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11 ゲスト50の選択

真っ暗な部屋の中に一つの椅子が置かれ、上下よりスボットライトが当てられている。


そこに座っているのは、一人の青年。

18歳と、国によっては成人している年齢だが、肉体は強固に鍛え上げられている。


彼は不満そうに呟く。


「こう言った歓迎のしかたは、気に入らないな」


食事に薬を盛られ、寝ている間に拉致されたのを不服に思っているのだ。


光の加減で見えないが、彼の周りを取り囲む様に五つの椅子が並び、男女が座っている。


匂いから察するに、更にソノ後方には銃を構えた者達が十数人。


「騎士風情が、傲慢な事だな」

「お前達は俺の主じゃない!騎士は自らの主以外には従わないし、主のため以外には礼節も無い」

「何だと!貴様、我々を・・」


ゴホン!


一つの咳払いが騒ぎ出す場を納めた。


「まぁ、確かに君の言う通りだ。たから、新たに我々の中から主を選んでくれないか?」

「何の為にだ?」

「簡潔に言おう。君は唯一の騎士だ。戦闘において君の右に出る者は居ない。だから敵には回したくないんだよフルカス君」


「確かに、騎士は俺ひとりだったな」


過去にも多くの【悪魔】と呼ばれる者が現世に現れた。


王、王子、公爵、侯爵、伯爵、総裁、大議長。

多くの肩書きを持つ者が複数現れたが、騎士の称号を持つ者は、フルカスの一柱だけと言える。


「そもそも、アストラル召喚にとどまらない、この状況は何なんだ?俺の召喚主、産みの親?、養父母?表現が難しいが、単に悪魔を顕現させて、魔力を得る事しか考えて居なかったが?」

「確かに、今回の召喚については、王位についている者しか、あの方からはうかがってないのだったな」


一人が顎に手を当てて俯く。


「我々の世界において、我等のアストラル界と人間の現世が、将来的に一つへと復帰する事をフルカス君も聞き及んでいると思う」

「ああ。人間のやった【バビロンの災厄】とか言う奴の限界が来て、分けられた世界が再び統合されるって話だよな?」


神話の世界の神々や、魔物が現在に存在しないのは、ある事件によって人間界と分断された為だったのだ。

多くの事象、法則、歴史的物証が、現代に都合よく【合理的】に改竄され、全ては迷信と妄想のものとして否定されていった。


「それに備えて我等の盟主が、統合後の運営をスムーズにする為に、先見隊を送る事を考えられたのが、今回の受肉を伴った召喚だ」

「盟主と言うと、あの御方か?」


彼等の間では、自らの名を名のるのは勿論、目上の者の名を口にする事もはばかられるのだ。


「で、現世の魔導師に自動書記による受肉召喚術式を授けたのだが、記述が終わって間もなく術者が死んだらしく、数世紀も埋もれていた物が、近年ようやく世に出たと言う訳だ」

「人間の寿命は短いからな。すぐに老いるから、子供として産む事すらできなかっただろう」


確かに666枚。1332ページの書物を手描きするのは時間がかかる。

それも自動書記だ。


他の者に肉体を操られて文字や絵を描く【自動書記】は、時間も掛かるし精度も落ちるのだ。


「では、既に多くの者が現世に顕現しているのか?」

「いいや。数は少ない」


暗闇に座る一人が首を横に振った。


「召喚の為の魔導書は、666ページに分割され、それぞれを一枚づつ含んだ666冊の写本に再編された」

「そして、そのうち、かつて現世にアストラル召喚された者を召喚可能な分だけの写本を、先行して世に出して、経験者による基盤を作ろうとしたらしい」


複数の者が説明に加わっている。


「それで、以前に人間の王に召喚された俺達が居るって訳か?確かに、現世に疎い者を先行させて騒ぎになっても障害にしかならないからな」


かつてユダヤのソロモン王により召喚され、様々な魔法を授けたと言われている72柱の【悪魔】の伝説は、現在にも伝わっている。


「だが、72柱分を世に出した直後に、この行いは教会。つまりは反魔術団体により妨害され、眷族分を含む594冊の写本が処分されてしまった」

「では72柱の同族しか居ないのか?」


「ああ。だが、召喚主にココまでの話を聞いた後に、私は思ったのだよ【支配者は少ない方が良いのではないか】とね」

「まさか?」


理解できない話ではない。

そして裏切り行為とも言えない。

そもそも王や貴族は、競う相手を陥れ、権力や領土を広げる性質の存在だ。


「前回の現世の王は、様々な魔法を欲して、多くの者を召喚した。結果として多くの重複した魔法を持つ者を召喚してしまっている。個々の領土を広く持つ為にも、無能な者を間引く為にも、選別は必要ではないかね?」

「かつての召喚の時に、王は十柱居たはずだが、ここには五柱しか居ない。これは、間引く相手を決めたのか?既に間引いたのか?」

「君の主は、【王】に限定されていない筈だよね?だが我々から選んでもらえると助かるんだ」


男は、顔が見えない周囲の者達を見回した。


「まさに【悪魔】だな・・・・。分かった。騎士の誇りにかけて、敵対しないと誓おう。だが、誰の騎士になるかは、主の力量などを見定めさせてもらってからでも良いだろうか?」

「分かった。認めよう」


流石の【騎士】と言えども無敵ではない。

何者であっても物量と策略を駆使されては、抗えるものではないのだ。

最悪、主を決めずに中立として不干渉な立場で居る事はできる。

【敵対しない】とは誓ったが、【主を決める】とは誓っては居ないのだ。


「では順次、個々に同行してもらおうか?」


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