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10 ゲスト58の占い

【王】を頂点として王の親戚としての公爵があり、配下としての侯爵と伯爵などの貴族社会がある。


だが世の中には、主従関係によらない集団があり、その集団の代表としての取りまとめ役を【総裁】などと呼ぶ。


王は、血筋だったりトップである存在なので、独りでいても【王】だし、王が存在すれば【貴族】も成り立つ。


だが基本、無冠の者の取りまとめ役である【総裁】は、独りぼっちでは意味を成さない。

異界で【大総裁】などと呼ばれていても、現世に独りぼっちでは何の権力もない。


特に能力があれば別だが、客観的には烏合であり、邪魔でも有るのだろう。





「やはり、星の配置が悪いわね」


占星術を基本にした、ちいさなコンサルティング会社は、若い女性に、なかなか好評だったのだが潮どきらしい。


まぁ、簡単に言って【占い小屋の女占い師】だ。

街中の小さなビルのフロアを借りきっている。


予言ができる多くの同類は【時の書庫】と呼ばれる物にアクセスして、過去と現在。あと高確率で未来の情報も得る事ができるが、私にはできないので、ハッキリとした事は言えないが、私自身の先が見えない。


運気の変化は、先週にメイド姿の女が来てからだと思う。

アレは確かに同族だった。





予約の客が終わり、フリーの客の時間だ。


チャイムが鳴り、40代後半の男性が入ってきた。

帽子にサングラス、トレンチコートで包んだガッチリとした体格。

間違いなく訳アリの客だ。

帽子とサングラスを取ると、顔にまで薄っすらと傷があり、白人金髪、碧眼はナイスミドルと言える。


なかなか好みの男だ。


「あら、御客さんですか?【アグネスの星占い】へ、ようこそ。軍人さんかしら?」

「体格で分かるのか?それとも身のこなし方か?」


最近の占星術は、コンピューターを使ってホロスコープを書き出す。

タブレット表示を見せれば理解が早い。


「占いに【火星】が入っているのよ。相談事は仕事?それとも恋愛かしら?」

「どちらかと言えば【仕事】かな」


占いは、星の位置やカードの状態と、占術者の直観を合わせて占う。

だから、同じホロスコープでも結果は異なるものだ。

だから、店によって結果が異なり、人気店が生まれる。


「料金は入り口に書いてあった通りの額で前払い。じゃあ、こちらに座って、生年月日と生まれた場所を・・・・・」

「占い師ってのは、自分も占えるのかい?」


そう言って、男は懐から銃を引き抜いている。

ゆっくりと。


「占えるわよ。たから逃げても抵抗しても無駄なのも分かっているわ」


未来が分かると言うのは、避けられない運命を受け入れなくてはならないと言う事。


運命を自分で切り開くとか、運命を変えると言う戯れ言は、本当の運命が見えていないだけなのだ。


サイレンサー付きのハンドガン。

銀粉の匂いがする。


「占い料金は紙幣限定よ。銀のインゴットは受け付けてないんだけど?」

「済まない。コレしか持ち合わせが無いんでね」


数回の発射音の後に目の前が暗くなり、男の姿は見えなくなった。











「【ナンバー58】の処置を終了。後処理をして、このまま【57】の元へ向かう」

『【31】と【53】に続き、御苦労様。急がなくても良いぞ』

「いや、療養中の相棒の分まで頑張るさ」


聖水による、本人確認も終了している。

男は携帯電話を切って手袋をはめ、窓を閉めていく。


次に部屋の奥から占い師の喫煙用品を持ち出した。

幸いにも吸い殻が残っていた。


「なかなか良いライターを使っていたんだな」


喫煙用品を死体のあるテーブルにセットし、自分のポケットからビニール袋に入ったライターを取り出して、その横に置く。


ライターに似せた遠隔発火装置だ。


「やはりライター2個はおかしいか」


男は占い師のライターを持って、奥の給湯室へと向かっていく。


持って来たライターを給湯室の棚に置くと、胸ポケットから小さなスプレー缶を取り出して、給湯器のガスパイプへと振り掛けた。


腐蝕液のスプレーだ。


僅かに泡立ち、小さな空気音と共にプロパンガス特有の匂いが広がる。


ボンベの方の安全装置は、昨晩のうちに工作済みなのでガスが止まる心配はない。


男は、口元をハンケチで被いながら、サングラスと帽子をして屋外へと急ぐ。


「総員待避!」


左手に仕込んだ無線機で発信した後、カウントを取りながら、屋外ではゆっくりとした足取りで別のビルの物陰に入り、リモコンのボタンを押した。


ボン!


大きな破裂音、衝撃、砂埃。

オレンジ色の炎に熱気。


悲鳴が聞こえ、非常ベルが鳴り響く。


「後処理完了。あとの事務処理をよろしく」

『了解した。道中を気を付けて』


経過報告を終えて、男は歩き出す。


警察車両や消防車とスレ違い、サブウェイ駅のトイレで、帽子とコートをゴミ箱に入れる。

すぐさま、清掃員姿の男がゴミ袋を回収し、何処かへ持ち去った。


「まずは、空港か」


サブウェイに乗り込むと座席で、コートに付けていた小型ビデオカメラのメモリーカードを、封筒に入れて封をする。


「ポストに入れるのは空港で大丈夫だろう」


特に単独作業の場合は、記録と報告が重要視されるからだ。


「リストを見ると、同列の悪魔でも手を出さない奴が居るのは、どういう訳だ?まぁ、末端の我々が関知するべき事でも無いが」


男は休む間も惜しんで、次の現場に向かった。


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