射手の統領012 初めての宿屋と初陣
初作品なので、不慣れですがよろしくお願いします。
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
射手の統領
Zu-Y
№12 初めての宿屋と初陣
東都に到着するまでの2泊は、初日が流邏矢でユノベ館に帰館、2日目が農家の納屋だったので、宿屋に宿泊するのは今日が初めてである。
俺たちは、冒険者ギルドの近くの手頃な宿屋に入った。
「3人だが部屋はあるか?取り敢えず3泊したい。」
「素泊1泊おひとり様銀貨2枚と、お部屋のチャージ料です。3人部屋はありません。4人部屋は1泊大銀貨1枚、ツインとデラックスダブルは銀貨5枚、シングルは銀貨3枚です。」
「デラックスダブルで。」
「ツインとシングルひと部屋ずつ。」
「ツインと…シングル…。」
俺vsサヤ姉&サジ姉である。なぜ俺だけハブるんだ?
フロントの女の子が下を向いた。笑いを堪えてやがる!
「デ・ラ・ッ・ク・ス・ダ・ブ・ル・ひ・と・部・屋・だっ!」
サヤ姉とサジ姉はふたりそろって肩をすくめ、しょうがないわねー、と言った感じだ。
俺はデラックスダブルに3人3泊で、大銀貨3枚と銀貨3枚を支払った。
部屋に行くとデラックスダブルは3人でも十分な大きさであった。
「アタル、睡眠はしっかりとらなきゃだめよ。ね?サジ。」
こくり。
「サヤ…これじゃあ…眠れない…よね…?」
「そうね。」
「なんでだよ。3人で川の字になって十分に眠れる広さだろ。」
「アタル、あんた、私たちが両横にいてぐっすり眠れるの?」
「え?」
「交互に…一晩中…繰り返すか…我慢して…悶々と…眠れないか…。」
「あ…。」
「婚約の日のアタルの失態で、婚儀の日まではお預けって言ったけどね、アタルから繰り返し求められたら、私たちは拒み続ける自信はないわよ。ね?サジ。」
こくり。
「そしたら…交互に…きっと…朝まで…。」
「我慢したらしたで、アタルは悶々と眠れないんじゃない?」
「私たちも…同じ…。いつ…アタルが…来るかと…待ち続けて…眠れない…。」
「…すみませんでした。」
俺はシングル3泊を追加しに行った。大銀貨1枚を渡して、銀貨1枚のお釣りをもらうとき、フロントの女の子は、また下を向いて笑いを堪えていた。こんちくしょう。泣
気を取り直して3人で飯を食いに外に出るか。
~~ホサキ目線:タテベ本拠~~
ホサキは流邏石でタテベ本拠に戻った。タテベ統領の父上に面会に行くと、案の定、かなり不機嫌だった。
「ホサキ、そなた、冒険者ギルドで絡まれたようだな。」
「申し訳ありません。」
「しかも絡まれた原因はそなたが作ったそうだな。」
「申し訳ありません。」
「わしは新人パーティに加われと申し付けたはずだぞ。そなたは新人パーティとゴロツキパーティの区別もつかぬのか?」
「最初は新人よりもベテランの方がいいかと思いました。」
「たわけ!わしの言い付けを無視したのだな?」
「いえ、そんなつもりはありませんでした。冒険者登録の許可が下りたことに舞い上がってしまいまして、父上のご指示を上の空で聞いておりました。誠に申し訳ありません。」
「こんなことでは冒険者としての活動は白紙だの。」
「そんな!もう一度チャンスを下さい。実はすでに新人パーティに加入して来たのです。」
「そのパーティは抜けよ。粗忽者に冒険者の活動は許可できん。」
「父上、一度交わした約定を反故にするは、タテベの信義にもとると愚考致します。」
「ふん。粗忽物のくせに小知恵だけはくるくるまわるの。では、日帰りクエストに1回だけ付き合ってやれ。」
「父上、実はそのパーティは、しばらく後に武者修行でビワの聖湖に向かいます。私もその武者修行の旅に同行したいのです。」
「何をバカなことを。途中で賊に襲われて儚くなるに決まっておるわ。到底、許すことなどできんな。」
「いえ、新人と言ってもそのパーティのリーダーは、無類の強者にて、ゴロツキパーティの4人を瞬時に打ちのめしました。」
そこで重臣のひとりが父上に耳打ちした。
「ほう。どんな奴だ?」父上が興味を示した。
「射手です。雷属性の矢を放ちました。」
「矢の属性攻撃だと?バカも休み休み言え。」
さらに重臣のひとりが父上に耳打ちした。父上の表情が明らかに変わった。
「そやつの名はなんと申す?」
「ユノベ・アタルどのです。」
「なんと!お前はそのお方のことを忘れたのか?」
アタルどのに対する父上の呼び方が、そやつからそのお方に変わった。…やはりアタルどのの予想通りのようだ。
「いえ、父上が私を嫁がせようとしたお方と記憶しております。」
「ホサキ、そなたはアタルどののパーティに加入したのだな?では必ずアタルどのに気に入られるようにせよ。」
「タテベがユノベと誼を通じるためですか?」
「そうだ。」
「それでしたら父上、アタルどのも、タテベとの友好をお考えです。」
「どう言うことだ?」
ホサキは、アタルとの出会いの際に、会話の流れから、アタルが自分の嫁ぎ先の候補だったことを語ると、その情報だけで、アタルが父上の思惑を看破したことを告げた。
さらに、アタルから、ユノベはタテベとの友好に乗り気だと言うことを、父上に伝えるよう依頼されたことを報告した。
「アタルどのは、ご自身のことを父上に告げれば、私の西都行きは許可されようと仰いました。父上の思う壺だからと。」
「そうか。アタルどのはなかなかの眼力のようだの。」
「父上、アタルどのは、ゴロツキパーティにタテベの息が掛かっているのではないかとも仰いました。そうなのですか?」
「おお、それも見抜いたか。いやはや、大したものだ。
ところでホサキ、そなたもよくアタルどののパーティに加えてもらったな。ゴロツキの失敗を帳消しにして余りある大手柄ぞ。褒めて遣わす。」
父上は、ずいぶんとアタルどのを買っておられるのだな。
「父上、後で折り入ってお話したいことがあります。」
「そうか。では後程、私の部屋に来るがいい。下がってよいぞ。」
しばらくして父上の部屋を訪ね、アタルどのから父上にのみ話すように念を押された、矢に雷属性を付加するカラクリと、武者修行の旅の真の目的を伝えた。
「アタルどのは、その極秘事項をそなたに告げたのか?」
「私と言うよりは、私を通して父上にお伝えしたかったのだと思います。」
「左様か。」嬉しそうに虚空を見つめ、考えを巡らせている父上。
「ホサキ、そなた、必ずアタルどのの心を射止めよ。そしてアタルどのに嫁ぐのだ。これはタテベのためぞ。」
「承知しました。」ホサキは、真っ赤になったのを父上に知られないように俯いた。
~~アタル目線~~
俺、サヤ姉、サジ姉の3人は宿屋近くの寿司屋に入った。
「東都前寿司って言うのか。旨いなぁ。特に穴子の処理がいい。蒸しに相当な手間を掛けてるな。そしてこの甘ダレとの絶妙な相性と言ったら…。それとこの小肌は、酢〆の塩梅が最高だ。ヌーマの寿司も新鮮さでは負けないが、この細工には脱帽だな。」
「そうね。」
こくり。
「おい。若いの、嬉しいじゃねぇか!俺のおごりだ。これも食え。連れの嬢ちゃんたちもな。」
特大アナゴの1本握りが3本出て来た。
「「「いただきます。」」」
そして酒も旨い。…が、程々でやめた。呑み過ぎると悲惨なことになる。
「アタル…お酒…抑え…てる…?」
「あぁ、呑み過ぎて初陣を棒に振ったからな。二度と同じ過ちは繰り返さないよ。」
「ずいぶんと反省してるのね?」
「そりゃあしてるさ。俺にとっては、代償が大き過ぎだよ。次の初陣のチャンスはいつになることやら。」
あれ?サヤ姉とサジ姉、モジモジシンクロ?なぜに?
「次の初陣のチャンスは婚儀のときよ。ね?サジ。」
こくり。
「いや、そうとも限らないぜ。」
「「え?」」
「ホサキはタテベとユノベの友好のために、タテベどのの意を受けて、俺に嫁ぐ覚悟を決めて来るはずだ。政略結婚だが、その価値はユノベにとっても高いものだ。」
「アタルは…ホサキを…3人目に…する…つもり…?」
「ホサキがその気なら、サヤ姉とサジ姉には悪いがそうすることになる。」
「抜け抜けと言い切るわね。」
「他の勢力との友好の維持や構築は統領の務めだからな。仕方ないだろ。とは言え、ホサキの素直さが俺としては好ましい。満更でもないって言うのが本音だな。
こちらからは口説かないが、ホサキから来たら、ユノベとタテベの友好のために、敢えて拒まない。ホサキを受け入れるつもりだ。それがふたりとの婚儀より先になるとしてもな。」
無言で俯くふたり。理性では納得しても、感情では納得できないのだろうな。そりゃ、そうか。
「俺はサヤ姉とサジ姉に惚れている。ホサキは好ましいがまだ惚れてはいない。そりゃそうだ。今日会ったばかりなのだからな。しかし、統領としては決断しなければならない。サヤ姉もサジ姉も統領の嫁として、受け入れて欲しい。」
「筋は通ってるわね。サジ?」
こくり。
会計を済ませて寿司屋を出た。旨かった。大将も気風がいい。ここは贔屓の店にしようっと。夜の東都を歩きながら宿屋へ向かう。東都の夜は明るく賑やかだ。ユノベ本拠の近くにも大きな町はあるが、東都は規模がまるで違う。
サヤ姉とサジ姉は少し離れて歩いてる。ときどき何かをコソコソと話しながら、こちらをチラ見して来る。
ホサキの件で対策を練っているのだろうか?ホサキを3人目にすること自体は納得しているようだが、俺の初陣がホサキになる可能性が気に入らないのだろう。
サヤ姉とサジ姉の性格から、ホサキに八つ当たりすることは絶対に考えられない。とすると、ホサキを「初陣お預け同盟」に引きずり込む気か?まぁ、それは仕方ないか。
重々しい雰囲気の中、宿屋に到着すると、問答無用でふたりの部屋、デラックスダブルに連行された。
こりゃ、正座させられてお小言だな。でもホサキの件は政略だ。政治だ。俺の初陣がホサキになるとしても、俺は絶対に謝らないからな。
「アタル、ホサキの件は仕方ないわ。そう言う判断が妥当だわ。でもね。」
「私たちが…先に…婚約…した…。だから…。」
おい、サヤ姉、サジ姉、ふたりとも眼がイッてるぞ。怖い怖い怖い。
サヤ姉とサジ姉のふたり掛かりで、デラックスダブルに押し倒された俺は、あっと言う間に全裸にひん剥かれ、その晩、ふたりから無理やり初陣させられた。
もちろんふたりも初陣で、おかげでマイドラゴンは2度も返り血を浴びて血まみれになった訳だが、ふたりとも超肉食だった。結局、明け方まで、初回は同時に、その後は交互に、ふたり×3回戦。
初陣こそ恥ずかしがっていたふたりだが、初陣を済ませると何か吹っ切れたように変貌し、2回戦、3回戦では、大胆かつ積極的になって行った。しゅ、しゅごい。
マイサンは何度もマイドラゴンに変身させられ、6回もホワイトブレスを噴き出させられた。
力尽きた俺たちは、3人そろって昼近くまで爆睡した。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
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カクヨム様にも投稿します。




