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20 人類の異端者

今の自分や社会の在り方に満足がいかない者は多い。


特に個々人の評価や立場を、必要以上に向上させようとする者が、逆に社会全体を悪化させており、それに気付こうともしようとしない。


これは、人間だけに言える事ではなく、微生物や植物にもソノ傾向はある。


『それが生物だ』と諦めるのは簡単だ。

そして、その様な絶望を受け入れない者が現実として目指すのが、【生物としての進化】だ。


遺伝子ゲノムの解析や遺伝子組み換え技術の発展は、一部にソノ様な思惑が無いわけでもない。

ただ、ソレは現在の人間を劣等種扱いする事となり、傲慢な人間は受け入れないだろう。


相手が少数な時はバケモノと蔑み排除しようとする。

必要な時は都合よく祭り上げ、用が済めば始末する。

守ろうとするのは、負ける事を喜ぶ親のみだ。


村に必要な薬を作っていた者、魔女狩りが良い例だ。

ジャンヌダルクも火炙りにされた。



進化した者が増えれば、彼等は徒党を組み、集団を作り、組織を作り、国家を作って、旧人類と戦争へと至る。

ソノ様なフィクション映画は山ほどある。

つまりは人間自身も、住み分けたり隣人として受け入れずに、そうすると自覚しているのだ。


環境破壊をも引き起こし、臆病で傲慢な生物。


こんな現在の人間の存在に意味は有るのか?

いや、存在すべきなのか?


客観的にはこんな判断をする者も決して少なくはないだろう。

ソレは人類が環境破壊や戦争で死滅するデストビア物語りの存在が肯定している。


実際に、どの様な進化が望ましいのかの答えすら見いだせてはいないが、立ち止まっているよりはマシな筈だ。


彼の場合は、食物連鎖から脱却する為のクロレラとの共生実験や、戦争根絶の為に闘争本能を作り出す遺伝子の排除など、幾つか論文化したら、非人道的だと言われ博士号剥奪の上に学界からも追放されたケースだ。


「飢えや戦争を放置している方が非人道的ではないのか?」


彼の声は黙殺され、一部には【マッドサイエンティスト】と呼ぶ者まで居る。


機械を肉体にインプラントしたり、薬物投与に頼ったりしてまで、進歩や向上を望んで止まないくせに【人間という種】には固執して動こうとしない。


そんな大衆を彼は理解できなかった。


「マッドなのはどちらだ?」


人体実験さえしなければ、法には触れない、規制されない。


彼は資産をなげうって研究していたが、ある日、見知らぬ所から声が掛かった。


「教授は人類の進化に御興味があると伺っておりますが?」

「既に教授ではないよ。博士でもない。どこかの雑誌かね?」


どこの国にもタブロイド紙の様なものはある。

来訪者の英語は癖があり、英語圏の者でない事がうかがえた。


「いえいえ、雑誌ではありません」


出された名刺は、外国の少し知られた製薬メーカーだ。

来訪者はクーラーボックスから顕微鏡用のプレパラートとサンプルケースを出すと、テーブルの上に置いた。


「興味が有れば、ご連絡下さい」


来訪者は、それだけ言って去っていった。

名刺には携帯端末の連絡先もある。


とりあえず、サンプルケースを保冷庫にしまってから、渡されたプレパラートを顕微鏡にセットして覗いてみた。


「動物の細胞か?皮膚か何かの組織の一部だな」


染色液で染められたサンプルは、複数の細胞が並んでいる生物の一部だった物だ。


「様々な状態の細胞が見れる。まさに教材用のサンプルだな」


しばらくは何気なく見ていたが、彼がその異変に気が付くのに、そんなに時間は掛からなかった。


「何の細胞だ?遺伝子数が多すぎないか?」


幾つかをシラミ潰しに見てくと、その遺伝子数は70以上ある事が分かった。


「これは、何の細胞だと言うんだ?」


チンパンジーの染色体は人間以上の48本、牛が60本でニワトリには78本の染色体がある。


【高等】の基準を生命体としての能力と見るか、ズル賢さと見るのは疑問だが、単純に染色体の数と知能とは関係しない。


【人類の進化】と銘打って持ってきた物が、ニワトリの細胞などである筈がない。


彼は保冷庫にしまったサンプルを取り出し、分析器にかける。

恐らくは、プレパラートの物と同じ物だろう。


分析器をネットワークに繋ぐと、今まで人類が調べてきたゲノムの調査記録と比較して、何の遺伝子かを判明してくれる。


照合結果が出るまで、暫くは時間がかかる。




そして、出た結果は・・・・


「一番近いのが、人間のトリソミーだと?」


人間の遺伝子は、通常は23対が2セットの46本有る。

父親から遺伝した23本と母親から遺伝した23本だ。


だが、生殖細胞を作る時の減数分裂が上手くいかず、24本や25本で生殖細胞が出きる遺伝障害がある。


結果、2セットの遺伝子が、部分的に3セットとなる症状を【トリソミー】と言う。


ほんの一本多いだけで、殆どの場合は発達障害や死産として産まれてしまう。

最悪は細胞分裂さえろくにしない。


「これは、三染色体性トリソミーなどと言えるレベルじゃあない!全てのゲノムが3セットあって、なおかつ、成長している」


フルセットのトリソミーを三倍体トリプロイディと言う。


動物の場合は、ほぼ死産。


植物でも多くが発芽しない。

この様な倍数体は、発芽しても生殖能力を失う。

その様な物は比較的身近に有り、種無しスイカや種無しぶどうなどがある。


更に詳しく調べると、その染色体は、人間のソレよりも更に多い。


「一組72本の遺伝子だと?これは、超人類なのか?」


彼は結果を見て、打ち震えていた。


そして、これを彼に持ち込んだ者が、彼に何を求めているのかかに、とても興味があった。


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