射手の統領180 ホムラの輿入れ
射手の統領
Zu-Y
№180 ホムラの輿入れ
俺は叔父貴たちを密談部屋に呼び、ツララの東家掌握に向けたシエンとツララの謀略が上手く行っていることを告げた。
「なるほどのう。東家の家老衆は皆、コロッと騙された訳か。」
「12歳のガキと軽んじていた分だけ、臣従を婚姻同盟にして来たことは青天の霹靂だったのだろうな。」
「そこを上手く突いたのだな。実に見事な謀略よな。」
「左様。さらにわがユノベが援護射撃をする。
末の叔父貴どの、よろしく頼む。」
「おう、任せろ。あのシエンどのを相手に対等に渡り合い、臣従を覆して婚姻同盟に持ち込んだツララどのを、うちの次期統領が非常に高く評価して『ぜひとも武家大同盟にお迎えしたい。』と申していると、大袈裟に吹きまくって来るわ。」
「それでいい。くれぐれも辞を低くしてな。」
「承知。で、いつ発てばよい?」
「ホムラどのがアーカに輿入れして、シエンとツララどのが婚姻同盟を発表してからだな。」
~~ツークオミョシ東家本拠・ツララ目線~~
ツークのオミョシ東家本拠館内の大広間では、ツララが筆頭家老からの提案を受けていた。
「御屋形様、武家大同盟へのご加盟を、西家権座主シエン様を介してお願いしてはいかがでしょう?」御屋形様…ねぇ。昨日までは新座主どのとか言ってたくせに掌を返してるのな。ま、いいけど。
「んー、そうだねぇ。でもそこまでして加わる必要があるかな?」
「何を仰います!武家大同盟に加われば東家は安泰ではないですか。」
「でもさ、シエン兄に仲介を頼んで入ってもねぇ。大同盟の盟主はユノベの次期統領でしょ?どうせならユノベの次期統領が誘って来るまで待っててもいいんじゃないかな?」
「何を悠長なことを仰せですか?」
「悠長かな?」
「悠長ですとも。武家大同盟が攻めて来たらどうするのです?武家大同盟に入ればその危惧はなくなるのですぞ。」
「ないないない。うちはシエン兄と婚姻同盟を結ぶんだよ。武家大同盟に入らなくても武家大同盟メンバーである西家の婚姻同盟相手なんだから、武家大同盟から攻められる訳ないじゃん。攻められる危険があったのは、父上がシエン兄と敵対してたときでしょ。」
「座主どの、シエン兄ではなくて西家権座主どのですよ。」
「叔母上、細かいですよ。シエン兄でもいいでしょう?叔母上だって昨日、言い間違えたじゃないですか。」後見である叔母上に対する俺のこの物言いに、家老衆がギョッとしたが…。
「ほほほ。そうでしたわね。座主どの、一本取られましたわ。」と叔母上が笑顔で流してくれた。まあこれも、叔母上との打ち合わせの上でなんだけれども。叔母上は、家老衆から絶大な信頼を取り付けているから、叔母上を軽くあしらえば家老衆は冷や汗もんだろう。それを利用させてもらっている。
家老衆め、思った通り引きつってやんの。笑
「シエン兄が武家大同盟に入らないかと言って来たら断らないけどね、俺からシエン兄に武家大同盟入りの仲介を頼むことはしないよ。後は、ユノベの次期統領が誘って来たら、そのときは入るよ。
叔母上はどう思います?」
「座主どのの御心のままに。」
「ですよねぇ。じゃあ、この話はこれで終わりね。」俺はまだ何か言いたそうな家老たちを、このひと言でぶった切った。笑
~~アーカオミョシ西家本拠・アタル目線~~
それから10日が経ち、シエンとホムラどのの婚姻の披露目に、俺とキョウちゃんズが呼ばれて来ている。
オミョシ東家からは、海路を使って、ホムラどのに随行して来たシエンとキョウちゃんズのお母上と筆頭家老。当主である座主のツララは、この後、流邏石で飛んで来る。
キノベからはトウラク、タテベからはシルド。
なお、側室との婚姻と言うことでエノベのお頭は来ていない。しかし、正妻のエイどのは甲斐甲斐しくホムラどのの面倒を見ていた。できた女性だ。
シエンがホムラどのと介添のエイどのを連れて俺たちのテーブルに挨拶に来た。
「アタル、シルド、トウラク、過分な祝儀、おおきに。」俺たちは、大金貨1枚を祝儀に包んでいた。
「何を言う。水臭いことを言うな。」
「そうだ。俺たちは義兄弟の契りを結んだ仲ではないか。」
そこへ流邏石でツララが飛んで来た。
「姉上、シエン兄、おめでとうござりまする。」
「おう、ツララか。よう来てくれた。
紹介するで。俺の義兄弟の、タテベのシルドとキノベのトウラクや。」
「これはお初にお目に掛かります。オミョシ東家のツララです。
それからアタルどのもお久しゅうございます。」ツララは俺たちに、屈託もなく頭を下げて、満面の笑みを浮かべた。
「これはこれは、東家座主どのにはご丁寧なご挨拶、痛み入る。タテベ次期統領のシルドでござる。」
「俺はキノベの次期統領、トウラクだ。よろしくな。」
「ツララ、久しぶりだな。」俺はツララと握手した。
それから披露目の宴が始まった。ツララは早々に新婦親族席を抜けて、俺たちの席に来て一緒に呑んでいた。
「おい、ツララ、お前はガキかと思っていたが、行ける口か?」トウラクが遠慮なく聞いている。
「それ程でもありませんが、シエン兄とはたまに呑んでますね。」
「シエンに付き合って呑んでたのか?それはまた凄いな!」シルド魂消ている。実は内心、俺も魂消たけどな。
「大したことはありませんよ。シエン兄との呑み比べでは大抵負けてます。勝ったのは2~3回ですね。」
「勝ったこと、あるのかよ!」トウラクが絶句していた。トウラクは何度かシエンに潰されている。まだ勝ったことはないはずだ。笑
シルドもトウラクも俺も呑める奴には一目置く。披露目が終わる頃には、酔った勢いで、シルドもトウラクもすっかりツララを対等な立場として認めており、俺たちは義兄弟の契りを結んでいた。
「いや、これはとんだ大型新人が現れたな。」
「まったくだ。齢12にして酒豪とは…。末恐ろしいな。」
「シエンもよく呑むからな。酒豪はオミョシの血筋なのかな?」
「そう言う訳ではないと思いますよ。」
「おい、アタル。この小気味いい小僧を武家大同盟へ誘え。そしたらまたちょくちょく一緒に呑めるではないか。」トウラクよ、武家大同盟は呑みサーではないのだぞ。
「俺もツララが気に入った。アタル、誘え。」シルド、お前もか!
「まあ元々誘う気ではあったがな。
ツララ、帰ったら末の叔父貴どのをツークへ遣わす。そのつもりでいてくれ。」
「アタルどの、承知しました。」
「ツララ、われらは義兄弟の契りを結んだのだ。敬称と敬語は不要だ。」とトウラクが言うと、
「アタル、承知した。
シルドもトウラクもよろしく頼む。」と、ツララが応じた。
「「応!」」
ちなみに後で聞いたことだが、シエンに勝った2~3回は、シエンがトイレに立った隙に、シエンの徳利に度数の高い焼酎を注ぎ足し、自分の徳利は水に入れ替えていたとのことだ。
「それはずるい。」と言うと、ツララは澄ました顔で、
「子供だった僕と呑み比べをするシエン兄が悪いんですよ。ハンデと言うやつです。」と言い切って微笑んだ。意外と策士である。笑
それから二次会に流れて、新郎のシエンも含めて俺たちは痛飲した。
「おいシエン、いつまでも俺たちと一緒でいいのか?今宵は新婚初夜であろうが?」と、トウラクが気遣ったのだが…、
「そんなん、ホムラがアーカに着いた昨夜のうちに済ませてるがな。」
「相変わらず手が速いな。」と、シルドが呆れている。
「まあ、ホムラのことは散々待たせたよってな、いち早よう女にしたったんや。なんやかんや言うて紆余曲折したさかい、ホムラは嬉し泣きしとったで。」おい、こら。ぶっちゃけてんじゃねぇぞ。苦笑
「シエン兄、ありがとうございます。姉上もシエン兄と結ばれてよかった。これで姉上は尼にならないで済みます。」ツララの奴、人間ができてるなぁ。
「応。尼になど、させるかいな。」
しこたま呑んだ翌朝は、当然のことながら二日酔いである。俺もシルドもトウラクもツララも、オミョシ西家の別々の客間で寝かされていた。ちなみに俺の両隣はキョウちゃんズである。
キョウちゃんズによると、シエンは夜中まで俺たちと呑んで、俺たちをそれぞれの客間に運び込んでから、自室に戻って行ったそうだ。あいつ、へべれけになった後、初夜の務めを果たしたんだろうか?
二日酔いの気持ち悪さと戦いながら、朝餉を摂っていると、俺と同じく二日酔いでしんどそうなシルドとトウラクがやって来た。
その後、すっきりした表情のツララが来た。どうも二日酔いではないらしい。まじかよ!いや、途中から水に入れ替えていたのかもしれんな。
そして両横にエイどのとホムラどのを伴ったシエンがやって来た。
「おはようさん。」やめてくれ!頭に響く。
「「「ああ。」」」二日酔いの俺たち3人組が同様の辛そうな返事をする中、ツララだけが「おはようございます。」と元気に返していた。やめてくれ!頭に響く。
「何や、二日酔いかいな。」
「シエン、お前は大丈夫なのか?」
「ん?二日酔いか?俺は大したことあらへん。実は昨夜…いや,もう日が変わってたさかい、今日やな。皆を部屋に送った後にな、風呂で汗流してアルコールを抜いてな、それからたっぷりとお勤めを果たしやんや。」
「シエン、何てこと言うの!」ホムラどのが真っ赤になった。なるほど、お勤めと言うのは…。笑
それにしてもホムラどのは、いつのまにかシエン呼びになっているのな。以前はシエンを権座主様と呼んでいた。
シエンが、権座主様はこそばゆいから、前の様にシエンと呼べと言っていたが、ホムラどのは、東家が西家に臣従しているうちは権座主様と呼ぶと言ってたっけ。両家が対等に戻ったから、呼び方も元に戻した訳か。
「今宵はエイやでー。」
「シエン様!皆様の前ですがな。自重しとくなはれ。」エイどのも赤くなった。シエンめ、わざとやってやがるな。苦笑
「シエン、ちょっと来い。」
「何やねんな。」
俺はシエンを伴って部屋の隅に行き、小声でコソコソ話を始めた。
「ふたり同時にかわいがってやれよ。」
「え?いきなり3Pかいな?それはちょっと…。」
「俺はサキョウとウキョウとはいつも3人で楽しんでるぞ。」
「な、なんやて。」
「もちろん他の嫁たちともな。嫁が8人もいると毎晩ひとりでは、嫁たちを待たせてしまうのでな。」
「毎晩ふたりずつかいな。」
「まあな。」昨日飲み負かされた分、エロ話で逆転だ!
「むむむ。」
後日聞いた話だが、この晩、シエンは3Pデビューをしたそうな。笑
リアルが忙しくなり、執筆の時間を十分に取れませんので、今回の投稿でしばらく休載します。落ち着いたら必ず再開します。
以下の2作品も合わせてよろしくお願いします。
「精霊の加護」https://ncode.syosetu.com/n2050hk/
「母娘丼W」https://ncode.syosetu.com/n9708if/
カクヨム様、アルファポリス様にも投稿します。