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18 ゲスト48の生贄

悪魔祓師エクソシストは、教会の公認ではない。

正確には【黙認】扱いになっている。


よって、特に資格を必要とされている事はなく【デーモンハンター】や【オカルトドクター】なとと言う怪しい悪魔祓いも実在する。


『過去に司祭をやっていた』などと言う履歴は一般人には調べようがなく、近隣住民に知られたくない者達は藁にもすがる様な思いで、教会よりは、むしろコノ怪しい者達に依頼する事が多い。


教会に頼むと、その教区の教会に連絡が行き、教会関係者から住民へと話が伝わるのが現実だからだ。




小さな町の平凡な家にあるソノ部屋は、窓などの多くがビニールで目貼りされていた。


深夜になると、部屋全体が小刻みに振動しはじめ、固定用のテープが、今にも剥がれそうになっている。


「おめでとう、オカルトドクター。146人目にして初めて本物に当たった様だな」


部屋の中央に浮かんでいる女性が発する声は、十代後半の女性のものではない。


「ヤバイな、コレは!」


部屋の出入り口でソレを睨んでいるのは、プロテクターに酸素ボンベ姿で立ち尽くす、内科医のリチャード・スミスだ。


今回は、いつものパターンと違っていた。

いつもは、キリスト教徒の多い地域で変装して密かに麻薬を流行らせ、放心状態の時に睡眠学習の要領で悪魔憑きに仕立てていく。


禁断症状でうわ言を叫ぶ様は、まさに悪魔憑きに酷似していた。


女性の両親の方から接触してきた今回は『デミアン・カラスさんからの紹介』と言う話だ。


「デミアン・カラス?覚えの無い名前だ」


今まで百件以上の案件を処理してきたので、失念してしまっているのかも知れなかった。

ただ、報酬が高額だったので、いつもと同じ要領でやれば良いと考えて引き受けたのだ。

顔出しはしていないが、ネットでは【オカルトドクター・スミス】として有名になっている。


今回の様なイレギュラーには、症状によって「これはノイローゼですね」と対処を避ける事も有る。


だが、大抵は「お子さんの肉体は完全に悪魔に乗っ取られています!火炙りにして浄化しないと魂までも地獄に引摺り込まれます」と「御両親で、お子さんを火炙りにできますか?非合法ですが、私の知人に火炙りのできる者が居ます。お子さんの身柄を預けて、警察には失踪届けを出していただければ手配できますが?」のセットで薬中毒の若者をもらい受けていた。


何の為に?


内科医である彼には、抑えきれない殺人衝動があるのだ。


男でも女でも、動けない若者を犯して切り刻んで殺すと、えも言われぬ全能感を味わえた。


だが、今回は違った。

彼は【悪魔】などは信じていない。

【人間こそが悪魔だ】と思っているからだ。


既に形ばかりの祈りも聖水も、既に使い終わっていた。


「サイキックが実在するとはな!しかし、どうやって正確な件数を調べたんだ」

「サイキックと悪魔が無関係だと思っているとは視野狭窄な事だ。まぁ、映画の見過ぎなんだろうな。さっきの祈りは映画【エクソシスト】からの引用なのだろう?」

「映画?」


『映画のエクソシスト』と言う言葉を聞いて、スミスは思い当たる節があったのだ。


パスッ!

パスッ!パスッ!


振り返ったスミスのサイレンサー付きコルトM1911が、スミスの後方に立っていた両親に向かって放たれた。


案の定、二人はスミスに向かって槍を刺そうとしているところであり、思わぬ銃撃に成すすべもなく床に倒れていった。


「映画の神父の名前だったな。デミアン・カラス神父だったか」


「ハハハハッ!最後の供物、人間の血を一人分以上を確かに受け取った。我はココに顕現せり!」


両親の死を意に介せず、宙に浮いた女性の腹部が、異様に膨れだした。


察するにコノ夫婦は、悪魔召喚儀式の生贄にドクター・スミスを捧げようとしていたのだろう。

結果的に、みずからが生贄になってしまったが。


「黙れ!化け物」


スミスは、部屋のドアを閉めガスマスクを装着して、室内に持ち込んだ大型ボンベのバルブを開いた。


元々が、親に同意を得た後に、禁断症状で暴れる若者を笑気ガスで眠らせて連れ出す為のものだ。


シューと言う音と共に、部屋中に麻酔ガスが広がる。


「例えサイキックだろうと、悪魔憑きだろうと、人間の肉体である以上、これにはあがなえないだろう」


ドクター・スミスの意味不明な行為に笑っていた悪魔憑きも、眠る様に意識を失い、ベッドの上に崩れ落ちた。


部屋の振動も、物が飛び交う事も無くなり、部屋に静けさが戻る。


「手間を掛けさせやがって」


いつもなら、楽しみながら殺すのだが、今回は両親をも殺してしまったので、家ごと燃やすしかないだろう。


トドメとばかりに、ベッドに倒れている女性の頭に向かって、銃の引金を引いた。


パスッ!


「なにっ?この距離で外した?麻酔を吸ってしまったか?」


マスク越しでハッキリと分からなかったが、女の頭が動いた気がした。


スミスはドアと窓を開け、換気をしてから、マスクを外した。


夜の外気で深呼吸をしながら、手の感覚を確かめる。


「うん!大丈夫だな」


再び銃を握り、寝ている女の頭に銃口を向けた。


パスッ!


また、弾は外れた。

それも、寸前で腕が動いてしまい、銃弾はベッドのクッションに撃ち込まれてしまっている。


「訳がわからない。どうなっている?」


そう呟いた途端に、窓から覗くビデオカメラに気が付いた。




「突入!」


家のキッチンから、開いた窓から、大勢の警官隊が侵入してきて、慌てるスミスを取り押さえた。


「連続殺人犯、リチャード・スミス!逮捕する」


手持ちのコルトに、その銃弾で倒れた夫婦。

殺人未遂の映像と、証拠は十分すぎる逮捕だ。


手錠をされ、ロープで縛られて連行されるスミスは、家の外で警官と話す牧師姿を見た。


「通報を感謝します」

「バチカンとしてはエクソシストをかたやからをマークしていたのですが、銃声がしたので報告しました。御両親を助けられなかったのが残念です」

「彼女は独りになってしまいましたね」

「そう言う不幸な方を癒すのも、教会の役目です。問題なければ、私達が引き取りますが?」


そういった会話が聞こえてくる。

横には、不似合いなメイド姿と、ガタイの良い男が立っている。


「スミス!早く車に乗れ」


自分の楽しみを奪った者達の姿を睨みながら、スミスは警察に連行されていった。












「気が付いたか?ハアゲンティ?」

「ヴィネ大王様?・・・・いったい?」


病院のベッドで目覚めた娘は、瞳を赤く輝かせて周囲をうかがった。


「お前が殺されそうになっていたのを、フルカスに命じて助けさせたのだ」


スミスの銃口が動いたのは、フルカスの霊体が騎士の姿で妨害していたのだ。

実体にも霊体にも干渉できるフルカスの【騎士の力】は、殺す為だけではないのだった。


「しかし、無様だな!せっかく陛下がヨハン様に内密にしてまで手廻しして下さったと言うのに、あの両親は!」

「そう言うなフルカス。誰しも召喚主おやを選べるものではないのだから」


壁に立つフルカスが、ベッド脇に座るヴィネに頭を下げる。


「召喚の魔導書も、ここに回収してある。今こそ決めろ!我々に組みするならば、このまま顕現させてやる。断るならば魔導書は燃やす」

「選択の余地は無いでしょう?配下に加わらせていただきます」


こうして、錬金術を持つ者が、ヴィネの直属に加わった。




――――――――――


映画:エクソシスト


1973年のアメリカのホラー映画。

主演リンダ・ブレア

監督ウィリアム・フリードキン

脚本:原作:製作

ウィリアム・ピーター・ブラッティ


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