射手の統領179 オミョシの東家始末と東西両家の結束
射手の統領
Zu-Y
№179 オミョシの東家始末と東西両家の結束
アーカでシエンが東家座主を完膚なきまでにやり込めて、隠居に追い込んだところを見届けた俺とキョウちゃんズは、流邏石でテンバにユノベ本拠に帰還した。
テンバに帰還したその足で叔父貴たちを密談部屋に呼び出して、アーカでの一部始終を語った。
「西家の新権座主は容赦ないのう。」
「まったくだ。それにしてもパパ島とは…。」
「いやいや、最初のうちはさ、シエンはパパ島遠流を、あの場でさらに策を弄する前東家座主への脅しとして思い付いたんだよ。そしたらいつの間にか、話の流れで、本当に流すことになっちまったんだよなぁ。」
「しかしアタルも、この謀略には一枚噛んでおるのだろ?」
「うーん、まあそこそこはな。俺が言ったのは、跡を継ぐツララどのがまだ12歳だから、ツララどのの後見に西家の姑どのを送り込めばいいってこととか、そんなんだけどな。」
「その跳ばっちりで西家隠居もパパ島送りか…。」
「まあいいじゃないか。あいつら使えないし。ぶっちゃけ、西家隠居も東家隠居も目先のことしか見えてなかったからな。それなのにふたりとも小手先の策ばかりを弄しやがってさ。」
「それにしてもなあ。」
「ところでシエンの謀略が計画通り運んだら、ツークにはどの叔父貴どのが行ってくれるのかな?」
「わしだろうの。他の武家もわしが行ったゆえ。」末の叔父貴が名乗り出てくれた。
山髙屋が仕切った東都の披露目や殿下の御座船での西行きなど、帝家が絡むところでは二の叔父貴、山髙屋との提携は三の叔父貴、武家への同盟の申入れは末の叔父貴と言う分担が、いつの間にかできていた。
「では末の叔父貴どの、よろしく頼む。ツークへの出立は、シエンから東家との関係を同盟に直し、ホムラどのを側室に迎えたと言う連絡が来てからでよい。」
「承知。」
ここで叔父貴たちとの密談を終えた。
叔父貴たちの密談の後は、それぞれの修行先から帰って来た嫁たちと合流して日課の混浴。そして夕餉を終えた後はむふふターイム!今宵の輪番はキョウちゃんズだ。
サキョウとウキョウを閨に迎え入れると、ふたりは何と三つ指を突いて挨拶をしたのだった。
「アタル兄、オミョシ東家始末へのご協力、おおきに。」
「お陰さんで東西両家の関係が上手く収もうて、兄上とホムラ姉とが元鞘に収まりましてん。おおきに。」
サキョウとウキョウが三つ指を突いて深々と頭を下げた。
「いやいやいや、そんな畏まるなって。」
「「ケジメですやん。」」
「そうだったな。すまん。では改めて、ふたりの心よりのお礼、しかと受け取ったぞ。」
「「おおきに。」」
「では今宵はたっぷりご奉仕してもらおうか。ぐふふふ。」
「「ええ雰囲気が台無しやがなー。」」いいねぇ、このツッコミ。笑
夜遅くまでキョウちゃんズを堪能したのだった。
翌日、朝餉の後に嫁たち全員を密談部屋に伴って、極秘情報であるオミョシ東家の代替わりと両家隠居のパパ島遠流について話した。当然、全員が一様に驚いていた。もちろん、臣従を同盟に直すことと、ホムラの輿入れについては内緒だ。
「アタル、あんた、裏で絡んでるわね。ね、サジ。」
こくり。「シエンどのと…示し合わせ…てる…?」
「まあそれなりには。」
「まったくぅ、アタルはぁ、敵対した相手にはぁ、とことん容赦ないわねぇ。」
「その通りですわね。」
「いやいや、そんなことはないだろ。」言い訳する俺に、
「何を言う。西家の前権座主を追い込んだときも、一切容赦しなかったではないか。」まあ確かに…。苦笑
「皆はそれぞれ、実家に飛んで、この情報を極秘裏にそれぞれの御父上に伝えてくれ。もちろんトウラクとシルドにもな。それと、代替わり後のオミョシ東家の、武家大同盟への勧誘についての是非もな。」
近々トウラクはキノベを、シルドはタテベを継ぐことになっているから、ふたりにもこの情報を伝えてもらう。
その夕方には、それぞれの実家へ、報告と修行に行った嫁たちから、各家の統領、座主、お頭が、東家の大同盟入りを承諾したとの報告を得た。
それから約半月に亘って、ユノベ付シノベ衆を使って、オミョシ東家の様子を見張っていた。
葉の月の上旬に座主代行ツララ率いるアーカ派遣部隊がツークへ帰還。その翌日に、東家の西家への臣従と、東家前座主の隠居およびツララの新座主就任が発表され、合わせてシエンのお母上のツララ後見就任も発表された。
シエンとキョウちゃんズのお母上は東家出身なので、予想通り、東家の家来衆からは、後見就任がすんなりと受け入れられた。
さらに、東家隠居と西家隠居のパパ島遠流が、シエンとツララの連名で発表された。これには東家預かりとなっていた西家隠居が猛反発したらしいが、所詮は負け犬の遠吠えである。シエンからの指令書で口をつぐんだということだ。
西家隠居を一発で黙らせたシエンの指令書には大いに興味をそそられたので、キョウちゃんズを介してシエンに内容を尋ねてみた。
すると、キョウちゃんズが、シエンから指令書と添状の写しを貰って来た。
~~指令書~~
御父上どの
東家隠居の伯父上とともに、パパ島遠流を申し付ける。
なお、添状に仔細を記す。
西家権座主 オミョシ・シエン 花押
~~添状~~
御父上どの
パパ島遠流の仔細は以下の通り。
西家に敵対した東家前座主の詫びを受け、和睦の条件として、東家が西家に対して臣従すること、東家前座主の隠居並びに嫡子ツララの家督相続と新座主就任、そして前座主のパパ島遠流を提示したところ、東家前座主はこれらの条件をすべて受け入れた。
隠居した前座主が東家に居座っては、新座主ツララを後見するとの名目で傀儡化し、実権を握るのは必定。よって前座主にはパパ島遠流を申し付けた。
しかし年若い新座主ツララに後見がいなくては、家臣どもに侮られる恐れがある。これを未然に防ぐため、東家出身の御母上をツララが成人するまでの期間限定で東家に派遣し、ツララを後見させることにした。
東家隠居をパパ島に遠流せしめた上で、東家に西家前座主夫妻が入れば、他の武家や世間は、西家が東家を乗っ取りに掛かっていると誤解するであろうことは、想像に難くない。
よって、東家預かりの西家隠居も、パパ島に遠流と致すことに決めた。
よくよく分別あって、わが命令に服すよう申し付ける。
もし不満あらば、出奔なり何なりするがいい。その場合は、謀反人として誅殺することをここに宣言する。
西家権座主 オミョシ・シエン 花押
~~アタル目線~~
「何これ、最後の一文、むっちゃきっつい内容じゃんよ。」
「せやねー。これでビビリーの父上は何も言えんようになってしもたそうやでー。」
「でもさ、もし出奔したらほんとに誅殺するのかな?」
「それはあらへんよ。父上はビビりまくって、出奔などできひんさかいな。」
「それとなー、母上に泣き付いたらしいで。」
「でもなー、会ってすらもらえず、侍女を通して『名ばかりの正室ではなくて、お気に入りの側室に取り成しを頼めばよろしいでしょう。』と、バッサリだったそうや。」うわー、怖ぇぇ。
「げに恐ろしきは女子の嫉妬やの。」いつぞやのサンキの台詞が思い出されたのだった。冷汗
オミョシ東家の動向を探っていた葉の月上旬に、タヅナの誕生日が来た。
今は旅先ではなく、テンバのユノベ本拠にいるので、皆で誕生パーティを開いて祝ったのだった。
俺は前日にこっそり東都に飛んで、タヅナのイメージカラーである緑の、むふふなランジェリーを買っておいたのだ。準備は万端である。
皆と一緒に俺もタヅナに誕生日プレゼントを渡す。
「アタル兄はどうせいつものアレやろ?」「せやなー。」キョウちゃんズのツッコミに、嫁一同から白い眼が飛んで来るが、そんなのスルーである。
「もちろん。俺はブレない男だ。」
「ブレない…でござるか?本来はそう言う使い方は、しないのではござらんか?」
「細かいことは気にするな。
タヅナ、今夜はこれでな。」
そしてむふふタイムである。タヅナは緑の透け透けネグリジェに、俺がプレゼントした緑のむふふなランジェリーを穿いている。いいではないか、いいではないかー。
「なんかこれぇ、恥ずかしいわぁ。」
「とってもいいよ。」両肩を抱いてキスをしながらベッドにタヅナを押し倒した。
「あん。」
最初はかわいく攻められていたタヅナであったが、じっくりねっとり攻めると大いに乱れる。今宵もじっくりねっとり攻撃で、タヅナのリミッターを解除してやったので、タヅナは途中から大いに乱れ、バーサーカーとなった。笑
キノベの姫で乗馬が得意なタヅナは、当然ながら騎乗位を好む。バーサーカーと化したタヅナは、俺の上に跨って、乗馬で鍛えた腰をグイグイと…。
俺は何度も昇天させられたのであった。もちろんタヅナも昇天してたけどね。
さて、タヅナの誕生日で大いに楽しんだ翌日、ユノベ付シノベ衆のまとめ役のサスケが、オミョシ東家のその後の動向を知らせにやって来た。
今、ユノベ付シノベ衆は、オミョシ東家の動向を探っている。
「主様。」
「サスケどのだな。」
「はい。」
「何か動きがあったか?」
「昨日、ツララどのが家老衆を説得しました。」
「説得はすんなりか?」
「いえ、やはり家老衆は無駄であろうと乗り気ではありませんでした。」
「姑どのが助け船を出したか?」
「いいえ、ツララどのがご自身で説得されました。」
「ほう。」
サスケはツララが家老衆を説得した顛末を語った。
~~前日・ツークオミョシ東家本拠・ツララ目線~~
「未熟な僕だけど、…じゃなかった、俺だが、皆の者には、オミョシ東家発展のため、よろしく支えて欲しい。」
「はっ。」×多。家老たちが平伏した。
「皆の者、御屋形様をお支えするのですよ。」
「ははーっ。」×多。伯母上への返事の方が、明らかに気合が入っているなあ。ま、こんなもんだろ。それに伯母上は僕の…じゃなかった俺の後見だしな。
「さて皆の者、座主就任の初仕事として、僕は…、じゃなかった、俺は、父上と叔父上がパパ島への遠流船で出航したのを見届けてから、その足でシエン兄のところに行って…。」
「座主どの、シエン兄ではなくて西家権座主です。」
「あ、そうだった。西家権座主どののところに行って来ようと思う。」
「よきお考えですな。われら東家は西家に臣従しておりますれば、西家の御指図通り、代替わりいたしましたことと、遠流船を送り出しましたことを、権座主どのにご報告せねばなりません。」
「それもそうだけど、僕…俺が継いだから、臣従から元の関係に戻してもらおうと思ってるんだ。」
「新座主どの、それはいかがなものでしょう。臣従して間もないと言うのに、元の関係に戻せと言うのはちょっと…。」
「でもさ、臣従したのは父上がシエン兄…西家権座主どのの不興を買ったからだよね?ぼ…俺は西家権座主どのとは仲良しだよ。」
「新座主どの、子供の頃の関係のままではないのですぞ。」
「今だって仲いいよ。」
「そう言うことではなくてですね…。
ご後見様のお考えはいかに?」
「…。」「ご後見様?」
「あらあらごめんなさいね。居眠ってしまってたわ。」叔母上ったら、白々しい。狸寝入りかよ。笑
「叔母上、シエン兄…西家権座主どのに、代替わりしたことと、遠流船が出航したことを報告するついでに、臣従を同盟に戻してくれないか頼もうと思ってるんです。」
「あらあら、まあまあ。そう上手く行くかしらねえ。」
「別にダメだったとしても今と変わらないだけです。ダメ元でやってみます。」
「そうねえ。ご家老衆のご意見は?」
「上手く行くとは思えませんな。」「そうですな。」
「ぜひやりたいんだよ。僕が初仕事としてやりたいって言ってるのを、いきなり家老衆が邪魔するの?ひょっとして、皆は僕のことを軽んじてる?」
「座主どの、その様なことはございませんよ。それに僕ではないでしょう?」
「あ、叔母上、ごめんなさい。つい。」
「分かりました。新座主どのがそこまで仰るのでしたらダメ元で…。皆の衆、いかがかな?」筆頭家老め、ダメ元を強調しやがったな。
「そうですな。」「ま、やるだけやれば、新座主どのも納得されるのでは?」
家老衆はまあいいんじゃない?と言う流れになった。誰ひとり、上手く行くとは思っていないのが見え見えだった。
~~現在・テンバユノベ本拠・アタル目線~~
「…とまあ、こんな具合でした。」
「ふうん。姑どのは積極的に賛成しなかった訳だ…。」
「左様に見受けられました。」
なるほど、積極的に賛成したら、裏から姑どのがシエンに手を回したって勘繰られるから、それを回避した訳か。
それと今の報告だと、ホムラどのとシエンの婚姻の話は出てないな。なるほどな、乗り気ではない家老衆の反応を見て、敢えて内緒にしといて、その話も取り付けて来たって度肝を抜く腹積もりか。
「報告、大儀。続けて探ってくれ。」
「はっ。」サスケはススっと姿を消した。
それから数日後。再びサスケが報告に来た。
「主様。」
「サスケどのか?」
「はい。」
「ツララがツークに戻ったか?」
「はい。昨日ツークに戻られたのですが…、驚きました。ツララどのは侮れませぬ。無理だと思われていた交渉をまとめて来ました。さらには、出発前に語っていたこと以上の成果を上げて来まして、東家の家老衆は皆、度肝を抜かれておりました。」ふふふ。実は出来レースなんだけどね。まあサスケは真相を知らないから黙っとこうっと。笑
「詳細を聞こう。」
~~前日・ツークオミョシ東家本拠・ツララ目線~~
「お帰りなさいまし。」
「うむ。留守居、大儀。急ぎ、皆のものを集めて。…じゃなかった、集めよ。それと姉上も呼んで参れ。」
「家老衆、全員揃いましてござります。」筆頭家老を始め、家老衆は平伏しなかった。明らかにツララを軽んじつつある。
「うむ。大儀。」
そこへホムラがやって来た。
「御屋形様、お呼びと承り、ホムラ、参上仕りました。」とホムラが平伏した。家老衆は一様にギョッとし、バツが悪そうにしている。自分たちの態度を思い返したのだろう。
「あらあら、姉であるホムラの方が座主どのに対してきちんと挨拶するのね。家老衆も見習って欲しいものだわ。先代は家老衆に礼儀を躾けていなかったのかしらねぇ。」
「こ、これは失礼仕りました。」筆頭家老が改めて平伏し、その他の家老衆もそれに倣った。
「さて、全員揃ったな。ではまず…。
姉上、輿入れが決まりました。シエン兄…西家権座主どのはすでに正室をお持ちですから、側室になりますが不足はありませんか?」
「え?」×多。家老衆の驚愕の表情と言ったら…。大笑
ついでに言うと後見の叔母上も姉上も大層驚いたフリをした。このふたりは真相を知っているからキツネとタヌキだ。笑
「姉上、側室では不服ですか?」
「いえ、滅相もございません。嬉しゅうございます。」姉上は涙を零した。本心と演技の割合は何対何だろ?
「座主どの、西家との婚姻をまとめて来たのですか?シエンがそれを承諾したのですか?」さらに芝居を続ける叔母上。
「叔母上、シエンではなく、西家権座主どのですよ。」
「あっ。これは失礼をば…。」
「西家権座主どのは姉上を迎えることを承諾しました。」
「新座主どの、婚姻が成立したと言うことは東家と西家の関係は…。」筆頭家老がのめり込んで聞いて来た。
「当然、元通りだ。だからそのようにまとめて来るって言っただろう?」
「畏れ入りましてござりまする。」筆頭家老が平伏し、家老衆がそれに倣った。今回は、本心からの平伏だろう。
~~現在・テンバユノベ本拠・アタル目線~~
そうか、シエンとツララは上手くやったんだな。
「サスケどの、報告大儀。引き続き見張ってくれ。」
「はっ。」サスケが姿を消した。
よし、じゃあ次は俺の番だな。俺は叔父貴たちを密談部屋に呼んだ。
毎週月曜22時に投稿します。
リアルが忙しくなり、執筆の時間を十分に取で、次回の投稿でしばらく休載します。落ち着いたら必ず再開します。
以下の2作品も合わせてよろしくお願いします。
「精霊の加護」https://ncode.syosetu.com/n2050hk/
「母娘丼W」https://ncode.syosetu.com/n9708if/
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