

 それにしても効果5割は聞いたことがない。オミョシは単一能力を嫌うとは言え、これだけの能力を手放すなど、常識では考えられん。」


「タケクラさん、これは極秘情報だが、ふたりは単一能力特化型ではないのだ。サキョウ。手を出せ。」

 サキョウの手の上にウズ鏑を乗せると、サキョウは青く光り出した。

「どういうことだ?」驚くタケクラ。

「サキョウには水の適性がある。だからウズに共鳴したんだ。他にも火と風の適性がある。ウキョウは、土と氷と風の適性がある。」

 俺はウズ鏑を回収した。

「ではふたりは陰陽士なのか?」

「まだ違う。」


 俺はタケクラに、キョウちゃんズが陽の術を身に付けるための条件を話した。

「なるほど、それだと当分は無理だな。」

「でも大きゅうなったらアタル兄に抉じ開けてもらうんよ。」

「で、そのままふたりともアタル兄のお嫁さんになるんよ。」

 ふたりは際どいことをシレっと言う。苦笑


「ところでサンキさんに聞いたのだが、古都の帝家宝物庫には金剛鏑があるそうだ。」

「やはりそうか。」

「ただし、譲り受けるには勅許がいる。」

「なるほど。」

「サンキさんが今上帝陛下に手紙を書いてくれて、紹介状もくれた。」

「そうか、サンキなら可能だろうな。」

「かなり位の高い公家なのか?」

「五摂家筆頭、コノエの三男坊だ。」

 マジか!五摂家と言ったら公家の最高位の家柄ではないか!しかもその中でも本家筋のコノエか。道理で帝に手紙を直接書ける訳だ。

 その後、セプトの規模拡大や、七神龍攻略の今後の計画などについて伝えて、タケクラと別れた。


 さて、この後は山髙屋へ行こう。アキナの説得が上手く行ってるといいが。


設定を更新しました。R4/3/27


更新は火木土の週3日ペースを予定しています。


2作品同時発表です。

「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n2002hk/


カクヨム様、アルファポリス様にも投稿します。


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