プロローグ
「はぁ…はぁ……クソッ! ここまでかっ…」
息を切らし、いま自分が置かれている絶望的状況に、つい毒を吐く。
前方には
レッドゴブリン(×3)・ブルーゴブリン(×3)
後方には
灰ウルフ(×8)・ゴブリンソルジャー(×2)
そして頭上には
ハイエナクロウ(×5) が旋回している。
周囲には夥しい数の肉片や肉塊。
さっきまで自分を捕食しようとしていた魔物たちの骸。
それらからは、思わず鼻を覆いたくなる程の悪臭。
剣を振るう事に無我夢中で気付かなかったが、どうやらヘドロスライムが混じっていたみたいだ。
こいつらは絶命すると、とてつもない悪臭を放つ。
質の悪い事に、この悪臭は人間や動物等にしか臭わず、同じ魔物には殆ど効かない。
最悪だ…最悪過ぎる……。
今までの疲労と長い極限状態のせいで、自然と膝を突く。
剣を地面に突き立て、息を整えながらどうしてこうなったのかを考える。
「ハハ…。考えるまでもねぇーな」
乾いた声で自虐的に嗤う。
周りを警戒しつつ、懐からある物を取り出す。
それは小さなペンダント。
十字架の形をしたシンプルな物。
それを憎たらしく睨み見る。
「あの“勇者”騙しやがって…。何が『魔物除けの御守りだ!』だよ。全然効果ねぇーじゃねぇーか!」
そう呟き力いっぱい握り締める。
それと同時に、この状況になる前の──
まだ“仲間”だと信じていた者達との旅を思い出す。
つい…ついさっきまで一緒だった、
大切な幼馴染たちの事を───。